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独行法反対首都圏ネットワーク

大学はどうなる 法人法案批判《2》 財政責任、法人に転嫁  借金返済も施設整備も 
 .2003年4月18日(金)「しんぶん赤旗」 
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2003年4月18日(金)「しんぶん赤旗」

大学はどうなる 法人法案批判《2》 
財政責任、法人に転嫁  借金返済も施設整備も
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 国立大学法人法案は、「国立大学法人」(以下「法人」)とは、「国立大学を設置する
…法人」(第二条)としています。国立大学の設置者はこれまで「国」でしたが、法律上
、新たに「法人」をつくり、これが国立大学の設置者になります。学校教育法で、設置者
が、その学校の財政責任を負うと定めているため(第五条)、国立大学の第一次的な財政
責任を負うのは「国」から「法人」に移ります。

 他方で、国の財政責任は、法人に必要な金額を「交付することができる」という程度に
後退します。私立大学の経常的経費に対して国は「その二分の一を補助することが…でき
る」(私立学校振興助成法)とされていますが、実際は、12・5%(二〇〇一年度)に
減らされてきました。「できる」という規定では、国の責任は弱まらざるをえません。

自己収入拡大を優先

 国の財政責任が弱まれば、大学は企業からの資金や国の競争的資金の獲得など、自己収
入の拡大を余儀なくされ、教育研究のあり方が、「経営」優先でゆがめられる恐れがあり
ます。

 ある国立大学では、法人化準備の中で、教授による助教授以下の評価が点数化され、国
際誌への論文掲載が六点に対し、外部資金の獲得一億円以上を百二十点とするなど、論文
よりも資金獲得に高い評価を与えています。ノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊氏は、国
立大学法人化を危ぐし、「採算に結びつかない基礎科学が冷や飯を食う」(「東京」四月
十日付)と語っています。

 法案では、付属病院の整備やキャンパス移転などの際に国の責任でつくった借金(約一
兆三千億円)を、独立行政法人国立大学財務・経営センターに引き継がせ、各「法人」が
分担して返済していくことになります。

 さらに「法人」が債券を発行できるようになります。これは、「国の財政が悪化したも
とで
も、大学が施設整備などで資金調達できるようにするため」(文科省の説明)だとしてい

す。債券を発行すれば、その償還のために収益を上げ続けなければなりません。

 国がつくった借金の返済の責任も、国が放置してきた狭くて老朽な大学施設を整備する
責任も「法人」に押し付けるものです。

高い学費さらに高騰

 国立大学の学費は、国会の審議で全国一律に決まっていますが、「国が示す範囲内」で
各大学法人が決めることになります。自己収入の拡大や施設整備のため、学費が大幅に値
上げされたり、「学部間格差」が導入されたりする可能性があります。文科省が昨年十一
月に各大学に示した案では、今年度授業料五十二万八百円を35%の上限で値上げするこ
とを認めています。とくに、法曹養成のための法科大学院では、そうした上限さえ設けな
いことも検討されています。

 不況・リストラで国民の所得が伸び悩む一方、世界一高い学費はさらに上がりつづけ、
経済的理由で大学進学をあきらめる高校生が増えています。法人化による学費高騰は、大
学進学の経済的な不平等をいっそう広げ、国民の教育をうける権利をおびやかします。(
つづく)