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独行法反対首都圏ネットワーク

山形大学人文学部教授会の意見表明 
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各位
 現在国会で審議中の「国立大学法人法案」につき、山形大学人文学部教授会は学長
に対する要望書と意見表明書を採択いたしました。ご紹介いたします。
                               山形大学人文学
部  岩田浩太郎 
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山形大学長
  仙道富士郎 殿
                                      
                                                            山形大
学人文学部教授会
                                   200
3年4月16日

                       要 望 書

 人文学部教授会は、今般、2月28日に閣議決定され、同日国会に上程された国立
大学法人法案についての意見をとりまとめ表明することにいたしました。
 国会に提出された法案は、重要な諸点で、昨年の3月に発表された文部科学省調査
検討会議の最終報告「新しい『国立大学法人』像について」の内容と乖離しており、
「通則法の枠内における法人化には反対である」とする長尾会長談話(昨年4月19
日)の前提との関連で重大な疑義が生じていると考えざるをえません。この法案が2
1世紀におけるわが国の学術・教育に及ぼす計り知れない影響を考えるとき、国大協
が早急に臨時総会を開催し、法案に対する国大協としての最終的見解をまとめて法案
審議に反映させることは、国民及び社会に対する基本的な責務であると考えます。
 学長は、先般、「国立大学法人法案の概要に対する意見」として、本法案が「国立
大学制度を大きく変える重大な事項であることに鑑み、国立大学法人法案の全文を公
開し、充分な審議を積み重ねた上で合意形成できるよう配慮願いたい」旨の意見を山
形大学名で提出されました。私たちは、このような学長の立場を強く支持するもので
すが、以下の点につき、なお一層ご尽力くださるよう要望いたします。

                       記

(1)山形大学の学長として、私たちの意見をも考慮し、早急に国大協臨時総会を開
催するようご尽力頂きたいこと。

(2)国大協総会及び全国並びに各地区の学長会議等において、法案についての充分
な論議が可能となるよう、最大限の努力を払って頂きたいこと。

以上

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                   国立大学法人法(案)の問題点についての意見表明
                                      

山形大学人文学部教授会

2003年4月16日

 4月3日、衆議院本会議で国立大学法人法案の趣旨説明及び質疑が行われ、いよい
よこれから文部科学委員会を中心に法案の本格的審議が開始されることになった。し
かし、今回通常国会に提出された法案は、昨年3月に発表された「新しい『国立大学
法人』像について」(文部科学省調査検討会議最終報告)と対比しても、いくつかの
重要な諸点において看過できない乖離が見られる。山形大学人文学部教授会は、本法
案が21世紀のわが国における学術及び高等教育のあり方にたいして、計り知れない
影響を及ぼすことを考え、教育研究に日々直接携わる教育公務員の立場から、以下の
諸点について意見を表明する。

1 法案は、「最終報告」が国を設置者としているにもかかわらず、第2条におい
て、国立大学の設置者を国立大学法人としており、そのため国は、設置者負担主義の
原則を定めた学校教育法第5条により、少なくとも同法上は国立大学法人の経費を負
担すべき直接的な責任を免れるという結果になっている。これは、国の財源措置が制
度の前提となっていること等を理由に国を設置者とした「最終報告」の考えとは根本
的に異なった制度設計を取り入れたものと言わざるをえない。法案は、第35条で通
則法46条を準用しているが、そこでは、独立行政法人の業務の財源に充てるため政
府は必要な金額の「全部又は一部を交付することができる」と定めるのみで、経費負
担を義務とはしていないため、国による財源措置は、国立学校特別会計制度の廃止と
あいまって、法制度上あいまいな責任として位置づけられているにすぎない。
 この点は、国立大学法人化の大前提とされていた問題であるため、「最終報告」ど
おりに、国を設置者とすべきである。
 
2 法案は国立大学法人の管理運営方式の面においても「最終報告」の立場と次のよ
うな諸点で乖離している。
(1)「最終報告」は、「教学と経営の円滑かつ一体的な合意形成への配慮」等の観
点から、国立大学法人については、「大学としての運営方式とは別に法人としての固
有の組織は設けない」とする大原則に立脚していたにもかかわらず、法案では、国立
大学法人と国立大学という二つの別制度が設けられている。そのため、経営協議会と
教育研究評議会を同じ国立大学法人の機関として設置する一方で、前者は「国立大学
法人」の経営に関する重要事項を、後者は「国立大学」の教育研究に関する重要事項
をそれぞれ審議する機関として位置づけている。この点は、両機関の議長が学長であ
るにもかかわらず、実際的機能としては、両者が次第に切り離され、経営と教学が将
来的に分離していく可能性を内在させている。
(2)従来国立学校設置法において評議会の審議事項の一つとして明文で規定されて
いた「学部、学科その他の重要な組織の設置又は廃止」という事項が、教育研究評議
会の審議事項から外され、代わって役員会の審議事項に位置づけられている。そのた
め、「学部、研究科、附置研究所」等大学の基本的業務とその範囲にかかわる組織の
改廃問題が、最悪の場合、教育研究評議会の意思から離れて決定される制度的仕組み
となっている。
 また、大学における教育研究の遂行を担う最も基本的な組織である教授会が、法案
では国立大学法人の機関として位置づけられていないため、「大学には、重要な事項
を審議するため、教授会を置かなければならない」と定めた学校教育法59条1項の
趣旨との関連で、教授会の法人内における権限及び経営協議会及び教育研究評議会と
の関係が明らかでないという問題が残されている。
(3)法案は、経営協議会の委員構成として、委員の半数以上を学外委員から選出す
べきものとし、さらに、学長選考会議の委員構成でも当該学外委員が教育研究評議会
選出委員と同数をもって構成することとしているが、あまりに多くの学外委員を法人
経営に参画させることは、大学運営が経営優先の立場から行われ、教育研究を本来的
業務とする大学の自主的・自律的運営に多大の支障をきたす虞なしとしない。

3 国が国立大学法人の目標を定めることの可否は、教育研究の自主性・自律性との
関連で、国立大学の法人化をめぐる論議のなかでも最も問題とされてきた点である
が、法案は、大学が提出した中期目標を文部科学大臣が「尊重」して策定するものと
した「最終報告」の立場から大幅に後退し、単に「配慮する」という定めを設けるに
とどまっている。これは、「教育研究の特性に配慮する」という本法案の基本設計に
かかわるものであり、国大協内でも国立大学法人法を通則法と区別する最も重要な部
分と認識されてきたものであるだけに、看過することはできない変更点である。
 また、法案は35条で通則法の中心的部分である業務及び財務会計に関する規定の
ほとんどを準用しているが、例えば、法案に規定のない「中期目標の期間の終了時の
検討」(通則法35条)を準用しているため、総務省内の「審議会」も、国立大学法
人の主要な事務及び事業の改廃に関し、主務大臣に勧告できることになっている。こ
の点においてもまた、通則法の枠組みによる国立大学の法人化には一貫して反対して
きた国大協の立場とは基本的に相反する内容が盛り込まれている。
 国大協は臨時総会を早急に開催し、以上の諸点において充分な審議を行うことに
よって、更なる合意形成に努力し、法案審議に国大協としての意見を反映させるよ
う、最大限の努力を行うべきであると考えるものである。
                                      
     以上