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独行法反対首都圏ネットワーク

大学はどうなる 法人法案批判《1》    教育研究の内容に国が介入 
 . 2003年4月16日(水)「しんぶん赤旗」
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2003年4月16日(水)「しんぶん赤旗」

大学はどうなる 法人法案批判《1》    教育研究の内容に国が介入
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 国立大学法人法案の国会審議が、三日の衆議院本会議での趣旨説明と共産、民主、自由
の各党質問を皮切りに始まりました。法案が大学制度を変質させる重大な問題をもつこと
が、日に日に明らかになっています。

 遠山文部科学大臣は、国会の答弁で「大学の自主性を尊重する」と繰り返し強調しまし
た。しかし、法案では、各大学の六年間の「中期目標」を文科大臣が定め、大学はこれに
もとづき「中期計画」をたてて大臣の認可をうけなければなりません。

 中期目標には「教育研究の質の向上」も含まれます。文科省が昨年十二月に各大学に示
した資料によれば、「目指すべき研究の水準」や「教育課程、教育方法、成績評価」にま
でたちいることになり、教育研究の内容に国が介入することになりかねません。

 そのため、自民党が三年前に発表した提言でさえ、「大臣が大学に目標を直接指示する
制度は、諸外国にも例が無い」と認めていました。遠山大臣は、法案が「目標を定めるに
あたり、大学の意見に配慮する」としたことを「自主性の尊重」の証しにします。しかし
、「配慮する」とは大学の意見に拘束されるわけではなく、「直接指示する」ことと変わ
らないものです。

 「教育研究の質の向上」のために国がなすべきことは、欧米の半分にすぎない国の高等
教育予算を抜本的に拡充し、大学の劣悪な研究条件を改善することです。それを放置し、
教育研究の内容、計画を国が押しつけるのは本末転倒です。

 教育研究を国が直接評価することも問題です。文科省に国立大学法人評価委員会を置い
て、法人の毎年の業績を評価し、業績が悪ければ「改善」を勧告します。総務省によれば
、「評価結果を踏まえて、法人の長の解任も行われ得る」としています。

 さらに六年後には、目標の達成ぶりを国立大学法人評価委員会が評価し、文科大臣がそ
れに応じて運営費を交付するなどの措置をとります。

 評価する委員会がいったいどんなものなのか、どんな基準で評価するのかなどは「政令
で定める」とされ、政府の思い通りになります。しかも、教育研究の“門外漢”である総
務省が二次チェックを行い、大学法人の廃校まで勧告できるなど、何重にもコントロール
するしくみです。

 岡崎国立共同研究機構の勝木元也所長は「大学の評価は簡単ではありません。教育も研
究も、刻々と変化しますし、立てた計画通りに進むものではありません」とのべています
(『世界』二〇〇二年十二月号)。それなのに、国のさじ加減で評価すれば、教育研究は
ゆがめられ、優れた研究の芽を摘みとってしまうおそれがあります。

 一九九七年に採択されたユネスコの「高等教育の教育職員の地位に関する勧告」は、「
加盟国は、高等教育機関の自治に対するいかなる筋からであろうとも脅威から高等教育機
関を保護すべき義務がある」としています。法案は、この世界の流れに逆行し、「自主性
の尊重」どころか、教育研究への国家統制を強め、「学問の自由」「大学の自治」をじゅ
うりんするものです。(つづく)