トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

国立大学法人法案に関する理学部教授会からの要望
 .  

                                      平成15年4月14日

   山形大学長
     仙 道 富士郎 殿

                         山形大学理学部長
                                                        加 藤 静 吾


              国立大学法人法案に関する理学部教授会からの要望

 現在、国会において審議されている国立大学法人法案(以下「法案」という。)は昨年
のいわゆる「最終報告(14.3.26)」からは大きく変わった内容となっているにもかかわ
らず、法案そのものに関して大学や国大協からの意見は求められてはおりません。
 そのような現況において理学部では去る4月4日(金)に法案について教職員懇談会を
開催して議論し、法案について多くの疑問や意見が出されました。その結果、国会審議の
場において国立大学としての意見等を国大協が聴聞されることを想定しつつ、国大協は臨
時総会を開催して法案に対する大学の意見を集約すべきであるとの結論に達しました。具
体的には、早急に学長から臨時に国大協総会の開催を要請していただき、総会の場で下記
のような疑問と意見を述べる機会が確保されるよう理学部教授会として要望しますので、
格段の配慮方よろしくお願いいたします。

                   記

T 国立大学法人法案に対する疑問点と意見

 1 設置者が国から国立大学法人に変更されたことについて
   昨年の文部科学省調査検討会議の「最終報告」において国を国立大学の設置者とし
ていたにもかかわらず、法案では設置者を国立大学法人としている。これによって国の財
政支出上の責任を曖昧にしてはならないと考える。

 2 法人と大学との関係について
   「国立大学法人」と国立大学法人が設置する「国立大学」とが同一なのか別物なの
か、どちらとも受け取れる。このため、国立大学法人に所属するとされる教職員は、「国
立大学」の学外者になるのか、学外者とすれば学校教育法で規定された教授会を構成する
ことができるのか、ということさえ説明ができなくなる(補足説明1参照)。法人と大学
との関係が明快に理解できるような表現でなければならないと考える。

 3 経営協議会と教育研究評議会の対等性への疑問
   文部科学省の説明では両者を対等としているが、経営協議会を教育研究評議会の上
に置いていると読みとれる(補足説明2参照)。その結果、経営と教学とが分離され、経
営優位となりかねない危惧がある。
   また、文部科学省の説明では、教育研究評議会が予算・重要な組織の設置・改廃に
ついて審議できる、とされているが、そうならばそのことを法案に明記すべきであると考
える。
 4 教授会について
   国立大学法人の発足に伴い、国立学校設置法が廃止されると言われている。
   一方、国立学校設置法には教授会の役割が規定されており、国立学校設置法を廃止
するのであれば、国立大学法人法に教授会の役割規定を残すべきであると考える。
   また、教授会を規定している学校教育法59条がどう扱われるのかも明記すべきで
あると考える。


〔補足説明1〕
 ◇法人と大学とを一体としていると思える点
  ・文部科学省による説明では「一体」としている。
  ・第1条で「教育研究」の主語は法人としているので法人と別に大学は存在できない

  ・法人の長を「理事長」でなく「学長」と呼んでいる(私大では兼任であっても区別
)。
  ・法人内の規則を「学則」と呼んでいる。
  ・別途「国立大学法」が考えられていない(一体であっても必要と思われる)。

 ◇法人と大学とを別物としていると思える点
  ・設置の主格と目的格の関係であり(「自ら」とも書いていないので)論理的に別物

  ・附表第一では「法人」と「大学」とが区別して示されている。
  ・「一体」とは法案のどこにも書かれていない。
  ・複数の学校を設置する法人で学校と法人は明らかに別物、1つの設置でも同様。
  ・第21条で教育研究は「大学」の業務と位置付けている。
  ・第22条で法人の業務に「教育研究」がない。
  ・第37条で「法人等を国とみなして」のように、法人はむしろ「国と一体」である

  ・学生は法人ではなく大学に入学するはずである。

〔補足説明2〕
  学校教育法第2条の「国」を「国(国立大学法人を含む)」と修正して、ともに設置
者となれるという点で、国と国立大学法人を同列に置いている。
  一方、法人法第20条(経営協議会の役割)で「国立大学法人」の経営を規定し、第
21条(教育研究評議会の役割)で「国立大学」の教育研究を規定している。法人と大学
とに階層構造があると考えると、経営協議会と教育研究評議会とは上下関係にあることに
なり、文部科学省の対等性の説明は理解できないものとなる。
  また、対等性の観点からは、教育研究評議会は「国立大学」ではなく「国立大学法人
」の教育研究を規定すべきである。


U 「最終報告」から引き継いでいる問題点
  上記Tは「最終報告」の路線を超え「国立大学法案」で新たに起こった問題であるの
に対して、次の事項は「最終報告」のときからも指摘されていた問題である。
    これらは、学問の自由を脅かし、基礎科学を衰退させるものと危惧せざるを得ない。

 (1) 教職員の非公務員化、教育公務員特例法不適用による「学問の自由」の軽視
 (2) 中期目標・中期計画による国立大学への文部科学省の介入
 (3) 評価を運営費交付金に反映させることによる地方大学、基礎的分野の縮小・衰退
 (4) 学長の強大な権限