トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

大野市、福井大が協定 地域再生へ知の結集期待
  .『福井新聞』論説  2003年4月11日付
 

--------------------------------------------------------------

『福井新聞』論説  2003年4月11日付

大野市、福井大が協定 地域再生へ知の結集期待


 大野市と福井大が今月、地域活性化へ向け相互友好協力協定を締結する。地
方分権を見据え、市町村合併の動きが加速する中で地域の自立は最重要課題。
大学にとっても国立大が独立行政法人化されるのに伴い、地域貢献が地方大学
の生き残りの重要な条件になる。民間も含め相互の持てる資源の結集で、産学
官連携をより実効性のあるものにしていく必要がある。

 国立大と自治体の協定締結は全国でも数少ない。大学との共同研究は民間企
業では日常化し、大学に窓口もある。自治体ではこれまで研究者に個別に依頼
してきたが、機関同士が責任を持って対応することになる。

 大野市では第四次総合計画の重要政策に「学びの里づくり」を掲げており、
文化、教育、学術の分野で援助、協力に期待する。教育的分野にとどまらず、
まちづくりや克雪対策、地下水総合管理など地域固有の課題克服へも踏み込む
方針だ。

 将来的にサテライト方式による地域交流などが進めば、新たな活気が生まれ
る。閉塞(へいそく)感のある奥越へのインパクトは大きい。「大野らしさ」
の醸成へ、大学に蓄積された研究成果と「人財」をどう生かすかである。

 大学との連携は知的、人的資源の活用で学術、専門的な観点から高度な提案
が得られる。利害にとらわれず、民間コンサルに頼るより経費削減が期待でき
る。交流人口の拡大やイメージアップにもつながるだろう。

 しかし、大学のシーズ(種)と自治体のニーズを見極め、自治体に明確な目
標と成果を客観評価、検証する総合政策的な体制づくりがなされなければ、相
乗効果は得られない。

 大学側にも体制、意識両面で改革が求められる。○一年、福井大など国立地
方二十八大学は地域交流ネットワークを発足させた。「地域社会の現場に赴き、
あらゆる面で問題の共有、解決を図り活性化に寄与する」との提言は「地域と
ともに歩む大学」の姿を如実に表す。とかく「敷居が高い」とされる最高学府
が、個々の殻を打ち破り、現場主義を徹底する必要がある。

 大学は今や孤高の研究機関ではない。法人化されれば第三者の評価が義務付
けられる。文科省は優れた地域貢献事業に取り組む大学を指定、予算を付けて
いる。福井大の今回の地域連携もこうした国の支援策が背景にある。同大では
○七年度に「総合知的財産本部」を設立する構想を打ち出した。自立した法人
として外部資金の獲得は不可欠になる。提案力を高め、地域に存在感をどう示
すかだ。

 再編淘汰(とうた)の波はあらゆる面に及ぶ。産学官連携はまさに、それぞ
れが生き残りをかけた質の高い知の結集でなければならない。県立大も同様で
ある。経営感覚を磨き、課題の共同解決に全力を挙げてほしい。