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独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大学法人法案に反対し、その廃案を求める 
 . 2003年3月26日 東京大学職員組合臨時総会 
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           国立大学法人法案に反対し、その廃案を求める


                                  2003年3月26日
                                  東京大学職員組合臨時総会

 政府は2月28日、「国立大学法人法案」(以下、法案と略)と関係5法案を閣議決定し、
国会に提出した。
 1999年春に国立大学の独立行政法人化が具体的な検討の日程にのぼって以来、この4年
弱の間、国立大学の「法人化」をめぐっては様々な大学・学部・研究所・教職員組合・大
学内外の諸団体・個人などから多方面にわたる批判や異論、意見が表明されてきた。
 東京大学職員組合でも、情勢の節目においては見解を発表してきた。また東京大学にお
いても、調査検討会議の「中間報告」の段階(2001年秋)で、「21世紀学術経営戦略会
議」から10項目にわたる意見が出されていた。
 にも関わらず、そうした声はほとんど(上記の10項目に関しては、全てが)法案には反
映されず、これまでの国立大学という制度そのものを瓦解させる危険性をもはらむ法案と
なっている。
 私たち東京大学職員組合は、以下に述べるように、この法案をとうてい認めることはで
きない。

1.法案の隅々まで通則法が貫徹し、国の統制が強化
 法案についての報道では、"大学運営の自由度が拡大する"という論調が目立つ。だが、
事の本質はまったく逆であり、今まで以上に国の統制が強化される。
 法案の骨格は、独立行政法人通則法(以下、通則法)を大幅に準用し、統制を強化する
条項を加えていることから成り立っている。(法案35条)
 大学法人は、中期目標を文科大臣から示され、それに基づいて中期計画を作成し、大臣
の認可を得る。(中期目標を定める際、大学からの意見は「配慮」される程度でしかな
い。)教育研究に関わる業務を大臣が指示することは、教育基本法第10条(教育への行政
の不介入)にも、憲法第23条の「学問の自由」にも抵触する、「不当な介入」にあたるも
のである。
 また、大学法人における業務の評価は、文科省に置かれる「国立大学法人評価委員会」
が行うとされる(法案9条)。しかし、組織や委員など詳細については政令で定めること
とされ、その内実は不明である。さらに重大なことは、通則法(35条)の準用により、中
期目標終了時には「業務を継続させる必要性」まで踏み込んだ評価を受ける。加えて、総
務省の審議会からは、「事業の改廃」をも文科大臣に勧告されうるのである。
 このように、現在の国立大学よりも二重、三重に国からの統制が強化されている、これ
が法案の実態なのである。

2.学長に権限が集中し、トップダウンの運営が前面に
 また法案は、学長を中心としたトップダウンの運営への傾斜が顕著である。
 法案では、評議会・教授会を中心とする現行の大学運営システムとは大幅に異なってい
る。教育研究評議会は文字通り教学のみに限定され、予算などは「学外者が2分の1以
上」を占める経営協議会の審議事項であり、全ての意思決定と執行は役員会が握る。しか
も学長は、それら法人組織の委員を任命し、かつ主宰するのである。
 加えて、以前の法案(骨子素案)では規定されていた、「学部及び研究科等」の設置に
関する条文がなくなり、役員会の権限に加えられた。当該国立大学・学部・学科・研究科
等の設置、改廃等は省令によらず、役員会の決定に基づいて学校教育法、同施行規則、大
学設置基準に従った手続きで行われると思われる。
 これは、準用通則法第35条と考え合わせれば、大学改革の柱の一つである重点投資と研
究教育分野のスクラップ・アンド・ビルドを進める意図であることは明らかであろう。

3.法人による「国立大学」の設置で、国による財政保障があいまいに
 法案の大きな特徴は、法人によって国立大学が設置される「間接方式」となったことで
ある。
 これまで、国立大学は国が直接設置し、その運営には制度的・財政的な保障が明確にさ
れていた。しかし、国立学校特別会計が廃止され、設置者が国立大学法人になることによ
り、学校教育法上、直接的な財政責任は国ではなく法人が負うこととなる(学校教育法5
条)。国による高等教育・学問研究への財政的保障が、いっそう不透明となった。
 これは、大学法人の財政上の自己責任を強化する方向へと導くことになろう。その結果、
授業料の値上げや学部間格差の導入などが始まり、これまで不十分ながらも教育の機会均
等に寄与してきた全国一律の授業料制度は崩壊する危険がある。
 さらに、授業料についても文科省令で定める(法案22条4)とされ、国は運営費交付金
とともに授業料設定の2つによって法人をコントロールできることになる。

4.大学の企業化、市場による大学「評価」
 さらに重視すべきは、通則法では原則として認められていない長期借入金や債券発行が
可能とされたことである。これによって、あたかも企業のように債券市場から資金を調達
する道が開かれた。
 多様な資金調達が可能となることは、"大学経営の自立"に拍車をかけ、全体として国か
らの公費を減らす圧力として働くことになるであろう。そうした圧力は、学外者の理事と
して、財務や会計などの担当として民間のプロを招き入れることにもつながる。
 また、民間の格付け会社によって、大学法人が発行した債券が格付けされることにもな
る。「市場を通じての大学の評価」という、もう1つの"評価"が加わることになるのであ
る。
 しかも、市場からの資金調達が計画通り進まないことや、経営悪化による債務不履行な
どがあった場合には、通則法の準用により、評価機関から「事業の改廃」も含めて文科大
臣に勧告されることがありうるのである。

5.教職員の非公務員化
   ---労働条件の悪化と流動的な雇用形態が加速、教特法の不適用
 最後に、現在国立大学で働く約13万人の教職員は、公務員ではなくなる。国家公務員試
験に合格して職員となった方々も含め、法的な身分保障は一方的に奪われることになる。
この「非公務員化」は、人件費を含めた運営費交付金の仕組みともあいまって、業務の外
注化(アウトソーシング)によって人件費を削減する動機として作用するであろう。
 大学は、定員を上回る多くの定員外(非常勤)職員によって運営が成り立っているのが
現状である。しかし、政府の目論む法人化スタートを前にして、こうした定員外職員に対
する解雇の圧力が強まっている。
 このまま推移するならば、大学の労働条件はますます悪化し、社会的にも進んでいる雇
用形態の流動化(派遣・パート労働者の増加、若年層を中心とした「フリーター」人口の
増加、従来の正社員の減少、等々)に拍車をかけることは必至である。
 加えて、先行して独法化された国立研究機関などの大半は、職員を「公務員」身分とし
ているが、国立大学の法人化は、独法化された機関における職員の「非公務員化」をも促
すことは、確実であろう。
 また、教育公務員特例法の改正(整備法案6条)により、教員はその適用対象から外れ
ることになる。従来、「学問の自由」を保障するものとされてきた、教員の身分保障を規
定した教特法3条は、全て削除される。この点、教員人事を扱う教育研究評議会の権限が
「審議」に止まっていることとも合わせ、重大な問題を孕むことは強く指摘しておきたい。

 以上のように、国民の財産である国立大学を破滅させるこの法案に、私たち東京大学職
員組合は強く反対する。
 そして、国会に提出された法案の撤回、廃案を求めて、これまで以上に反対運動を強め
ていく決意である。