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独行法反対首都圏ネットワーク

☆特別号  国立大学法人法案 
 .東京大学学内広報  2003年3月17日付 
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東京大学学内広報  2003年3月17日付

特別号  国立大学法人法案

 去る2月28日付で国立大学法人法に関する閣議決定がなされ、政府案が公
表されました。この「国立大学法人法案」について、東京大学構成員の皆さま
に、いち早くお知らせしたい、という佐々木総長の意向を受けて本特別号を企
画いたしました。冒頭には総長からのメッセージが掲載されております。法案
は、今後国会の審議に委ねられますが、このことについての皆さまの関心を喚
起し、新たな年度に実りある論議を展開するための端緒となることを期待して
本号をお届けします。

広報委員会委員長 森 裕司

目次
国立大学法人法案をめぐる動きについて  総長 佐々木 毅
国立大学法人法案
独立行政法人通則法の読替表【第35条関係】
国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案要綱
国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(抄)
第156回国会における文部科学省提出法律案(抄)
 

国立大学法人法案をめぐる動きについて
総長 佐々木 毅

 今年に入ってから「国立大学法人法案の概要」(以下、「概要」と呼ぶ)が国
大協法人化特別委員会で明らかにされた。そして、2月10日には国立大学長会
議が開催され、文部科学省の側からこの「概要」についての説明があった。こ
れをうけて各大学からさまざまな疑問点が国大協法人化特別委員会に寄せられ、
同委員会の法制化グループがこれら多数の疑問点を整理するとともに、「概要」
に対する国大協の態度表明の準備が進められた。そして、国大協法人化特別委
員会での審議を経て2月24日の国大協理事会において法制化グループの整理に
基づく同委員会の見解が表明され、それをめぐって活発な意見交換が行なわれ
た。特に、多数の疑問が寄せられていることに鑑み、政府案決定の前にでも臨
時の会合を開催し、議論を深めるべきだとの意見が数多く出された。そこで法
案決定後に何らかの会合を持つことを念頭において、理事会に提案された原案
を修正の上、「理事会としては、法案の基本的な枠組みは最終報告を尊重して
立案されているとの国大協法人化特別委員会の見解を全体として了承し、政府
に対し、今後この見解に沿って法制化が進められるよう、強く要望する」とい
う見解をまとめた。そして、周知のように2月28日には政府案が決定された。

 この間、本学においては学部長会議、研究所長会議、学部長・研究所長合同
会議、UT21会議法人化準備委員会、センター長会議において「概要」をめぐっ
て意見交換や見解の表明が行われた。また、3月4日には政府案を基にUT21会議
法人化準備委員会において関連条文の説明を含め、2時間近くにわたって意見
交換と見解の表明が行われた。「概要」以来、一貫して議論になったのは、国
立大学の設置者が国ではなく国立大学法人であるとされたことの意味及びその
含意、国立大学法人に属する経営協議会が教育研究評議会(当初、多くの人々
が国立大学に属するものと理解した)よりも上位に立つのではないかという疑
念、教授会を初めとする内部組織が初めから全く言及されていないことへの不
安(あるいは、学内の組織の多くをできるだけ省令その他で規定して欲しいと
いう要望)、独立行政法人通則法の多くの準用個所が持つ具体的な意味内容の
確認などであった。また、法案発表後は、「概要」では学部、研究科、研究所
などが省令で規定されるとされていたにもかかわらず、それが法案段階で削除
されたこととその背景が議論の焦点に浮上した。つまり、大学内部のことは大
学の判断に委ねるべきであるという議論がこの削除の理由であったとされるが、
それは大学に対する国の責任の軽減を企図するものではないかといったことが
指摘された。更にこのように省令に規定されないというのであれば、こうした
組織名は中期目標・計画に書き込むことになるのかなど、この中期目標・計画
作成作業とどう関係するかといった点も新たな争点として指摘されている。

 これらはいわば国立大学法人法案に内在的な論点に止まり、膨大な数の関連
条文やその修正においてどのような制度設計が実際になされているかはなお検
討を要するところである。従って、今後更に多くの疑問や不安が出てくる可能
性は排除できない。こうした論点を明らかにすることは今後の法案審議との関
係においても、また、政省令の制定過程との関係においても依然として重要で
あり、決して、全てが決着したわけではない。従って、今後必要に応じて個々
の論点について国大協を通して、あるいは、本学として意思表示をしていくつ
もりである。

 同時に、法案は一見して明らかなように各大学に広範な範囲で自ら決定する
権利と義務を課しており、法案で明記されていない大学内部の仕組みについて
早急に組織規範を自ら整備する必要がある。無用な混乱を防ぐためにも、こう
した大学内部体制についてはツメを着実に行っていくことが必要である。この
点は法人化準備委員会でも指摘された点であった。また、役員数が総長及び理
事7名となったことを受けてどのような組織体制を全体として考えるか、事務
機構をどのように見直すかも大きな課題である。その総数の2分の1以上が学外
者によって占められる経営評議会については、それへの反対論を含め、学内外
にさまざまな見解がある。その人事については教育研究評議会が意見を述べる
権利があることが法案で明白にされたが、本当に機能し得る組織にするために
は相当の準備が必要である。今後は法案の審議状況を見定めながら、必要な準
備を行っていくことにしている。