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独行法反対首都圏ネットワーク

☆教育基本法の改正    法で「心」縛る国を愛せ、という 
 .2003年3月20日 愛媛新聞 社説 
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教育基本法「改正」に対しては、まだまともなマスコミもあるようです。

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2003年3月20日 愛媛新聞 社説

              教育基本法の改正 
                   法で「心」縛る国を愛せ、という

 教育基本法の改正問題を検討していた中央教育審議会が、1年4カ月の
審議を経てきょう、遠山敦子文部科学相に最終答申を提出する。

 答申は、個人の尊厳を重視した現行法の「普遍的な理念は大切にしつつ
教育の在り方を根本までさかのぼった改革が必要」とし、愛国心や公共心
の養成を強く打ち出している。戦後教育は事実上否定され「国家に有為な
人材をつくるため教育を国家政策の道具に位置づけた」(日弁連)といえ
る。日本の教育は大きな転機を迎えた。

 イラクへの戦火がまさに開かれ、日本も戦争に加担しつつある今、歩み
をそろえるようにこうした動きが出てきたことに強い危惧(きぐ)を感じ
る。答申を受け、国は今国会への改正法案提出を目指しているが、このま
までは到底容認することはできない。

 国家が法律で「心」を定め、縛り、強制し、評価することの恐ろしさを
思う。「国を愛する心」そのものは否定しないが、心の持ちようや表し方
は人それぞれで、一律に定義できるものではない。答申には「国家至上主
義的考え方や全体主義的なものになってはならない」との一文が盛り込ま
れたとはいえ、内心の問題はそもそも法律の規定にはなじまない上に、憲
法が定める思想・信条や良心の自由にも抵触しかねない。

 既に福岡市の市立小学校では本年度から「国を愛する心情を持つととも
に、平和を願う世界の中の日本人としての自覚を持とうとする」かどうか
によってABCの3段階で評価されている。評価の基準も意義も不明確な
、こうした「違憲行為」が堂々と行われる教育現場から、豊かな心を持っ
た人間が果たして育つだろうか。

 いじめや不登校、学力低下など、現在の教育が多くの問題を抱えている
ことは確かだろう。森喜朗前首相が言うように「大人が敬語を使えない。
今の社会にはおかしいことがいっぱいある」のも事実ではある。だが、そ
れらの問題は本来、基本法改正論議とは区別して個々に対策が取られるべ
きであり、原因をすべて教育に押し付けて、基本法の文言をいじることで
解決しようとする姿勢には疑問を感じる。安易な法改正の前に、理念を現
実に生かす努力をもっとすべきではないか。

 最終答申には、新たに「家庭教育の役割」についての規定が加えられた。
それぞれの家庭での基礎的なしつけにまで、いわば国家が口を挟むことに
なる。また、中間報告で挙がった「男女共同参画社会への寄与」は、何と
か最終答申にも盛り込まれたものの「ジェンダー(性差)フリーが行き過
ぎると、男らしさ、女らしさなど日本古来の伝統が失われる」と反対が強
く、難航したという。

 「公」の前には、個人の自由や尊厳が踏みにじられる息苦しい社会が、
そこまで来ていることを痛感せざるを得ない。この道は有事法制へ、憲法
改正へとつながっていくのではないか。やはり何度でも、反対の声をあげ
続けなければならない。

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           野田隆三郎(岡山大学)

  TEL/FAX 086-294-4020
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