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独行法反対首都圏ネットワーク

☆読売からの回答と再質問 
 . 賀大学/全国ネットの豊島
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佐賀大学/全国ネットの豊島です.

3月1日付けの社説に対する意見への読売からの回答が7日の送られてきました.
対応は迅速ですが,内容は極めて不十分なものなので,再度質問を送りました.

再質問,読売からの回答,と続きます.後ほどウェブにも転載します.
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読売新聞社論説委員会御中
                国立大学独法化阻止全国ネットワーク事務局長
                  豊島耕一(佐賀大学教授)
                 佐賀大学理工学部物理科学科
                 840-8507 佐賀市本庄町1
                 toyo@cc.saga-u.ac.jp
                 電話・ファクス 0952-28-8845
 拝復
 3月1日付けの社説に対する意見をお送りしたところ,早速回答いただきありが
とうございました.残念ながら納得できるものではありませんでしたので,再度お
尋ねしたいと思います.

 まず,「国立大学法人化法案には、中期目標、中期計画のいずれも各大学が原案
を作ることが明示されてい」るとありますが,法案では「あらかじめ、国立大学法
人等の意見を聴き、当該意見に配慮する」(30条3項)となっていますから,こ
れは正確ではありません.「最終報告」の,大学の判断を「尊重」するとの,ある
いは「原案はあらかじめ各大学において一体的に検討」というような表現は法律に
は盛り込まれていないので,文字どおり単に「意見を聞く」だけということもあり
得ます.中期目標・計画の最終的な決定権が文部科学省にあることは法案から明白
です.

また,「現在、各国立大学が文部科学省の一組織として位置付けられ、同省の直接
的な指示を受けている」と述べておられますが,これは文部科学省による誤った言
説の繰り返しに過ぎません.これはおそらく,国立学校は「文部科学省に置かれる」
とした文部科学省設置法十九条を,あるいはそれに対応する国立学校設置法一条を
根拠にされているのでしょう.しかしこれは組織構造と事務の所掌関係を示すので
あって,これを一般的・包括的な支配-従属関係と見るのはいかがなものでしょうか.
組織構造がそのまま上下関係・指示の伝達関係と見なされるのは軍隊組織だけでしょ
う.まして国立大学は教育機関であり,教育基本法10条で「不当な支配」からの
自由が保障されています.そして「不当な支配」には,法に明記された権限以外の,
官僚による支配も含まれるのです.

これは,大学が行政機関ではなく,教育・研究機関であることを考えれば当然の事
です.行政の指揮・命令下に置かれなければならないという必要性・必然性もあり
ません.

「最終的な決定権が文科相にあることは、各国立大学の運営が税金によってなされ
る以上、当然のこと」と述べられますが,これは恐ろしく粗雑な論理です.一体ど
の法律のどの条文に文科相にこのような権限があると書いてあるのでしょうか.是
非教えていただきたいと思います.裁判所の運営について,裁判所は「運営が税金
によってなされる以上」,最終的な決定権が国務大臣(法務大臣?)にある,など
というのと同じでしょう.

近代的な法治社会というのは,何が命令できて何が出来ないのかということは法律
によって明示されており,それに基づかないものは無効であるというのは常識では
ないでしょうか.実際,旧文部省設置法6条では次のように規定されていました.

  第6条 文部省は、前条に規定する所掌事務を遂行するため、次に掲げる
  権限を有する。ただし、その権限の行使は、法律(これに基づく命令を含
  む。)に従つてなされなければならない。

省庁再編で「文部科学省設置法」に替わり,これに相当する条文がなくなりました
が,しかし旧6条の内容が無効になることは考えられません.これはいわば法治主
義の原則を述べているに過ぎないからです.

最後に質問を要約致します.

「中期目標・中期計画」の制度が規制強化ではないと言われるのであれば,これよ
りも強い文部科学省から大学への指示ないし命令の制度が現在法定されていなけれ
ばなりません.その法律と条文を具体的にお示し下さい.

重要な内容を含んだ問題だと思いますので,どうか再度ご回答いただきますようお
願いします.

2003年3月18日

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国立大学独法化阻止全国ネットワーク事務局 豊島耕一様 

 3月1日付けの社説についてのメールでのご意見に、お答えします。
 
国立大学法人化法案には、中期目標、中期計画のいずれも各大学が原案を作ること
が明示されています。また予算についても、経営努力によって生じた余剰金の算入
や、一定の範囲内とは言え学生納付金の額を決めることが各大学に認められるなど、
大学の裁量の幅が広がります。
 社説はこうしたことを分かりやすく説明したもので、間違っているとは考えませ
ん。ただ、誤解を与えたとすれば、今後はいっそう表現に気をつけたいと思います。
法人化により、文科省の規制が強化されることをご心配のようですが、法案の仕組
みはそうではありません。現在、各国立大学が文部科学省の一組織として位置付け
られ、同省の直接的な指示を受けていることと比べると、明らかに規制緩和の方向
です。最終的な決定権が文科相にあることは、各国立大学の運営が税金によってな
される以上、当然のことであり、それを規制強化とは考えません。規制強化は、大
学運営に競争原理を導入しようとする法人化の考え方とも相反するものです。
 メールには、これまでの国立大学のあり方を社説で批判したことについてのご意
見もありました。しかし、大学が地域や社会の信頼を勝ち得ていなかったとの指摘
や反省は、高等教育の研究者や、改革に着手した大学関係者の多くに共通してある
ものです。だからこそ、今、改善に向けた試みが多くの大学でなされているのだと
考えます。

以上、読売新聞東京本社論説委員会の見解に基づいて、広報部からお答えしました。
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(上記回答は3月7日にメールで届きました.)