トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大学法人/大学自身がその気になれるか 
 . 『山陰中央新報』社説  2003年3月15日付
--------------------------------------------------------------


『山陰中央新報』社説  2003年3月15日付

国立大学法人/大学自身がその気になれるか


 二○○四年四月から国立大学を法人化する法案が国会に提出された。迅速な
意思決定のため役員会を新設したり、経営に関する審議機関に過半数の学外委
員を取り入れるなど「開かれた大学」を目指すというのが法案の骨格だ。

 だが、肝心の交付金の在り方や大学評価の仕組みなどは今後の検討に委ねら
れ、本当に大学の自主性を高めることになるのか、それとも国のコントロール
が強まるだけになるのか、まだよく見えてこない。国会での法案審議に当たっ
ては、大学の自主性・主体性を生かす観点から、徹底した論議を望みたい。

 法案などによると、国立大学法人は、管理運営と教学を組織の上でも明確に
分け、管理運営に学外者を大幅に登用する。

 学長が明確に組織のトップに位置付けられ、重要事項は学長と理事で構成す
る役員会で決定する。審議機関として、経営については経営協議会、教学につ
いては教育研究評議会を設ける。役員会には学外理事を置くことが義務付けら
れ、経営協議会は学外委員が半数以上とされた。学長選考の組織も経営協議会
の学外委員と教育研究評議会の代表が同数だ。

 国立大関係者からは、大学運営が外部の声に左右される、と反対の声も出て
いる。もっともなところもあるが、学外委員といっても任命するのは学長であ
る。問題は、大学の将来に積極的に貢献できる人を任命できるかどうかだろう。

 これまで文部科学省に一元管理されていた予算は、法人化により、交付金と
して一括して大学に渡されることになる。大学は自らの手で各学部などに配分
し、経営しなければならないから、大学自治の実質が問われることになる。

 ここで既得権にとらわれ過ぎると、戦略的な配分などおぼつかない。むしろ
しがらみにとらわれない学外委員の声は、欠かせないと考えるべきだろう。外
部の声をうまく取り入れて改革のエネルギーに転化するのか、それとも振り回
されるのか、まさに大学の主体性が問われるところである。

 法人化されると、教職員の身分は非公務員型になり、労使交渉も大学の仕事
になる。新たに導入される企業会計原則への対応も必要になる。

 学長に権限を集中し、トップダウンによる迅速な意思決定に力点が置かれて
いる。だが、教育研究はそもそも現場の発想が基本だ。第一線のエネルギーを
トップがうまく取り込むため、各大学がどんな仕組みをつくるかが自治の在り
方を決めることにもなる。

 文科相が各大学の意見を尊重して中期目標を示し、中期計画についても各大
学が作成したものを文科相が認可する。

 六月末をめどに各大学で六年間の中期目標・中期計画づくりが進んでいるが、
大学に戦略的経営を求めるなら、目標期間中のある程度の財政見通しを持てる
よう、予算の単年度主義のハードルを下げる工夫も必要となってくる。

 各大学の計画の達成度などを評価し、交付金の配分を決める文科省の評価委
員会は絶大な権力を握るが、評価の在り方やそれをどう交付金算定につなげる
のかなど肝心の部分がまだ決まっていない。

 国が、評価と予算をてこに大学コントロールを強めるだけでは、大学の主体
性・自主性は育たない。大学の創意を評価し、大学自身をその気にさせる工夫
を望みたい。