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独行法反対首都圏ネットワーク

☆「国立大学法人法案」に対する反対声明 
 2003年3月10日 島根大学 教職員組合 
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「国立大学法人法案」に対する反対声明

                            2003年3月10日
                         島根大学 教職員組合


 政府は、2月28日に「国立大学法人法案」(以下、法案)を閣議決定し、第
156回通常国会へ提出しました。この法案は、国の莫大な累積債務を軽減する
ために、国立大学の運営形態を大きく変貌させて大学予算を大幅に削減するこ
とを目的としていますが、以下に述べるように「学問の自由」と「教育の機会
均等」を損なう極めて問題の大きな内容です。

1.中期目標・計画による文部科学省の統制
 法案は、文部科学大臣が中期目標を策定及び修正し、大学が作成した中期計
画(6カ年)を認可するという他の先進国には類を見ない学問に対する国家統
制的な制度を打ち出しています。しかし、現時点では中期目標・計画に対する
公正な評価システムが構築されておらず、「学問の自由」が大きく損なわれる
危険性が強いと言わざるを得ません。

2.大学自治を認めない大学運営の体制
 法案は、経営協議会への学外者の「2分の1以上」の登用を求め、学内者で構
成される教育研究評議会にはない大学予算の決定、組織の設置と廃止などの強
大な権限が付されており、学外者の大学運営への大幅な参画を規定しています。
しかし、産業界が求める利潤追求型の研究分野に重点的に投資され、短期的に
は成果が出にくい基礎的な学問分野が軽視される恐れがあります。また、大学
間の格差がますます拡がり、島根大学のような地方大学は貧弱な予算により、
廃止される学問分野が多く発生することが懸念され、地方の「知の衰退」を招
きかねないことも大きな問題です。

3.国による大学財源の保障の放棄
 原案では大学の設置者は「国」とされていましたが、法案では突然「国立大
学法人」に変更されました。これは、国が財政上の責任・負担を事実上放棄す
ることを意味します。国が支出する大学予算が大幅に削減されるので、大学運
営費の不足分を補うために、各大学は授業料を大幅に値上げすることが避けら
れず、現在でも他の先進諸国よりも極めて高い学費が一層値上げされることに
なります。これは、教育基本法に規定されている国民の「教育の機会均等」の
保障に反することになります(現行の52万円から最大70万円へ値上げされると
言われています)。

4.職員の「非公務員化」による雇用保障の剥奪
 今回の法案に合わせて、「国家公務員」としての教職員の身分が剥奪されよ
うとしています。競争原理を持ち込むことで業務を効率化させることが目的と
されていますが、公務員試験に合格して採用された職員の雇用保障が剥奪され
ることに対しては合理的な説明が何らされておらず、職務への志気が低下する
恐れがあります。また、競争原理に基づいて教員の任期制導入が打ち出されて
いますが、これは、学問の自由が身分保障によって担保されるという認識を欠
くものであり、また、中長期的な研究成果が取り組まれなくなるなど弊害の方
が大きいと考えられます。


 以上の理由から、私たちは「国立大学法人法案」の成立に断固として反対し
ます。そして、私たちは以下のことを提案します。

1.わが国の高等教育の発展と教育の機会均等の保障のために、高等教育への
 国の予算支出を欧米並みに引き上げることを前提とした世界レベルの教育研
 究の拠点を形成すべきです。また、国の財政責任を今以上に果たすことによ
 り、欧米諸国並みの学費に引き下げるべきです。
2.大学は社会に対して教育研究およびその他の情報を最大限公開すべきです。
 しかし、大学の評価は公開された情報をもとに大学自らならびに社会が自発
 的に行うものでなければなりません。政府その他の機関による独占的評価は、
 大学の独立に反するだけでなく、評価にかかわる業務の過多を生み出し、大
 学の本来業務である研究教育活動を阻害することを認識する必要があります。
 中期目標と中期計画についても各大学の裁量で作成されるべきで、文部科学
 省などの政府の干渉は認めるべきではありません。
3.公務員試験採用の職員は定年まで公務員という身分を保障すべきです。ま
 た、教員については「学問の自由」の見地から、安易な任期制を導入すべき
 ではありません。