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☆山形大教育学部問題、山形大と県の論点整理 
 . 2003年3月6日 木曜日
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2003年3月6日 木曜日
山形大教育学部問題、山形大と県の論点整理

 存続を求める県民の大合唱で、こう着状態が続く山形大の教育学部問題。半年以上にわたって中断していた「山形県の教員養成に関する懇談会」が7日、山 形市内で開かれる。山形大と県の間にはこれまで、埋まることがないと思われるほど深い溝があったが、「6年間で高い見識を備えた優秀な教員を養成する」 という一点で双方の思惑が一致、わずかだが難局打開に向けた光が見え始めた。一気に雪解けを迎えるのか、あるいは決裂してしまうのか。懇談会を前に、山 形大と県の論点を整理してみた。

「専門職」で転生図る−山形大
 南東北3県で始まった教員養成課程の再編協議に伴い、教育学部が昨年5月の教授会で「担当校」を断念、厳しい批判にさらされてきた山形大。とりわけ当 事者の教育学部は、2004年度の独立行政法人化を目前に控えていらつく他学部から一斉砲火を浴びて孤立している。

 極端に低い教員採用率を突かれ、もはや立ち上がることができないと思われた教育学部だが、懸命に転生を図ろうとする新システムが浮上した。

 学部(4年間)と修士課程(2年間)を密接に結びつけ、6年間で高い教養を持つ「高度専門職業人」(教員)を育成する独自の仕組み。大学院は幅広い学 部卒業生を受け入れ、実践的な教員を送り出す役割を果たす。

 6年間で完結するシステム導入を打ち出したのは、社会の複雑化を背景に、教員の資質向上に対する要請が高まっているためだ。

 これは山形大本部が練った「地域連携型の教師教育システム」はもちろん、県の試案に盛り込まれた「6年間の一貫教育」をがっちりと受け止めた印象を与 える。

 さらに、中央教育審議会が昨年8月、遠山敦子文科相に答申した「専門職大学院」を意識し、国と県双方の考えに沿ったスタイルに仕上がった。

 専門職大学院は高度専門職業人養成に特化した新たな形態の大学院で、専門的な職業能力を有する人材の養成を目的に、今年4月に制度がスタートする。文 科省高等教育政策室によると、将来的には法科大学院修了が司法試験の受験資格要件になる。今回の教育学部問題を踏まえ、県教育委員会は教員選考試験で、 大学院修了者に与えられる専修免許を重視する方針を打ち出しており、仮に実現すれば大学院改革の流れに合致する。

 教育学部が発案したシステムについて、ある学内関係者は「教員養成の在り方で、これから全国をリードする可能性すら秘めている」と評価している。

「現在のまま」に固執−県
 県が昨年8月の第3回懇談会で提出した独自の試案は「職務内容の高度化、複雑化が著しく、修士レベルでの教員養成が望ましい」として、全国でも極めて 珍しい6年間の一貫教育を導入するよう提言した。総合性、地域性、実践性を重視し、幅広い知識を習得した「大教養人」を育成するのが狙い。少子化が進 み、教員採用枠が縮小している実態に合った少数精鋭の教員養成システムをイメージしている。

 教育学部問題が浮上した時点から、高橋和雄知事の主張は「教育学部の存続」と一貫している。

 懇談会を前にした3日の県議会本会議で、高橋知事は「単に一回の話し合いで済むとは思っていない。何度か意見交換が必要で、相当の時間を要することに なると思う」と答弁、教育学部を現在のまま維持していくことに固執した。

 高橋知事は昨年末、山形大の沼沢誠、鬼武一夫両副学長から、「開放型の教員養成」を打診された。両副学長はカリキュラムを工夫することで、現行と同じ 計画養成に限りなく近付くと説明し、理解を求めた。

 大学本部の案には、山形大、県、山形市の3者が定期的に協議することで、教師教育の維持・発展を図る「山形県教師教育推進協議会」の設置が盛り込ま れ、県と山形市への配慮が感じられた。地域の声を最大限、学部運営に反映させようとする内容だった。

 しかし、教育学部の意向がまったく感じられない案に、高橋知事が容易になびくことはなかった。報道陣を前に「将来、先生になる人たちが不安にならない ように、石島(庸男)学部長から本気になってもらわないといけない。男を上げてもらいたい」と強調、学部の奮起を促した。

 「知事の怒りは、ふがいない教育学部に向けられている」とささやかれている。次回懇談会で学部が提示するとみられる「専門職大学院」に、高橋知事がど う反応するかが焦点となりそうだ。