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独行法反対首都圏ネットワーク

☆社説=国立大法人化 自主性を伸ばす方向を 
 .『信濃毎日新聞』社説  2003年3月5日付 
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『信濃毎日新聞』社説  2003年3月5日付

社説=国立大法人化 自主性を伸ばす方向を


 国立大や国立高専を独立した法人に来春移行させるための関連法案が今国会
に提出された。十年、二十年先の日本の教育・研究水準を左右する事柄である。
不安や疑問を残さぬよう審議を尽くし、活性化の道を切り開く必要がある。

 好むと好まざるとにかかわらず、企業的手法が導入され、強まることを意味
する。

 法案はまず、現行の国立大を八十九の法人に改める。国立天文台などの大学
共同利用機関も再編統合するほか、五十五ある国立高専を一つの独立行政法人
にまとめる。いずれも来年四月の実施予定だ。

 大学でいえば、国の保護と並んで規制からも離れることで自主性は広がる。
学科の再編、人材の登用、企業との提携といった面でより弾力的な運営が見込
まれる。

 その組織として法案は、▽学長や理事による役員会▽経営協議会▽教育研究
評議会―の三本柱を設ける。経営協議会の委員には学外有識者を半数以上入れ、
役員会にも学外理事を含むよう求めている。

 外部の風を取り入れ、チェック機能を高め、バランスの取れた意思決定の仕
組みを整えようという趣旨は理解できる。

 大学は“象牙の塔”としばしば例えられた。急速な少子化社会はもはや、そ
うした旧来の体制や思考を許さないところにきている。法案成立を待たずに
「開かれた大学」への取り組みが各地で盛んなのも、危機感の表れと受け取れ
る。

 今後、個性化を競い、活動は多彩になるだろう。それだけに正当な評価シス
テムの確立が鍵を握る。独立法人になるといっても、国費によって運営される
基本構造は変わらないからだ。

 各大学は文科相が示す期間六年の「中期目標」に沿い、教育面など個別の中
期計画を策定する。その達成度に応じて、予算が配分される。

 狭い領域に閉じこもるような研究状態は改善が迫られるとしても、短期間に
は成果を期待しにくい基礎的分野は珍しくない。

 見栄えのする分野に力点が置かれないか、地方に根差した調査研究が中央の
視点で公平に検討されるのか―などの点は気掛かりだ。

 十月に新設予定の評価委員会の態勢や判断基準に透明性、客観性を持たせる
吟味が欠かせない。

 信州大学でもすでに、法人化を見据えた試みを行っている。県民とともに推
進する姿勢が大事である。