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☆国立大法人化で問われる第三者評価
 .『日本経済新聞』社説  2003年3月2日付 
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『日本経済新聞』社説  2003年3月2日付

国立大法人化で問われる第三者評価


 国立大学の法人化へ向けた「国立大学法人化法案」など、関連する六法案を
文部科学省がまとめて28日閣議決定された。今通常国会に提出して来年4月の
法人化を目指す。国が直轄していた国立大学や大学共同利用機関は統廃合など
で89の国立大学法人、4つの大学共同利用機構法人に再編される。

 法案では学長権限を強めて民間的な経営手法を導入する一方、国が6年ごと
に示す中期目標をもとに各大学が策定する中期計画を第三者機関が評価し、資
源配分に反映させるなど、「象牙の塔」を脱した新たな国立大学像を打ち出し
ている。

 ただこれまでの国立大学特別会計に代わる国費の配分の仕組みをはじめ、各
大学が独自に定める学生納付金や余剰金の扱いなど、制度の設計が国の規制下
の現状から大きな改革につながるかどうか、定かではない部分も少なくない。
既得権益の踏襲に陥らない、公正で説得力のある評価や運用の基準が求められ
よう。

 法案が打ち出した大きな改革はまず、学長権限の拡大などを通した大学の経
営力の強化である。「教授会自治」の下でひ弱だった大学の意思決定力と運営
基盤を強化するため、学長と学外者を含めた理事らで構成する役員会が重要事
項の決定に当たる。「経営協議会」の委員は過半数を学外に求めるなど、企業
統治の手法を法人の経営に導入する。

 産学連携の強化へ向けて、技術移転機関(TLO)などを対象に想定してこ
れまで国立大に認められなかった出資規定を法案に盛り込んだほか、「大学債」
の発行を通して外部からの資金調達の道も開いた。

 13万人余りにのぼる教職員の身分は「非公務員型」を採用し、学長権限の下
で人事や給与システムも各大学の責任に任される。兼職などの規制も撤廃され
るが、大学が基本的に国費で運営されることに変わりはない。各大学は教育研
究の質の向上と効率的な経営に向けて、今以上の重い説明責任が求められてい
ることを自覚する必要があろう。

 国立大学の法人化問題は当初、各大学の強い抵抗があり、学長選考や中期目
標の設定で各大学の特性や自主性に配慮するなど、通則法が適用される一般の
独立行政法人とは異なる独自の法人の枠組みができた。

 国立大の法人化が改革の成果をあげる大きな鍵の一つは、各大学の業績を総
合評価して資源配分に反映させる第三者機関の役割である。新設される「国立
大学法人評価委員会」に大学全体の競争を高める新たな評価の仕組みを求めた
い。