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独行法反対首都圏ネットワーク

☆ [国立大法人化]「自主運営は結果への責任を伴う」 
 .『読売新聞』社説  2003年3月1日付 
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『読売新聞』社説  2003年3月1日付

 [国立大法人化]「自主運営は結果への責任を伴う」


 今後の国立大学のあるべき姿がまとまった。

 国立大学法人化に向けた一括法案が閣議決定された。今国会に提出される。
成立すれば来年四月から、すべての国立大学が、文部科学省の組織から離れ、
それぞれ独立した法人になる。

 国の規制は大幅に緩和され、大学は自らの責任で予算を決め、運営できるよ
うになる。大学運営や学長選出には、学外者も関与する。

 国の保護と規制の下にあった護送船団方式から、大学の責任と競争重視への
方向転換である。戦後の新制大学発足以来の改革となる。

 各大学は明確な将来像を打ち出し、教育、研究などの活性化を図らねばなら
ない。改革に失敗すると、国の運営費交付金の大幅な削減もあり得る。

 国立大学の法人化は元々、国家公務員の定数削減のために求められた。だが
文科省の調査検討会議などの論議で、法人化は、教育、研究の体制にも及ぶ、
大学改革の契機としてとらえられた。

 法人化に対しては、「全国一律」の保護を失う地方国立大学などから強い反
対があった。だが、社会の賛同を得るものとはならなかった。

 国立大学には自己改革の意欲に乏しいところがあった。意思形成の過程も不
明確で、多くの教員は狭い研究分野に閉じこもり、社会貢献意識も希薄だった。

 法人化反対論に、地方自治体などの反応が鈍かったのは、そうした大学の状
況に対する批判の表れとも言える。大学関係者はそのことを心せねばならない。

 変化の兆しは既に見え始めている。学外から学長を招いたり、研究に地域貢
献や産官学連携の視点を取り入れたりする試みが見られるようになった。

 法人化された大学は、六年ごとに、運営、教育、研究などに関する中期目標
や計画を文科省に提出し、その達成度に応じて予算配分を受ける。目標や計画
策定のため、これまでなかった全学的な論議をしている大学もある。

 こうした流れを大切にし、大学人の意識改革を進めて行かねばならない。

 法人化の成否は、大学の業績を判定する評価制度にかかる。公正で客観的な
評価方法の早急な策定が求められる。

 各大学には、六年の評価期間を生かし短期的な成果のみを求めるのではなく、
長期的な展望による改革を望みたい。

 「大学の自治」は戦後長く、大学内だけの閉ざされた自治だった。それは既
得権擁護の手段ともされた。競争と評価にさらされる今後は、結果に責任のと
れる開かれた自治のありようが問われる。