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独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大学法人法案についての意見と国大協緊急臨時総会の必要性について 
  .  2003年3月10日東京外国語大学教官有志連署
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国立大学法人法案についての意見と国大協緊急臨時総会の必要性について
                                                 
                                         2003年3月10日  

 わたしたちは、東京外国語大学外国語学部、大学院地域文化研究科、アジア・アフリカ言語文化研究所、ならびに留学生日本語教育センターにおいて実際に研究教育に従事する教員として、「国立大学法人法案」の「骨子」や「概要」、さらにようやく明らかになった法案の条文について仔細に検討した結果、そこに本学の教育研究条件にとって深甚な影響を与える難点が横たわっていると考えるにいたりました。

(1)『最終報告』では法人化後の大学設置者は「国」であるとされていましたが、法案では、設置者は「国立大学法人」に変わっています。このようないわゆる「間接方式」では、国は財政支出の責任を免除されることになり、また、「国立大学法人」と「国立大学」とが法制度上二つのものとして存在するために、文部科学省の解釈にも関わらず、両者が今後実際上切り離されていく可能性が存在しています。しかも、このような法人化の根幹に関わる変更が、他ならぬ『最終報告』が提示された後に、なし崩し的に行われたことは、なおさら理解に苦しみます。この変更は、一部では内閣法制局の主張に即した立法技術上の問題によると説明されているようですが、そうであれば『最終報告』の段階でも当然予想されていたことでありましょう。このよう
な重要な「大学設置者」の問題については、少なくとも『最終報告』以前の原則に立ち帰って再検討する必要があると考えます。

(2)周知のように国立大学協会は、独立行政法人通則法の枠内での法人化には反対であるという立場を堅持していましたが、昨年4月19日の「長尾会長談話」によって、『最終報告』に盛られた内容が通則法とは異なり、国立大学の特性を踏まえた点があるという「理由」で、『最終報告』を概ね「了承した」経緯があります。しかしながら、ここにきてこの「長尾会長談話」の「了承」の対象であったものが実質的に廃棄され、国立大学法人法案の全体の骨格が、当初危惧されていたとおり、独立行政法人通則法とほとんど内実を異にしないことが明らかになってきました。実際、法人法第三五条は、独立行政法人通則法の三九か条の条文を準用するとしています。通則法のほとんどの規定が「準用」され、または準用されない規定のほとんどすべても法案における同等の規定に置き換えられているにすぎません。また「中期目標の期間の終了時の検討」に関しても、国立大学法人法案には規定がないことで、独立行政法人通則法の第35条が適用されることになり、総務省のもとにある「審議会」が「主要な事務及び事業の改廃に関し、主務大臣に勧告することができる」ことになってしまいますから、とうてい大学の研究教育の特性を配慮したということはできないはずです。これらを見ても、問題は、独立行政法人通則法を大学の研究教育の場に適用することの不都合を確認していた時点に戻っていることは明らかです。

(3)法人法案では、学外から選考される委員の意向に異様な比重が置かれています。第20条3項では、経営協議会の構成について学外から選ばれるものの数は「経営協議会の委員の総数の二分の一以上でなければならない」とされており、しかもこれに加えて、学長が任命する理事も一部は学外から選ばれるとなると、結果として三分の二近くの学外委員の存在によって「国立大学法人」はおよそ自律的な組織体としての体をなさなくなる危険性があります。そもそも「経営」と「教学」が機械的に分断されているために、研究教育に従事する教職員が業務の責任ある主体となる余地はほとんど残されていません。大学の業務は、多かれ少なかれ「教学」に関わるわけですから、「教学」の概念をこのように限定することは当然にも不都合を招きます。法案のとおりの機構となれば、経営協議会と教育研究評議会の有機的な連携も期待できないでしょう。研究教育に従事するわたしたち自身が、業務の責任ある意思決定に参与することをあらかじめ拒否されている組織体が、はたしてまともに機能するでしょうか。少なくとも法案について、この点の不都合を除去し、国立大学の現実的な運用を可能にするための必要な修正を求めます。

(4)学長の選出についても、教育研究の現場での実質的な意思形成と無関係な形でそれが行われることは、研究教育活動の特殊性を考えた場合には、むしろ非機能的であると考えざるをえません。法案では、学長選出を行う学長選考会議は、第12条2項において、経営協議会から選出される学外委員と教育研究評議会から選出される委員とから同数で構成され、そこに学長や理事が入ることができるとなっていますが、
ここでも学外者の役員や委員の比重が過剰に高くなっています。まして、この学長選考会議に学長が任命した役員のみならず、学長自身も加わることができるという在り方は、ただでさえ強大な権限を付与されている学長の地位をいっそう掣肘のきかないものにすることになります。この点でも、少なくとも『最終報告』にある学内の意向聴取措置についての規定を、より実質的なものと修正するよう求めます。

(5)このように、法人法の内容は『最終報告』に較べても大きく変化しており、法人化の内容をめぐる問題点は、「長尾会長談話」の了承の時点とは異なった段階にいたっていると判断せざるをえません。となれば、少なくともわたしたちのような、実際に教育研究に携わってきたものの知識や経験をあらためて集約する過程と手続きを正式に踏み、その結果を国立大学協会の臨時総会に反映して、それぞれの大学の「会員代表」である学長たちによる明確な意思を、国立大学側の見解として社会的に表明していく必要があると考えます。

  以上の諸点にわたって、評議員各位には東京外国語大学評議会において十分な検討が行われることを要望するとともに、国立大学協会諸会員の代表として国立大学協会の諸会議に参加している学長にも、すみやかに国大協臨時総会が開催されるよう、取りはからっていただくことを求めます。要約すれば、つぎのようになります。

@国立大学法人法案が、『最終報告』からはすでに乖離している点を確認し、それらについて、あらためてそれぞれの大学ならびに国立大学協会の意思を確認する手続きを踏むべきであります。

Aそのために、学長は、「会員総数の8分の1以上の大学から,議題を示して要求があったときは,会長は,臨時総会を招集しなければならない」(国大協会則第11条2項)という規定にのっとり、臨時総会開催請求のためのしかるべき手続きをすみやかにとっていただくよう、お願いいたします。             

      
               東京外国語大学教官有志連署