「国立大学法人法案の概要」に対する各国立大学からの意見

 

15.2.20

 

<北海道教育大学>

 

1 「国立大学法人法案の概要」は、独立行政法人通則法をそのまま適用するのではなく、 全体として国立大学の教育研究上の特性に配慮した内容である点は理解できる。

2 国立大学の設置者を国立大学法人とすることについて、国が各国立大学の直接的な設 置者であり管理運営者であるとすることが法制上困難であるとの理由は理解できないわ けではないが、

  (1)国が国立大学への財政上の支出を責任を持って行うこと、

  (2)大学法人と大学との間に制度上の区分が生ずることに伴って、実際上の運営にお   いて乖離が生じないように担保すること、

が必要である。

3 「経営協議会」「教育研究評議会」の名称は「調査検討会議」の最終報告で使用している名称(「運営協議会」「評議会」)とすることが望ましい。

    その理由は、

  (1)経営の最終責任は経営協議会というよりは役員会にあること、

  (2)経営と教学、大学法人と大学との運営上の一体性が極めて重要であること、

  (3)「評議会」については、既に十分に熟した呼称となっていること、

   等である。

4 「経営協議会」の学外委員が構成員の「2分の1以上」となっている点について、経 営に関する重要事項を審議する機関ではあるが、その結果責任を被る度合いでは学内の 委員が負うところが大きいと考えられ、そのような機関の中で学外者を「2分の1以上」 とせず、数を明記しないほうが望ましい。

5 副学長、教授会の位置付けについて、学校教育法に依拠しつつ、国立大学法人法にも 何らかの形で規定すべきである。

6 学長選考会議の構成について、「国立大学法人法案の概要」の16によれば「学長選考会議の定めるところにより、学長又は理事を加えることができる」となっているが、学長選考会議に当事者である学長が加わることは不適切である。

7 学長解任の理由となる「業績悪化」についての規定が明確でない。

8 財務及び会計の記述が少なく、財政の運用(単年度予算から複数年度で運用など)に ついての論及がない。

9 附属図書館の法的地位が明確に位置付けられるよう、「国立大学法人法案の概要」の 21(国立大学法人の業務)に関する「省令で規定」する各法人の基本的な範囲の中に、 附属図書館を加え、明記すべきである。

 

 

 

<室蘭工業大学>

 

○ 法案概要17(理事及び監事)

  「理事は学長が、監事は文部科学大臣が任命する。

   その際、現に当該国立大学法人の役員又は職員でない者(学外者)が含まれるようにしなければならない。」とあるが、常勤理事に必ず学外者を含めることを求めるものでないようにされたい。非常勤理事でも可能なように定められたい。

○ 高等教育費に対する公財政支出の充実について

  法案において直接明らかにすることは困難であるが、高等教育費に対する公財政支出の拡大について、国立大学協会としてねばり強く訴えられることを望む。

 

<小樽商科大学>

 

 1.国立大学の設置者について

国を設置者とし,「法人」として固有の組織は設けないとしていた「最終報告書」の内容と大きく異なっている。立法技術上の問題であることは理解できるが,将来的に法人と大学が一体的に運営されることが制度的に保証されるかどうかについて危惧が残る。

2.教授会の位置付けについて

      国立大学法人法案の概要には,教授会に関する規定が存在しない。教授会については,学校教育法に基づくとの文部科学省の説明であるが,学校教育法上は,教授会は「重要な事項を審議する」機関として位置づけられている。この学校教育法の規程が,国立大学法人法案によって有名無実となることは避けられないと思われる。両規程の矛盾抵触をどのように解決すべきかの問題があるのではないか。また,一部には違憲問題を生ずる余地があるのではないかという意見もあった。

   単科大学にとって教授会は,全教員が参画できる唯一の場であり,学部(科)固有の問題,大学全体の問題を審議する極めて重要な審議機関であるため,このような単科大学の特別な事情にも配慮されることを希望する。

 3.「学長選考会議」の構成について

     「学長選考会議の定めるところにより,学長又は理事を加えることができる」とされているが,新学長を選考する会議に現学長が加わる合理的な理由があるのかどうか疑問である。

      また,学長選考手続き中に,学内者の意向聴取手続(投票など)を明記することも必要ではないか。

 4.単科大学のような場合,副学長・理事を専任にするとすれば,定年近くの教官を充てざるを得ず,人材確保の点で大きな制約を受ける。役員を併任にすることも考慮されたい。

 

 

 

<弘前大学>

 

1 法律上の国立大学法人の概要を的確に説明する資料の作成について

  「国立大学法人法案の概要」は、資料の性格上、独立行政法人通則法の特例として国立大学法人法案に規定される事項を中心とした説明となっているが、これでは、法案そのものの説明ではあっても、国立大学法人そのものの説明としては不十分である。

  独立行政法人通則法の準用される規定のうち、重要なものは読替えを加えた上で引用するなどして、国立大学法人が法律レベルでどのようなものとして規定されているのかの概要を明確に説明する資料を作成・公表すべきである。(2/10静岡大学長の意見)

2 「法人化最終報告」(H14.3.26)の位置づけについて

  「法人化最終報告」中の制度設計に関する記述のうち、今回、国立大学法人法案に取り入れられたのは一部であり、その他の多くの記述は、引き続き各大学で制度設計や運用を考える際の重要テキストとして用いられるべきものと思われる。

  しかしながら、今回、最終報告の一部が法案によって修正されていることもあり、最終報告は既に過去のものとなったような印象もある。また、最終報告は、「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」が諮問に応じて文部科学省に報告した文書であり、直接各大学を拘束するものではないとの議論もあり得る。

  よって、文部科学省は、各大学における学内検討に一定の指針を与えるためにも、法人化最終報告の位置づけ、扱いについて見解を示すべきである。

3 経営協議会の委員の選任について

  経営協議会の学外委員は、教育研究評議会の意見を聴いて学長が任命することとされている。この「意見を聴いて」の運用如何によっては、外部委員として、学長が理想とする人物が選ばれず、教育研究評議会の息のかかった人物のみが選任され、経営協議会が教育研究評議会の実質的支配下に置かれる、といった事態も想定される。

  現行の評議会は、学内に存在する様々な意見を大学運営に反映させる機能を持っており、その実態から類推すると、上記のような事態も想像できる。

  国立大学法人で上記のような事態が起こるのを未然に防ぐためには、

@学部長の選任について、学部教授会の選挙によるのみでなく学長の意向が適切に反映される手続を取り入れる。また、教育研究評議会委員のうち「その他教育研究評議会が定めるところにより学長が任命する職員」とされている者の選任について、学長・学部長の意向が適切に反映される手続を取り入れる。=学内の多様な意見が教育研究評議会に持ち込まれることに一定の制約をつける。

A「教育研究評議会の意見を聴いて」を適切に運用し、学長が学外委員候補者を列挙して教育研究評議会に示して意見を聴くなどとする。教育研究評議会に候補者の選考を白紙委任するようなことをしない。

 など、各大学内で制度設計や運用上の適切な対応が必要となる。

  このように、「法案の概要」には、法律事項を支障なく実施するためには各大学の学内措置で適切に担保する必要がある事項が含まれているように思われるが、文部科学省は各大学の学内措置に当たっての指針を示すお考えがあるか。

 

4 役員等の解任について

  役員については任命及び解任に関する規定があるが、経営協議会及び教育研究評議会の構成員については、それぞれの構成に関する規定の中に任命に関する内容が含まれているのみで、解任に関する規定がない。

  特に経営協議会の学外委員について、適任者の選任に困難が予想されるが、もし、人選を誤った等の場合に、これを解任することはできるのか。(法律にないことはできない、学内で規定を設ければできる、のいずれか。)

 

<山形大学>

 

1.各大学意見の集約方法について

    今回の法案概要に対する意見集約は、極めて短時間に行われることとなったが、国立大学制度を大きく変える重大な事項であることに鑑み、国立大学法人法案の全文を公開し、十分な討議を積み重ねた上で合意形成できるよう配慮願いたい。

2.国立大学の設置者について

    法案概要では、国立大学の設置者を国立大学法人であるとしている。一方、学校教育法上は、第2条において「学校は、国(国立大学法人を含む)、地方公共団体及び学校法人のみが、これを設置することができる」との規定により、国の責任を実質的に体現したものと説明されているが、国立大学に対する財政面を含む国の責任が一層明確になるような工夫をお願いしたい。

3.経営協議会と教育研究評議会の関係について

    経営協議会と教育研究評議会の関係については、法人化特別委員会法制化対応グループが示された次の見解に十分配慮願いたい。

  @ 双方を「国立大学法人」の審議機関として対等に位置付けることが必要であり、国立大学法人法案の具体の立案に当たっては、かかる制度設計とするよう強く要請する。

  A 国立大学法人の業務は国立大学における教育研究そのものまたはそれと不可分のものであることから、教育研究評議会は国立大学の教育研究に関する重要事項を審議する立場から国立大学法人の各種業務に関して審議を行うことができるものと認識しており、そのような枠組みとされたい。

4.学長の選考について

    法案概要では、「学長選考会議の構成員に、委員総数の3分の1以下の範囲 で学長及び理事を加えることができる」とされているが、学長自ら選考会議に 参加できるとした趣旨を明示されたい。

 

<福島大学>

 

1.国立大学法人の自律性の確保について

大学は学術の中心であり、大学は学問の自由な発展を保障するために自律的に運営されなければならない。しかし、そのことは大学が国民や社会から孤立した存在であることを意味せず、常に国民や社会の意向に耳を傾け、説明責任を果たしていかなければならない。

一方、国立大学法人法案の制度設計にあたっては、「自律性を高め教育研究の質的向上を図るという国立大学の特性を踏まえた制度設計」(国立大学協会「重要論点」)が必要であり、「自主的な教育研究の実施と大学経営への幅広い有識者の識見の活用とのバランス」が重要である。

このような観点から「国立大学法人法案の概要」をみると、下記2〜4の指摘とも関わるが、その「バランス」及び「自律性」の保障が必ずしも明らかでない。大学の自律性の尊重を、法案の総則に明示すべきであると考える。

2.経営協議会について

大学が、外からの意見を聞いたり、経営的な観点を導入することは大切であると思われるが、何よりも大学の将来発展を見据えた戦略的方策の審議の場となることが重要である。その意味で、特に、学外委員の資質について規定すると共に、学外委員の数は、各国立大学法人の判断で、自律性を損なわない範囲で「相当程度の人数」を定めることができるようにすべきであると考える。

3.教育研究評議会と経営協議会の関係について

教育研究評議会の審議事項として、教育研究に関する予算や教育研究組織の編成について審議する権限が明示されていないが、経営組織と教学組織が分離されているとはいえ、教育研究予算や教育研究組織の編成は、教育研究のあり方と密接に関連し不可分一体のものであるから、これらの事項は教育研究評議会においても審議を要する事項とすべきであると考える。

本来、大学における運営は教育研究機能をどう充実させるかが基本原則であり、この点で教育研究評議会での意見が十分に尊重されるシステムの確立が肝要であると考える。この点に照らせば、経営協議会、教育研究評議会が並列的に置かれており、両者の関係が不分明で、運営のあり方が、法人によってばらつきが出てくる可能性がある。意識してそうなっているとすれば、法人の自由裁量を保障するという意味で、その限りでは是認できるが、経営協議会の意向のみが優先されることは問題であり、その危険性も同時に併せ持っている。

その意味からも、教育研究評議会の取り扱う審議事項をできる限り幅広く設定する必要があると考える。

4.学長選考等について

国立大学法人では、学長に全権が与えられることから、その正当性が十分に構成員に認知されることが運営を円滑に行なううえで肝要なことであると考える。この点からみると、構成員の意向聴取においては万全を期す必要があると考える。 

また、「学長選考会議」における学外委員は、最小限3分の1、最大限2分の1まで占めることができ、学外者の意向が強く反映され、自律性を損なうおそれがある。学外委員の数は、自律性を損なわない範囲で、各国立大学法人の判断で「相当程度の人数」を定めることができるようにすべきであると考える。

5.法人運営の自主性への配慮及び独立行政法人通則法の準用について

国立大学法人が独立行政法人通則法の定める独立行政法人ではないとしているが、一方では国による財源措置など独立行政法人通則法の規定を準用するとされている。国立大学の財政運営に対する国の保証、支援は重要かつ不可欠であり、その意味で法案には、教育研究という公共サービスを提供する国立大学法人に対する国の財政責任を明示すべきであると考える。

また、大学の目標・計画や評価を確定する最終的権限を、運用段階としてどこにおくのかということでは、法人運営の自主性への配慮が、空洞化することも考えられる。

6.附属図書館の法的位置付けについて

現行の国立学校設置法第6条は「国立大学に附属図書館を置く」と規定しており、これは高等教育及び学術研究をその本質的活動とする大学において、大学図書館が必須の施設であるという立法者の認識を示すものであり、この趣旨は国立大学法人化後も変わるものではないと考えられる。

また、大学において「知の生産」のために収集され、開発され、創造される知的資産は、大学の教育研究活動に直接資するというのみならず、それ自体が社会的資産として継承・発展されるべきものであり、そのための施設として、今後とも大学図書館が不可欠であると考えられる。

このような趣旨に沿って、附属図書館が明確な形で、「国立大学法人の業務」として、「省令に規定される」ことが望ましいと考えるので、「国立大学法人法案の概要」21に「附属図書館」を加えることを検討願いたい。

 

<宇都宮大学>

 

1.国大協の1月1月30日付の(別紙2)「理事会への提案とその理由等」の中で述べられている、「あらゆる方面との調整や法技術的な諸問題を克服しつつすすめられる非公開の作業・・・・」が本質で、こうした場面でどのような課題が出され、国大協の意見とどう調整したのかが、分からないと、結果だけでは、文科省の言いなりになっているような印象しか受けない。法案概要の結果だけでなく、そこに至る国大協と国との論点の整理をして欲しい。

2.1月31日付けの法制化対応グループの総括について

  秋の国大協総会で「重要論点」として承認した文面の意味が、今回(1月31日付け)の法制化対応グループの総括で、その文面の意味することが分かった。重要論点との表面的な整合性で、重要論点がもっている意義の巾の中で「法案」に近づけるように解釈しているように理解される。はたして秋の総会で学長は法制化対応グループのような解釈で「重要論点」を理解し賛成したのであろうか。

3.国大協としての状況認識

  安全性の概念からいえば、物事は安全だという人より、危険だと言える人に任した方がより安全である。国立大学法人法案も文科省の考えは国大協の意向に添っているから大丈夫といより、危ないという認識が重要。このことは、2月10日の国大大学長懇談会における長尾会長の挨拶の中で「文科省の今の考えを将来に継続してほしい」と話されたことが、ことの本質を示していると考える。そうした点から、1で述べたように、法制化対応グループの国立大学法案に対する分析が甘い、もっと厳しく判断し、その中でどう運営することが、個々の大学の自主的な発展につながるかが重要な課題である。

 

1.法制化対応グループの「『国立大学法人法案の概要』について」に沿っての意見

(1)法人としは自律性があっても、そのことは国立大学としての自律性があるような制度設計になっていないのではないか。

(2)「国が設置者」とする真の意味は、国が高等教育の充実・発展に責任をもつことの重要性を意味している。分析は表面的すぎる。本質的な面で違いがある。Aとして「一体的な運営が確保されていること」と主張する根拠は何か。

(3)「教育研究の特性やその自主性を尊重する観点」に一部なっているが、経営と教学の分離は本質的に違ったものになっていると言えないか。

文尾に「枠組みに沿った形で整理されているということができる」といっているが、整理されただけでは意味が無く、実質的にそうなっているかどうかが重要。

(4)7頁「上2行〜上5行」の内容は重要な指摘であると考える。

2.国立大学法人法案の概要の個別疑問について

 前もって、法案について各大学からの疑問を受け、文科省に渡してあれば、学長会議での文科省の説明も、もっと我々の疑問に答えるような形でより充実した説明になったのではないかと思った。ちなみに、法案の本質的なことではないのですが、解釈について幾つかの気になる点を列挙します。

@総則2項

「法」の取り方によって大きな幅がある。「教育研究の特性に配慮しなければならない」といった場合、一般には、経営と教学の統合というように考えるが、評議会の役割が狭められている。何を指して「配慮」するということなのか。またこの法案の運用で法人でなく「大学の主体性」が確保できるのか。

A経営協議会8項

  「学長が指名する役員及び職員」となっているが、これがゼロでもかまわないのか。12項の教育研究評議会も同様。

B学長の任命16項

  教育研究評議会からの選出に、役員が含まれることはあるのか。それと、「学長選考会議の定めによる理事を加えること」とは独立か。

C理事及び監事17項

  学外者の場合、例えば、文科省とか他大学の事務局長クラスが理事になることは該当するか。というよりそれが目的にような気がするのだが。

D役員の任期18項

  学長の任期は、学長選考会議の議に基づきということは、任期はその都度自由に変えられると言うことか。それとも、最初の学長選考会議で、学則のように決めることを意味するのか。

 

<千葉大学>

 

@     学問の自由の保障、それを具体化するものとしての教特法の趣旨を法案の中に盛り込むべきである。

A     設置者が国でなく法人となっている点が、最終報告と異なっており、この間接方式では国は大学の経費負担の義務を負わない可能性がある。

B     国立大学と国立大学法人が別組織とされ、後者が主要な決定権限を有する形の概要の案では、円滑なる一体的な合意形成ができない。

C     教学と経営が分離され、経営優位・短期的な業績向上志向となりかねない危険がある。

D     教育研究評議会が、狭い教学の範囲内に権限を限定され、予算・重要な(教育研究組織を含む)組織の設置・改正について審議できないことは問題である。

E     学長の権限が強大となることへの危惧。学長選考については、学長と学外者が多数をしめる学長選考会議により行なわれるとされ、大学構成員の意向の反映が明示化されていない問題がある。

F     学外役員による責任ある参画の保障が不明確である。

以上「最終報告」に照らして、法案そのものが明らかでないため「法案概要」の主旨が十分理解されない点、異なる点などが指摘されている。そのことをふまえ、国立大学協会としては「平成の大改革」が断行されようとしている時に、社会に対してその態度を正式に公表すべく何らかの手続きを踏む必要があると思われる。

 

<東京外国語大学>

 

1.   調査検討会議の最終報告では法人化後の大学の設置者は国であるとされていたが、「概要」では国立大学法人であるとされている。この変更について「見解」は、立法技術上の問題として整理し、2月10日の文部科学省の説明もほぼ同様であったと理解している。もし、そうであるならば、最終報告とりまとめ時にこれに参加された法律の専門家によって、その点は当然予想されていたと考えられるが、それについての問題点の指摘や議論は、一般の学長レベルで分かるかたちではなされなかった。法人化の根幹にかかわる変更を立法技術上の問題として説明し大学構成員の理解を得ることはきわめて難しい。

2.   「概要」では国立大学法人と国立大学の2つの組織が存在することになった。しかし、それは、観念上2つの組織が存在するのであって、実態は1つの組織として設計されており切り分けはできないというのが、2月10日の説明であった。しかし、本学の検討会では、本法案が今後法律として一人歩きを始めた時、国立大学関係者以外の世界でそうした法文解釈が通用するのか疑問視する意見が多かった。本職は「「大学」としての運営組織とは別に「法人」としての固有の組織は設けない」とする最終報告を是とする立場にあるが、法案全文ならびにそれを受けて制定される省令が明かにされた時、制度上、法人と大学の切り分けをせざるをえないにもかかわらず、それが極めて曖昧な規定になっているという心配はないのであろうか。百年に一度の制度改革をするにあたって、曖昧なスタートにならないことを切望する。

3.中期目標等に関して、「概要」では通則法の準用についてはふれていない。しかし、昨年12月段階の国立大学法人法(骨子素案)として独立行政法人反対首都圏ネットワークに掲載された法案によると、「中期目標の期間の終了時の検討」に関わって、通則法第35条が準用されるとされている。同条第3項は「審議会は、独立行政法人の中期目標の期間の終了時において、当該独立行政法人の主要な事務及び事業の改廃に関し、主務大臣に勧告することができる。」としている。これは最終報告にまとめられた評価の趣旨、ありかたを逸脱するものだと危惧する。

 

<東京工業大学>

 

○11項「教育研究評議会」について

  「国立大学の教育研究に関する重要事項を審議する機関として「教育研究評議会」を置く。」とありますが,教育研究評議会は法人に置かれるか大学に置かれるかを明確にすべきであると考えます。

○21項「国立大学法人の業務」について

  「学部・研究科・附置研究所・附属学校(=各法人の基本的な範囲)は省令で規定する。」とありますが、以下の理由により21項の中に、「附属図書館」を加えることをご検討していただきたくお願い申し上げます。

 (理由)

 1)現行の国立学校設置法第6条は「国立大学に附属図書館をおく」と規定しており、  これは高等教育及び学術研究をその本質的活動とする大学において、大学図書館が必須の施設であるという立法者の認識を示すものであり、この趣旨は国立大学法人化後も変わるものではないと考えられる。

 2)大学において「知の生産」のために収集され、開発され、創造される知的資産は、  大学の教育研究活動に直接資するというのみならず、それ自体が社会的資産として継承・発展されるべきものであり、そのための施設として、今後とも大学図書館が不可欠であると考えられる。

 3)このような趣旨に沿って、附属図書館が明確な形で、「国立大学法人の業務」として、「省令に規定される」ことが望ましい。

 

<上越教育大学>

 

1.附属学校の業務について

  附属学校については,現在,国立学校設置法第2条第2項においてその設置が規定され,同法施行令第1条で各大学ごとに規定されております。

  附属学校は,学校教育法第1条に定める「学校」として大学と並ぶ位置づけであるにもかかわらず,「国立大学法人法案の概要」では,「国立大学法人の業務」として「21. 学部・研究科・附置研究所・附属学校(=各法人の基本的な範囲)は省令で規定する。」とされているのみです

  しかしながら,附属学校の設置は,国立大学法人の基本的な業務として国立大学法 人法に規定されるべきものであると考えますので,そのように整理いただくとともに,その業務に係る運営費交付金については,標準運営費交付金(「管理運営に必要な経費」及び「学部・大学院学生等の教育に必要な経費」)に区分いただけるように要望いたします。

 

2.附属図書館の法的位置づけについて

  国立大学における附属図書館の法的位置づけについては,国立学校設置法第6条において「国立大学に附属図書館を置く」と規定されております。これは,高等教育及び学術研究を目的とする大学にとって,大学図書館が必須の施設であるという認識のもとに条文化されたものであり,このことは国立大学の法人化後においてもいささかも変わるものではないと考えます。

  「国立大学法人法案の概要」では,「国立大学法人の業務」として「21.学部・研究科・附置研究所・附属学校(=各法人の基本的な範囲)は省令で規定する。」とありますが, 附属図書館については言及されておりません。

  大学の教育研究活動のために収集される学術情報,それを利用して新たに生産される学術情報は,大学の教育研究活動に直接資する知的資産としてだけでなく,社会的資産としても継承・発展されるべきものであり,そのための施設としての大学図書館は今後も大学にとって不可欠であると考えられます。

  以上のことから,「国立大学法人の業務」として,附属図書館が明確な形で省令に規定されることを要望いたします。

 

<静岡大学>

 

1 「国立大学の設置者」について

「概要」で、「国立大学の設置者を国立大学法人」としている点は、調査検討会議「最終報告」[2の(1)法人の基本(大学の設置者)]での提言(「国を設置者とする」)はもとより、この間の国大協での議論の方向に照らしても、看過し難い重大な変質と思われる。この点に関わる2月10日の文科省の説明(財産の所有と直接管理、法人の長=学長等の論理)も、経営と教学とは不可分のものとする国大協の一貫した主張とも、また前記「最終報告」の趣旨とも、明らかに異なるからである。(少なくとも、文科省の説明は分かりにくかった)しかも、「概要」のU 組織および業務・7では、経営協議会は〔国立大学法人の経営に関する重要事項〕を審議するとされ、他方、11では、教育研究評議会は〔国立大学の教育研究に関する重要事項〕を審議するとしている。前者は、〔法人の経営に関する事項〕であり、後者は、〔大学の教育研究に関する事項〕である。この記述は、論理的にも、また一連の文脈からしても、二つの審議機関のそれぞれの所掌事項の規定を通じて、法人(経営)と大学(教学)との分離を明示したものと解せざるをえない。さらには、法人(設置者)主導の大学運営の体制とみることもできる。

最終の「法案」では、「最終報告」どおり、「国立大学の設置者は国とする」ことを明定し、国の設置責任を明確にすべきである。

2 「財務および会計」について

「概要」・25,26,27では、会計処理上の個別項目のみの記述にとどまっているが、この項で本来示すべきは、財務および会計に関する本体部分(運営費交付金等大学の財政基盤や会計基準・制度に関する基本的規定など)のはずである。仮に、積立金についてふれる場合でも、それが発生する会計処理上のケースと意味、またそれを繰越す場合の大臣の「承認」の要件や基準はどうなのかなどに及ぶ記述がなければ、なぜ25,26,27の3項目なのかの意味が不明である。

3 その他「通則法の準用」について

通則法が準用される〔その他の規定〕の内容上の基本点が示されるべきである。それは、「国立大学法人法」は、通則法の「個別法」ではなく、〔大学の特性や自主・自律性を尊重〕して策定されるとした立法上の基本的視点に関わる問題だからである。

 

<愛知教育大学>

 

1.国立大学の設置者

国立大学の設置者が、国ではなく、「国立大学法人」となることについて、やはり、設置者は国であり、財政支出の責任を明確にする必要がある、と考える。今後の財政支出の滞りが「国立大学法人」の所為にされる可能性がある。国立大学法人は存在するが、大学は存在しないということが起こり得る。

また、「国立大学の法人化に関する法制的検討上の重要論点」においても、「法人化後の国立大学に関する学校教育法上の設置者は国であるとの基本的な枠組みは堅持する必要があること。」と述べ、これが法人化をする場合の前提条件ではなかっただろうか。

このことと関連して、「国立大学」と「国立大学法人」の関係を明確にしていただきたい。

2.経営協議会等の名称

「経営協議会」という名称について、調査検討会議の最終報告で使用されているように、「運営協議会」という名称にしてほしい。

大学の存立基盤は、まず教育研究であり、その次に運営(経営)である。まず、生産するものがあってはじめて商売になるのではないでしょうか。経営協議会ではまず経営ありき、その次に教育研究があるというのでは、企業等と何ら変わらないのではないか。そして、「経営」という言葉もすべて「運営」に戻してほしい。

また、副学長という名称が、理事と変更になっているが、これも上記の理由により、もとの副学長に戻してほしい。

さらに、上記の理由により、国立大学法人法案の構成として、役員会、運営(経営)協議会、教育研究評議会の順ではなく、役員会、教育研究評議会、運営(経営)協議会の順にしてほしい。

3.運営(経営)協議会の学外委員の数

学外委員Bの数は、学長が指名する役員及び職員Aの数と同数にすべきである。その理由は、学長は学外から選出されたり、学内から選出されたりする。学長が学外から選出された場合は、学内事情に必ずしも明るくない学外の者の数が学内の者より少なくとも2名多くなる。果たしてこのような状況で大学の運営がスムーズにゆくのであろうか。

4.教育研究評議会の審議事項

大学の教育研究の中で、学生の教育を考えるとき、どれだけの固まりとして教育を実施して行くのか、学生定員は極めて重要な事項であり、教育研究評議会の審議事項の中に、「学生定員」を入れるべきである。

そして、教育研究を構想する中で、重要な「教育研究組織」は、役員会での議題ではなく、教育研究評議会の審議事項に入れるべきである。

<滋賀大学>

 

1.  設置者について

この法案では設置者はあきらかに国立大学法人であって、国ではない。国立大学法人化特別委員会法制化対応グループの見解では、実質的には設置者は国であり、国立大学と国立大学法人とは一体であるという見解であるが、これはあいまいである。経営上の責任が裁判で争われた場合には、あきらかに法人が責任者ではないか。それとも財政上の責任は国がとるのであろうか。もし国と法人が協同して運営するというならば、両者の責任の分限を明確にして欲しい。あいまいな解釈では混乱を生む。

2.  経営協議会と教育研究評議会との関係について

大学は教育研究機関であって、たんなる経営体ではない。法における管理運営の組織の順序は、当然教育研究評議会が経営評議会の前に規定されるべきである。法案の順序では、教育研究評議会は法人の経営評議会によって規定されるようにとられる。法の規定の順序は反対にして欲しい。

3.  中期目標・計画の評価について

研究・教育の評価は必要であるが、企業の生産物・サーヴィスの評価とことなり、短期的に判定できないものが多い。また独創的で新しい分野の研究は判定するものがいなかったり、社会的常識と異なり対立する場合があり、長期にわたって評価されない例もある。中期計画の実績は国民に公表する必要があるが、それを評価し、財政と関連させることは慎重でなければならない。異議申し立ての制度と機関がいるのではないか。

4.  財務について

「概要」では運営費交付金についてふれていなかった。標準運営費交付金と特定運営費交付金との配分割合などが明確になっていない。後者は補助金的な性格をもつので、陳情の対象になると、法人の自律と抵触しないか。

5.高等教育のグランドデザインについて

今問われているのは高等教育全体の改革であり、その中で国立大学の歴史的役割を評価し、その成果を継承し全体改革の中での国立大学のあり方が設計されるべきである。このままでは高等教育の未来が展望できず、行政改革の一環と評価されるのではないか。

 

<滋賀医科大学>

 

○各大学医学部附属病院は、文部大臣(当時)を設置者として開設承認を得ているが、法人化後、国立大学法人の長(学長)が設置者となるため、厚生労働省に改めて開設承認申請など諸申請をする必要がある。

 当該諸申請は多岐にわたり膨大なものであるため、再申請をすることなく、読替等の法令が発せられ処理いただけるよう、文部科学省及び厚生労働省に依頼願いたい。

○24 国立大学法人・大学共同利用機関法人の業績に関する評価を行うため「国立大学法人評価委員会」を置く(ただし、評価の際、「独立行政法人大学評価・学位授与機構」(仮称)が行う教育研究評価の結果を尊重しなければならない)。とあるが、現在の学位授与機構の評価の在り方について、第8常置委員会にいろいろ意見・要望が寄せられている。

 国立大学法人評価委員会が学位授与機構の教育研究評価の結果を尊重されるのであれば、学位授与機構において、適切な評価がなされるよう組織・運営等の改善をお願いしたい。

 

<大阪大学>

 

 1月31日に文部科学省から提示された「国立大学法人法案の概要」(以下「法案概要」という。)について、国立大学協会「国立大学法人化特別委員会法制化対応グループ」から同日付けで添付された「法案概要」の見解整理(以下「見解整理」という。)を参考にして検討した結果、「法案概要」は「新しい『国立大学法人』像について」(以下「最終報告」という。)の骨子を概ね実現したものと考えるが、次のような諸点が不明である。「最終報告」の精神を具体化しようとする国立大学協会法人化特別委員会の努力を多としながら、いま一層の努力をお願いしたい。

第一に、「法案概要」は制度の骨子を示したものに過ぎず、実際には、その前文において「国立大学法人法」の高邁な理想と精神が述べられることが期待される。「最終報告」の「基本的な考え方」における3つの前提と3つの視点が書かれることが期待される。さらには、学術研究と教育に対する国のグランドデザインと方向性が謳われることが望ましい。

第二に、国は「国立大学法人」を設立し「国立大学法人」が「国立大学」を設置するという二重構造になったことにより、「役員会」と「経営協議会」は「国立大学法人」に属し(法案概要5、7)、「教育研究評議会」は「国立大学」に属する(法案概要11)とも解される。そうであれば、「見解整理」の論点4の項(5頁)で述べられている「双方をともに「国立大学法人」の審議機関として対等に位置付ける」ことが可能であるかどうかが懸念される。本来、「国立大学法人」の設立目的が「国立大学」における高い自律性を持った教育研究の遂行であることを考えれば、教育研究の在り方に優先して経営があってはならず、両審議機関の設置の仕方については慎重な配慮が必要である。

第三に、「最終報告」で「運営協議会」「評議会」とあったものが、「経営協議会」「教育研究評議会」と名称変更されたことにより、審議内容の差別化が一段と明瞭となっている。大学の使命は高水準の教育研究の遂行であり、国立大学法人化がより効率的な遂行を求めているとはいえ、「教育研究評議会」が望ましい経営のあり方について意見が言える制度的保証が必要ではないか。

第四に、「役員」の構成は学長、理事(その数が法人毎に定められる)、監事2名とされており(法案概要5)、大学法人毎にその構成数が定まる。場合によっては、大学の運営に必要な役員を大学の判断で置くことができるのかどうか明らかでない。もし大学運営が理事(専任職)にのみ任されるならば、大学法人毎にその事情に通じた役員を養成し確保することは次第に難しくなると考えられる。大学の教員または専門性に優れた事務職員を「充て職」として大学運営に参画させることがなければ、大学は個性を失って行くと憂慮される。

第五に、学長選考に係る「学長選考会議」の構成を見るとき(法案概要16)、「最終報告」にあった「運営協議会」の委員が「経営協議会」の学外委員に限定されている。また、「最終報告」にあった「具体の選考過程において学内者の意向聴取手続(投票など)を行うこと」が可能であるのか「法案概要」では明確でない。「最終報告」の投票などの過程は今後も必要と考えられ、是非とも担保するべきものである。

第六に、「法案概要」では中期目標の一つに「自己評価や情報発信に関する事項」があるが、これは「最終報告」で「社会への説明責任に関する目標」とあったものに相当すると考えられる。「社会への説明責任」というとき、大学がその活動を積極的に開示する姿勢を窺わせるが、「自己評価や情報発信」からは積極的な開示を要求する姿勢は見えない。文言の変更はこのような内容の変更を伴っているのかどうか不明である。

第七に、学部・研究科・附置研究所を省令に書くとされているが、附属図書館は大学にとって重要な組織であるから、附属図書館も併せて省令に書いていただきたい。

 

<神戸大学>

 

1.経営協議会,教育研究評議会の規模,メンバーの任期などについては,各大学で定めてよいと理解してよいか。

2.教育研究評議会の構成のCで「職員」としているのは,教官以外の事務系職員なども含まれると理解してよいか。

3.19「役員の解任」で「業績悪化」とは具体的に何を意味するのか。

4.法人の業務の21で「附属学校」が規定され,「附属病院」が規定されていない理由が理解できない。

    附属施設のうち,なぜ「附属学校」だけなのか。

 

<和歌山大学>

 

1.国、国立大学法人及び国立大学の三者の権利・義務関係が依然として不明瞭な部分があり、教職員に不安をまねている。従って、このことについて明確にするとともに、国の責任範囲を明確にして貰えるように働きかけていただきたい。

2.大学の自主・自律の確保がこれまでと同様に担保されるかどうかに対する不安があり、このことについて確認いただきたい。

3.国立大学法人の設置は国の責任回避をもたらすものではなく、単に法人化のための形式(法制上の手続き)であることの確認を今一度していただきたい。

4.法人化は改革そのものであるが、産業界におけるように「ヒト減らし」、「カネ減らし」及び「モノ減らし」であってはならない。国の根幹を揺るぎのないものにするには、有能な人材育成こそが肝要であり、そのための人的(教職員数の増員)・財政的支援は不可欠である。このことの認識を文部科学省に認識して貰えるよう働きかけをしていただきたい。

5.今回の法人化問題は、わが国大学制度を根本的に変革しようとするものなのか部分的に改めていこうとするものなのかが十分見えていない。現場の教職員においても大学改革の必要性は感じているが、その方向性が十分示されていない状況にあり、若干の混乱が見られる。また、国立大学と言っても規模も中身も異なっており、同じレベルで取り扱うことのできない点もあるとも思われる。これらのことについても国大協として配慮していただきたい。

 

<島根大学>

 

最終報告においては,経営協議会と教育研究評議会の両審議機関が対等な立場でそれぞれの役割を果たすことが期待されている。したがって,国立大学法人法案の具体の立案に当たっては,両審議機関が国立大学法人の審議機関として対等に位置づけられる制度設計となるよう重ねて要望する。

 

<広島大学>

 

(意見)

1.「国立大学法人の業務」に関する「省令での規程」について

   「国立大学法人法案の概要」の21(国立大学法人の業務)において,「学部・研究科・附置研究所・附属学校(=各法人の業務の基本的な範囲)は省令で規定する。」とあるが,附属病院は各法人の業務の基本的な範囲として欠くことの出来ない組織であることから,この文言の中に,「附属病院」を加えていただきたい。

 

(質問事項)

1.理事の数の基準について

理事の数については,法人ごとに数を定めることとされているが,その基準をお教え願いたい。

2.経営協議会及び教育研究評議会の構成員について

  経営協議会及び教育研究評議会の構成員の数について,法令で定められるのかお教え願いたい。

3.学生定員の変更に関する審議機関について

学生定員の変更は,教育研究、経営両方に関連する事項であり,組

織の改廃と連動する役員会の審議事項と考えるが、そのように考えてよいかお教え願いたい。

4.法案の条文の公表について

今回,法案の概要が示されたが,法案の詳細並びに政令及び省令で定められる予定の事項及びその内容について,可能な限り早い時期に提示をお願いしたい。

 

<高知大学>

 

はじめに

 概要及び法制化対応グループ見解について、高知大学は国立大学協会の一員として、国立大学の法人化に関して、独立行政法人通則法によらない新しいタイプの国立大学法人化を展望し、その実現を目指してきた。この立場から、概要や法制化対応グループ見解にはいくつかの疑義を挟まざるを得ない。法案化の最終段階で、国立大学協会が英知を結集して今後の大学の未来にとって禍根を残さない対応をとられることを切望し、この間の経過に鑑み、国立大学のあり方に関する法律上の改変は最小限の規定にとどめ、今後の各大学の取組みの中で解決できる余地を残すために、性急な制度化を避けるという配慮が今、必要であることを強調したい。

 

1.国立大学法人法の性格の明確化

 国立大学法人化問題は、国の行財政改革を契機としながらも、それとは一線を画して大学改革の一環として行なうということは、国立大学協会や文部科学省を含め、国立大学関係者の一致した考えであった。

 平成14年3月の最終報告は、国立大学の法人化を検討する場合に、まず前提とされるべき基本的考え方の整理、検討の前提として、㈰ 大学改革の推進、㈪ 国立大学の使命、㈫ 自主性・自律性の3点を掲げていた。㈰ の中では、「現在の国立大学に、単に法人格を付与するとか、既存の法人制度の枠組みを単純に当てはめるといった消極的発想ではなく、予算・組織、人事など様々な点で規制が大幅に緩和され大学の裁量が拡大するといった法人化のメリットを大学改革のために最大限に活用するという積極的な発想に立って、新しい国立大学の姿を模索する必要がある。」としていた。

 概要では、国立大学法人とは「独立行政法人通則法に規定する独立行政法人ではなく、この法律の定めるところにより設立される法人をいう」としている。現行の国立大学は国立学校設置法で規定される国の機関であり、学校教育法第5条の設置者管理主義、設置者負担主義の原則に則り、国が維持・管理し、憲法で保障する学問の自由に基づき、大学自治の法制と慣行が成立してきた。一般の独立行政法人の制度になじまないというのは、こうした大学という社会制度、機関の特性を踏まえた当然の帰結である。したがって、国立大学法人化の立法作業においては、この原則をさらに発展させ、自治・自律の拡大に伴う管理や社会的説明責任のあり方や国費支出の受け皿としての公的責任の所在を担保するために、いかなる法制がふさわしいのかが中心課題となるべきである。

 この見地からすれば、現行の国立学校設置法の一部改正の発想や独立行政法人通則法の仕組みの外での新しい国立大学設置法等の発想があり得ると考えられる。概要ではそうした場合のメリット、デメリット等についてまったく明らかにされていない。なぜこうした法案の形式に至ったのかを文部科学者及び国大協特別委員会はすべて大学に説明する義務がある。

 

2.国立大学が法人を管理運営するのか、国立大学法人が国立大学を管理運営するのか

 国立大学も大学の一種であるから、当然に学校教育法の定める大学の規定に従う。日本における大学の法律上の規定は、憲法や教育基本法を受けて、学校教育法第5章に存在し、大学の目的、組織、職員、教授会等が定められている。これらを前提に大学の管理運営の仕組みや慣行が存在している。

 概要では、学校教育法改正は第2条を除き、予定されていない。したがって、概要が改革の対象にしているのは学校教育法が予定している大学の教育研究の目的や組織一般ではなく、国立大学の設置形態や維持管理の仕組みであり、学校教育法でいえば、その総則に当たる第1章に関わる部分のはずである。さらに教育公務員特例法で規定されている大学の自治に関わる仕組みの継承が課題となる。

 概要は、国に包摂される各国立大学法人が各国立大学の設置者であるとする。すなわち、各国立大学法人は、その設置する大学その他の教育研究機関の維持・管理の責任主体となる。このことを理由に、国立大学法人の運営組織と国立大学の運営組織の一体化が図られ、法人の運営組織に大学の運営組織が接着されることになった。その結果、評議会は教育研究評議会としてその機能と権限を限定され、教授会はその名称も消えている。

 大学を構成するアカデミック・コミュニティの権限が一段と弱められ、もっぱら管理の対象とされている感がある。確かに、評議会や教授会のあり方について、この間、諸々の議論があることは事実だが、学校教育法において大学の「重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と心置事項となっている教授会がその名称すら出てこないのは不可解さを通り越して不審を抱かせるものである。

 要は、国立大学法人の運営組織を重視するあまり、大学自体の運営組織についてはこれを軽視ないしは敵視し、それが持つ教育研究・大学運営上の機能について正当に評価する視点が保持されていないことが問題である。いまや、大学自治の担い手を教授会、その代表者である評議会のみに求める時代ではない。しかし、だからといって弊履のごとく、これを投げ捨ててよいわけではない。その活性化や再構成の方向もあるのであり、少なくとも大学における法定心置機関である教授会については、その位置づけを国立大学法人法で行なうべきである。

 

3.経営事項と教学事項の機械的分離の問題

 大学の主たる任務は教育研究であり、大学の業務はすべて教学に属すると言うこともできる。したがって、教学事項は広く概念化し、経営事項は狭く概念化するのが適切である。中期目標や中期計画、組織の設置改廃及び予算計上などもその目的や支出の方法、評価を考えれば、その実施に当たる当事者の介在なしに効果をあげるものではない。国立大学は、国が設置する高等教育機関であり、国民の税金に支えられる大学である。法人に移行して、国の資産や交付金を受け取る以上公的な管理責任を自主的に負わなければならない。だからこそ、教育研究に当たる当事者による自己決定権の仕組みが必須であり、このシステムの下ではじめて当事者に対する結果責任も問えるのではないだろうか。

 謂うところの教育研究評議会の権限を教学事項に限定するという消極的発想では大学の活力は生まれない。少なくとも評議会・教授会サイドに学長をはじめとする役員会の人事権を付与すべきであろう。この点、諸外国の事例に学ぶべきである。

 

4.個別事項

〔1〕大学設置形態

(1)  最終報告においては、「学校教育法上は国を設置者とする」、「大学の運営組織と別に法人としての固有の組織は設けないことを原則とする」とまとめられたが、概要においては、学校教育法第2条を修正して、学校教育法上は法人化後も「国立大学」とするとし、「国立大学法人」が「国立大学」を設置すると本質的な違いをみせている。その結果、国の財政上の責任は不明確なものとなり、法人は経費負担の直接的な責任を負うこととなる。「独立行政法人法通則法」を準用する点など財源措置について不透明さは免れないので、国立大学の公共性を高めるために、国が財政上の責任を負うことを義務づける規定を盛り込むべきである。

(2) 経営と教学が明確に分割され、大学の自主的・自治的管理範囲は大きく制限されている。この点は、国立大学協会法人化特別委員会法制グループの意見にも反する。「経営協議会」は、「学外委員が2分の1以上でなければならない」としているので、学外者の意見が押し通され、一般の会社経営的発想で打ち出す経営方針に、「教育研究評議会」や全教員が従わさせられ、教育研究の軽視を生む要因となり、大学自治の本質を失わせる危険性が高い。最終報告の性格とは異質な構造をもつものになっている点を修正すべきである。

(3)  大学においてはこれまでの運営が示すように教学と経営は明確に分離することができない。「経営と教学の双方にまたがる案件」については、評議会と経営協議会の両組織の「代表による合同の委員会等を開催する」などが考えられていたが、概要では「主に」が取り去られ、合同の委員会等については言及されていない。したがって、教育研究評議会は形式上では国立大学法人の組織とされているが、「国立大学の教育研究に関する重要事項を審議する機関」と規定され、国立大学法人の運営(予算の編成・執行、決算、組織の設置・廃止など)からは、法構造的に排除されている。大学の基本的で主要な業務は教育研究であることに変わりなく、大学の経営といえどもその主要な内容は教育研究に大きく関わっていることは言をまたなく、大学の根幹を揺るがすような教学と経営を明確に分離すべきではない。

(4) 「独立行政法人通則法の規定は必要に応じ準用」と述べていることから通則法の基本骨格が貫徹され、各国立大学法人が各々国立大学を設置するが、将来的には、複数の大学を設置可能となっている。その場合、教育研究評議会は各国立大学ごとに必要となるので経営協議会に対する教育研究評議会の発言力は低下する。「国の関与と法人の自主性・自律性の担保」という法人制度のもつ矛盾が法案化によりさらに顕在化し、学問の自由と大学自治を保障する制度上の枠組みを著しく弱体化させ、取り返しのつかない深刻な悪影響を招く恐れがある。

(5)  国を直接の設置主体とする場合と、国に含まれる国立大学法人が設置主体となる場合でどのような具体的な差異が生じるか慎重に検討する必要があるが、問題は大学の管理運営が「大学」の組織によってではなく、「法人」の組織によってなされることである。独立行政法人化の検討の前提としてきた「大学が法人格を持つ」という点が消え、私立学校と同じ形式になる。「国が国立大学法人を設置する」という場合とは違い、国と国立大学法人との法的関係を明確にすべきである。

〔2〕大学、法人の組織

(1) 概要は、法人の役員として学長、理事及び監事を置くとし、学長及び理事で構成される役員会の議を経るが、「法人」の根幹をなす重要事項について学長に大幅な決定権を与えることとしている。「大学の自主性、自律性の向上を目的にして法人化を求める」いう文部科学省説明とは逆に、画一的に学外者が過半数を占める経営協議会を規定しているのは矛盾している。

(2) 役員に関しては、最終報告の「学長および副学長」から、概要では「学長および理事」と変更され、外部者の登用に道を開くとともに副学長の位置、役割を不明確なものとしている。

(3) 学長選考会議に「学長又は理事を加えることができる」として学外委員が過半数をしめる可能性を開き、大学構成員の意見を反映しない学長選考方法である。

(4) 大学の経営組織としての「法人」の組織と権限を明確にし、学外者の参加する役員会、経営協議会の権限を強化し、研究教育組織の権限を弱めることは教育研究の観点からは本末転倒である。

(5) 「副学長」から「理事」への名称変更に端を発し、「役員会」の「監事」は文部科学大臣の任命で、「理事」も学外者を含めなければならないが、仮に「学長」が学外者となり、理事全員を学外者とした場合、役員会には学内者が一人もいないことになる。「副学長」から「理事」への名称変更は、これらのポストを文部科学省からの天下り温床とする危険性を助長する。

(6) 学外者が2分の1を超え、学長を含めた経営協議会、学長選考会議の運営に対する大学教職員の発言権を保証すべきである。

(7) 「経営協議会」に学外委員を2分の1以上とする点は、外部の意見反映といったレベルを超えており、大学の自治をないがしろにし、大学構成員で構成する教育研究評議会を国立大学法人の運営から排除することになる。経営協議会が、教学と教員人事以外の経営事項をすべて審議するが、経営協議会責任の所在が薄弱であるため日常的経営は学長が中心にならざるをえない。経営協議会を構成する学外委員の任命が、「教育研究評議会の意見を聴く」こととしている点は、教育研究の重要事項を審議する「教育研究評議会」が「経営協議会」に対して教育研究の論理を尊重するよう求める制度とみることもできるが、教育研究評議会さらには教授会の組織・構成がいかなるものか、その根拠が省令か学内規則か、なお不明である。経営を優先し、教学を従属させないような運営が行われる明確な歯止めをもつ方式を採用すべきである。

(8) 「教育研究評議会」は形式上では国立大学法人の組織とされているが、予算配分や部局の改廃等、大学の根本的な企画立案についての審議権は持たない。教員の教学と経営の重要な相関能力は訓練されず、中・長期的にはその能力は低下すると予想されるので、この点を改善すべきである。

〔3〕学長について

(1) 学長は法人運営、大学運営に関する全ての権限を集中した形で位置付けられ、学長は役員会、経営協議会、教育研究評議会の議長となり、学長及び少数の理事に権限を集中するシステムであり、学長を解任する権限は文部科学大臣のみが保持し、大学構成員からのチェック機能は欠如し、チェックアンドバランスの観点から欠陥をもっている。

(2) 学長解任の理由に「業績悪化」が上げられているが、文部科学大臣が定める「中期目標」との関係で理解しなければならず、短期間の成果にのみ経営・管理の執行が求められる危険性をもち、大学の教育研究にとって致命的な欠点となる。

(3) 経営協議会、教育研究評議会から同数で選ばれる学長選考会議に現職学長自身が参画し、それ以外の委員の指名・任命権も持ち、現職学長に直接従属し、学外委員が最大2分の1いるという構造の下で学長が選考される学長選考会議は大学の必須とする自治を根本から否定し、教育研究を直接担当する大学構成員の意見を反映できない。この学長選考方法は、「教職員が一丸となって「新生国立大学」の構築」(文部科学大臣談)することを妨げるものである。経営危機などさまざまな状況を想定したとき、学長に一定の権限が集中することはあり得るが、理事を誰がどのように選任するのかも不明であり、仮に学長が単独で指名できるとすれば、学長に極度に権限が集中することになる。さらに、学長選考会議が現職学長の解任提案権をもつている不可思議な構造である。この学長権限ならびに学長選考方法は執行権限と議決権限の分離と相互チェック原則から逸脱している。

(4) 法人移行の際の学長が現在の任期を維持することは現職学長は自己の後継者を視野にいれることが可能となり、管理運営方針の大胆な転換・展開は不可能で、「業績悪化」による学長解任という事態でもなければありえない。さらに、業績悪化を審議する学長選考会議には学長が参加するという異常組織である。その強い権限を有する学長や役員の解任に「業績悪化」が明記され、評価システムおよび文部科学大臣が任命する監事を通じて、国が学長を強く規制する仕組が設定されている。

(5) 学内構成員の意思を反映する仕組みが保障されない経営協議会の学外委員が1/3以上、教育研究評議員が1/3以上の他に、学長と学長が任命する役員からなる少数者による役員会決定では、大学の教育研究の特性を無視した運営をすることになる。また、大学が社会の声を主体的かつ謙虚に取り入れることは不可欠であるが、「学長選考会議」の半数を教育・研究の実情に通じていない学外者がしめることができるよう規定しているのはその権限をはるかに超える。

〔4〕中期目標・計画

(1) 教育研究に直接関与しない学外委員が2分の1を超える経営協議会が審議した中期目標は文部科学大臣によって国立大学法人の意見に配慮しつつ修正・決定し、大学に提示され、大学はそれに基づいて中期計画を作成し文部科学大臣の認可を受けなければならない。国立大学法人の基本的な性格は総則において「独立行政法人通則法に規定する独立行政法人ではない」と記述されているにもかかわらず「独立行政法人通則法の規定は必要に応じて準用」とあるように通則法に最終的には依存したもので、文部科学省による関与が強化され、教育研究のあり方を歪める評価と資源配分を危惧する。「大学の意見をあらかじめ聴き、配慮しなければならない」と付け加えられたが、これまで蓄積されてきた教育と研究の自主性・自立性を文部科学大臣が侵害する危険性がある。国立大学の設置主体は「国立大学法人」であるとして、文部科学省は国立大学から一定の距離を置いた立場に自らを位置付けながら、中期目標・計画をチェックし、国立大学の教育研究の自主性・主体性を大きく制約するシステムは修正すべきである。

〔5〕身分の継承

(1) 国立大学職員の権利義務が国立大学法人に継承されるとされているが、一般的文章から身分の承継問題の具体的な事柄を予測することは困難である。

〔6〕附属図書館

(1) 現行の国立学校設置法第6条は「国立大学に附属図書館をおく」と規定しており、高等教育及び学術研究を本質的活動とする大学において大学図書館が必須の施設であるという趣旨は国立大学法人化後も変わるものではない。「知の生産」のために収集され、開発され、創造される知的資産は、大学の教育研究活動に直接資するというのみならず、それ自体が社会的資産として継承・発展されるべきものであり、そのための施設として附属図書館が明確な形で国立大学法人の業務として規定されるべきである。

 

おわりに

(1) 国立大学協会法人化特別委員会においては、文部科学省より示された概要への疑義を発し、大学構成者が大学運営に参加できるようなより良い制度設計になるよう要望する。

(2) 学問の自由と大学の自治を守り、「非公務員型」問題をはじめ教職員の身分・権利擁護の立場から修正、附帯決議等を含めた取り組みを要望する。

(3) 文部科学省には全国の国立大学に向けて各大学の疑義、要求などについて「Q&A」を早急に提示することを要望する。

 

<佐賀大学>

 

1 法案には,教授会に関する規定がない。教授会に関しては,学校教育法第59条第1項(大学には,重要な事項を審議するため,教授会を置かなければならない。)に規定されているが,法案の概要に記載されている役員会,経営協議会及び教育研究評議会においても「重要事項を審議する」となっており,整合性がとれていない。

2 T総則の1に「「国立大学法人」とは,国立大学を設置することを目的として,この法律の定めるところにより設立される法人をいう。」と記載されているが,概要からのみ判断すれば,「国立大学法人」は,複数の大学を設置することも可能と解釈してよいのか。

3 U組織及び業務の20に「国立大学法人の業務に関する規定を置く。」と記載されているが,独立行政法人通則法では,業務の範囲について個別法に規定されている。国立大学法人の業務に関しても別途規定されると思われるが,その場合,業務範囲を幅広く規定してほしい。

4 W財務及び会計の26に「長期借入金を可能にする。」と記載されているが,学債の発行は可能であるか。

5 U組織及び業務の21に「学部・研究科・附置研究所・附属学校は省令で規定する。」と記載されているが,附属図書館は,どの法令で規定されるのか。

 

<大分大学>

 

@ 2月10日の文部科学大臣の挨拶にもあるように,大学の自主性・自律性を高める制度設計を心がけてほしい。

A 国立大学協会は,調査検討会議の最終報告と法案概要との相違点を文部科学省との間でもっと詰めて,法案そのものについても議論する機会を設定してほしい。

B 法制化対応グループの重要論点の見解にもあるように,法人化後の国立大学に対する国の設置者としての責任の明確化に努めてほしい。

C 国立大学法人の運営において,経営協議会と教育研究評議会の対等性を確保してほしい。

D 学長等役員の選考にあたっては,大学構成員の意向が反映されるシステムの構築を目指してほしい。

<宮崎大学>

 

1.「国立大学法人法案の概要」は、国立大学を設置するための「国立大学法人」について規定するものであり、そこに設置される「国立大学」の中身がほとんど明らかにされていない。また、「関係6法案の概要」の「E国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(仮称)」の内容も明示されていないので、「国立大学」はどういう姿になるのかが不明確である。したがって、両法案の全容を直ちに明らかにすべきである。

2.「T総則」の2で「大学…における教育研究の特性に配慮」とあるが、ここに、「大学の自治および学問の自由」という具体的な特性を明記すべきである。 また、前述の(1)とも関連するが、学部教授会の権限や附属図書館などの位置付けを明確にすべきである。

3.「法人」の長は学長が兼ねることにはなっているが、「法人」が「大学」より上位に位置することは法的に明確に打ち出されている。また、「法人」の役員会は、中期目標の全体、予算の編成から決算、さらに重要な組織の設置・廃止など権限が非常に大きくなっている。一方、「大学」の「教育研究評議会」には学外者が入る可能性があり、審議事項については教育研究の狭い事項に限定されており、「最終報告」と大幅に異なっている。

4.学長は、理事の解任権をもつなど権限が強化される一方、学長選考にあたって、「大学」内部の教職員が関与できることが明記されていない。また、学長の専横体制を抑えるための学内のチェック機能がなく、「大学」全体の自主・自律が保障されていない。学長からのトップダウンばかりが強調され、ボトムアップの体制が不備である。

5.今後の日程について、2月中に閣議決定、国会上程とのことであるが、法案の成立のめども明らかでない。法律が成立してからなお、政令や省令を整備し、2、3年の試行期間を経て実施されるのが通例である。文部科学大臣が、「国立大学の法人化は、明治以来の我が国大学制度の大きな転換点」と言われるのであれば、なおさらのこと、拙速を避け、より整備した形での発足が必要である。

 

<旭川医科大学><北見工業大学><秋田大学><群馬大学><東京学芸大学>

<電気通信大学><横浜国立大学><福井大学><奈良教育大学><鳥取大学>

<島根医科大学><福岡教育大学>

 

1.「国立大学法人の業務」に関する「省令での規定」について

  「国立大学法人法案の概要」の21項には、

   「(国立大学法人の業務)

    21.学部・研究科・附置研究所・附属学校(=各法人の基本的な範囲)は省     令で規定する。」

 とあるが、この文言の中に、「附属図書館」を加えることを検討していただきたい。

2.その理由

 1)現行の国立学校設置法第6条は「国立大学に附属図書館をおく」と規定しており、  これは高等教育及び学術研究をその本質的活動とする大学において、大学図書館が  必須の施設であるという立法者の認識を示すものであり、この趣旨は国立大学法人  化後も変わるものではないと考えられる。

 2)大学において「知の生産」のために収集され、開発され、創造される知的資産は、  大学の教育研究活動に直接資するというのみならず、それ自体が社会的資産として  継承・発展されるべきものであり、そのための施設として、今後とも大学図書館が  不可欠であると考えられる。

 3)このような趣旨に沿って、附属図書館が明確な形で、「国立大学法人の業務」として、「省令に規定される」ことが望ましい。