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独行法反対首都圏ネットワーク

☆「国立高等専門学校の法人化について(中間報告)」3つの問題点 
 . 2003年2月17日 奈良工業高等専門学校職員組合
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                                                     2003年2月17日

     「国立高等専門学校の法人化について(中間報告)」3つの問題点


                                              奈良工業高等専門学校職員組合
                                                     執行委員長  梅原 忠

2月5日『今後の国立高等専門学校のあり方に関する検討会』は「国立高等専門学校の
法人化について(中間報告)」を公表しました。この内容については多くの問題点を含
んでいますが、今回はこの中から3点に絞って考えたいと思います。

問題点1 ⇒ 『55の国立高等専門学校が1つの法人格にまとまる』(中間報告7ペー
ジ)

報告の4ページ目に「法人化の意義・期待される効果」として「高等専門学校の個性化、
活性化、教育研究の高度化」があげられています。これまでどおりの国立学校ではこの
3つのキーワードが実現できないのか、ということに関しては異論がありますが、ここ
ではいちおう置いておくとして、ではなぜ1法人か、ということを問題にしなければな
りません。この3つのキーワードを実現するためには全国1法人ではなく各高専ごとに
法人を作り、それぞれが法人格を持って努力して個性化をはかり、活性化し、教育研究を
高度化させるほうがはるかに自然だと思われます。高専のような小さな所帯で法人化は
無理、との声も聞こえてきますが、国立大学でもたとえば鹿児島県にある鹿屋体育大学
は、大学院を合わせても学生定員は700名、また富山県にある高岡短期大学はさらに
少なく学生数520名(専攻科を含む、教職員数も97名)と、どちらも奈良高専より
も小規模ですが他の国立大学同様、それぞれひとつの国立大学法人になることになって
います。


問題点2 ⇒ 『根拠法としては「独立行政法人通則法」及び「個別法」とすることが適
当である』(中間報告7ページ)

  現在のところ国立大学には学長の選出やその運営等において大幅な自治が認められて
います。(ご承知のように高専にはこのような自治はまったくないため残念ながら高専
は国際的には高等教育機関とは認められていないのが実情です。)この大学自治のため
に今回の法人化にあたっても文科省は国立大学を「独立行政法人通則法」ではなく、あ
らたに「国立大学法人法(仮称)」をつくって法人化しようとしています。しかし中間
報告は高専については大学と切り離して「通則法」による法人化をめざしています。
  独立行政法人通則法第2条で独立行政法人は次のように定義されています。《この法
律において「独立行政法人」とは、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から
確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実
施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないお
それがあるもの又は一の主体に独占して 行わせることが必要であるものを効率的かつ
効果的に行わせることを目的として、この法律及び個別法の定めるところにより設立さ
れる法人をいう。》
この中の《効率的かつ効果的に行なわせることを目的として》に注目してください。通
則法によって高専を法人化するということは、すなわち高専教育を効率的かつ効果的に
行なうため、となってしまいます。わたしたちは、「教育」と「効率化」は並存し得な
いものであり、また「効果的教育」も教育の本質からはずれるものであると考えます。
とりわけ16歳から18歳までの後期中等教育段階の学生をも教育している高専をこの
ような環境に置くことは大きな問題であるといわざるを得ません。


問題点3 ⇒ 『法人化のメリットを最大限活用し、教職員の能力を十分に発揮させるた
め、「非公務員型」とすることが適当である』(中間報告9ページ)

  法人化のメリットとしてあげられているのは「諸規制の大幅な緩和と裁量の拡大」と
されていますが、これまで国立大学や国立高専に各種の規制の箍(たが)をはめ、裁量
権を制限してきたのはほかならぬ文部(科学)省ではなかったでしょうか。そして現在
では、法人化の法律がまだ制定されていないにもかかわらず、中期目標・中期計画を作
らせ、いずれはそれに基づいて業績評価を行い、その評価次第で予算を削減し(増額は
ほとんど考えられないでしょう。毎年1%の削減は既定の方針です。もし増やしたいの
であれば外部資金の導入以外にありません。)、さらに場合によっては廃校ということ
もありうる、というのが今回の独立行政法人化の本質です。いかに大きな規制をあらた
に作り出していることでしょう。
  一方、私たち教職員の側について考えてみますと、ある日突然、こちらの都合もまっ
たく考慮されずに公務員としての身分が剥奪されてしまうわけです。以前国鉄がJRに
替わった時、たくさんの人がJRに採用されず、一方的に雇用関係が打ち切られたた
め、現在でも裁判を続けている人たちもいることはご存知でしょう。個別法(独立行政
法人国立高等専門学校機構法)に雇用の承継条文が書かれない場合にはこのような事態
が発生するかもしれません。(中間報告には「法人への移行時に既に国立高等専門学校
に勤務している職員の処遇について、所要の法的措置を含め十分な配慮が必要であ
る。」との文言がありますが、いまだ法案の中味が明らかにされていないため、どうなる
のかはっきりしていません。)
  確かに、高専の教職員の中には自分の研究成果を商品化するため、企業を設立したり
する際に、公務員であるということがネックになってその活動が阻害されている人もい
るかもしれません。法人化すればそのようなことがなくなる、と文科省は強調していま
すが、いったい全国55国立高専で働く教職員の何パーセントの人が「非公務員化」さ
れてそのようなメリットを享受できるのでしょうか。ごくわずかのこのような人のため
に、大多数の高専教職員から公務員の身分が奪われるのはやはり問題だと言わざるを得
ません。
 
                                                                   以 上