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独行法反対首都圏ネットワーク

☆北東北3社連携企画 大学改革/模索する弘大  
 .『東奥日報』2003年2月20日〜2月23日付 
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『東奥日報』2003年2月20日〜2月23日付

北東北3社連携企画 大学改革/模索する弘大 

2003年2月20日

 (1)迫る国立大法人化/見えてこない将来像

 「国立大学という甘えがある」−。昨年十二月、学外の有識者による運営諮
問会議は弘大に厳しい評価を下した。大学改革の流れの中で、弘大は自己改革
を迫られている。

 一方で、一年後にも法人化されるため、国立大学の座に安住することは許さ
れない。「私立大は人事面での降格もある。大学の存続を懸けてやっている。
国立大は今までが甘すぎた」と医学部の教授は指摘する。

 国立大学法人化とは、文科省の一機関にすぎなかった国立大学に、独立した
法人格を与えること。文科省は大学の活性化を目的とし、研究にも競争原理を
導入。学長に強い裁量権を与え、民間的発想で自主的な運営を求め、〇四年度
の法制化を目指している。

「本音はリストラ」

 評価が低いと、国からの交付金が減らされることも予想される。理工学部の
教官は「既に研究よりも外部資金の獲得に力を入れている国立大学もある。積
極的に外部から資金を獲得できない教官は研究ができなくなる」と危機感を募
らせる。

 一方で、国の行政改革で掲げられた「十年間で国家公務員定数の25%削減」
の数合わせに利用されているとも言われ「一番の本音はリストラ」と反発する
教官もいる。

 しかし、導入は規定路線。反対しても仕方がないという意見が大半を占める。

 弘大職員組合委員長の宮永崇史理工学部助教授は「基本的には今でも反対。
教育・研究に競争原理はそぐわない。だが、反対しても一年後には始まる」と
推移を見守る姿勢だ。

 弘大は昨年六月から、四つの委員会で(1)組織業務(2)人事制度(3)
目標評価(4)財務会計制度−を検討している。

 「学部によって、授業料は変わるのか」「理系の授業料が高くなるのでは」
−学生からの疑問の声も相次ぐ。

重視すべきは何か

 しかし、国立大学法人法案はまだ文科省で作成中とあって、「検討していた
ものを、国の方針次第で、また見直す必要がある」(昆正博・弘大副学長)と、
手探りの状態で進めているのが現状だ。

 遠藤正彦学長は「県内唯一の国立大で五学部を持つ総合大学として、何を最
も重視して改革に取り組むべきなのか」と改革の方向性を模索するが、多くの
教官は「法人化後の将来像は、誰にも見えていない」と不安を抱えている。


2003年2月22日

(2)3大学の再編・統合(上)/県境越えて話し合い

 「弘前大はなくなるの?」−。県民にそんな不安が広がっている。二〇〇一
年六月の「遠山プラン」を受け、弘大は岩手大、秋田大と再編・統合の話し合
いをしている。

 「会議」「懇談会」「教育学部懇談会」「ワーキンググループ」と名前の違
う会合が月に何度も開かれた。その都度、終了後の記者会見で、三大学関係者
は「連携強化を確認」「結論は出なかった」と繰り返した。

 県民には「大学は今、何をやっているのか」、さっぱり分からない状態となっ
た。

 「北東北三大学、統合か」−。すぐにでも三大学の再編・統合が決まるよう
なマスコミの報道は関係者をいらだたせた。

 このため、副学長レベルの検討組織をつくるとき、その名称にこだわった。
「まず再編・統合ありき」と受け止められるのを避けるためだ。結局、より非
公式な印象が強い「懇談会」とし、〇二年二月に発足させた。同八月には、学
部ごとに話し合う「ワーキンググループ」を設けた。

「県内統合」ほとんど

 「教育学部懇談会」はこれとは別に、文部科学省懇談会の一県一教育学部の
原則を崩す提案を受け、三大学の学部独自で、〇一年十二月から始めたもの
で、〇二年八月に「ワーキンググループ」に移行した。

 「遠山プラン」以降、既に全国では、再編・統合が始まっている。〇二年十
月には図書館情報大と筑波大、山梨大と山梨医科大が統合。神戸大と神戸商船
大、東京商船大と東京水産大なども合意している。ほとんどが同じ県内の単科
大学同士か単科大学と総合大学だ。

 弘大はなぜ、移動の負担があり、同じ内容の学部・学科がしのぎを削らなけ
ればならない、岩手大、秋田大と話し合いをしているのか。

 元々、三大学には連携を強めようという下地があった。

 弘大の吉田豊前学長がイニシアチブを取り、三大学は二〇〇〇年八月、連携
推進会議を設置した。当初は「統合を前提としない」方針だったが、その後の
「遠山プラン」で、国立大学の再編・統合が掲げられたことで事態は急転する。

1年間に10回懇談

 〇一年八月の三学長懇談で「統合も選択肢の一つ」で合意。〇二年五月には、
再編・統合を協議することに、そろって積極姿勢を示した。

 「懇談会」は一年間に十回の話し合いを重ねた末、〇六年度まで結論を先延
ばしすることで一致した。国立大学法人化で、各大学が今後の理念や方針を示
す中期目標・中期計画の第一期(二〇〇四−〇九年度)中の再編・統合は難し
いと判断した。

 現在、策定中のこの中期目標・中期計画に、三大学は再編・統合について同
じ内容を盛り込む予定だ。弘大の神田健策副学長は「このような例は、私の知
る限り全国でもない」とその意義を強調する。

 だが、三大学には微妙な温度差がある。


2003年2月23日

(3)3大学の再編・統合(下)/生き残りかけ積極的

 「弘大が弘前から突然なくなることはない」。遠藤正彦学長らは繰り返し、
県民の理解を求めてきた。岩手大、秋田大との統合が実現したとしても「キャ
ンパスを一つにするのは、現実問題として難しい。今ある三つのキャンパスを
活用するのが現実的」との見解を神田健策副学長は示している。

距離がネックに

 しかし、三大学のキャンパスは遠く離れている。ある岩手大の教授は「弘前
まで高速バスで二時間余り。東京まで行くのと変わらない。(学長間で統合に
合意した)埼玉大と群馬大のようにはいかない」と、地理条件の厳しさを挙げ
る。

 三大学は、四月から単位互換制度を始めるなど、連携の動きが出てきている。

 とはいっても弘大の教官にとって岩手大、秋田大は決して身近な存在ではな
い。「学部長以上は会議などで話し合いもするが、一般の教官は交流会も一切
ない」と弘大人文学部の教官。理工学部の教官も「連携する前に、いきなり再
編・統合がきた」との見方をしている。このため三大学の調整役を務める神田
副学長は「それぞれの大学、学部で温度差がある」とし、慎重な姿勢を崩さな
い。

 遠藤学長は「再編・統合に、一番前向きなのは弘大だろう」とみている。
「力を合わせないと生き残っていけない」と、その必要性を強調している。弘
大は、今回の再編・統合はあくまでも「国立大学同士」と受け止め、岩手大、
秋田大以外の相手先は念頭にない。

 しかし、秋田大は秋田県が仲介役となり、県内十の高等教育機関との連携が
進んでいる。そのうち八大学・短大と二〇〇四年度から、単位互換の開始を目
指すことで合意した。県内の連携強化に目を向けており、三大学での再編・統
合に最も消極的だといわれている。

「このままでいい」

 秋田大の三浦亮学長は「1+1+1のメリットが3なら、三大学はこのまま
で、いいのではないか。現状ではメリットがデメリットを上回っていない」と、
これまでの協議を総括している。

 岩手大の平山健一学長は「将来的に統合は必至だと思うが、形ありきの統合
は時期尚早と考えている」とし、三大学には限らない、広い選択肢の可能性を
示唆している。

 岩手大は、岩手県にある公立の県立大、私立の岩手医大、富士大、盛岡大
で、〇〇年三月に「いわて五大学学長会議」を発足、〇二年度から単位互換制
度をスタートしている。

 副学長たちの「懇談会」は、再編・統合の結論を〇六年度まで先送りしたが、
「結論を出すのはあくまでも二十七日の(学長同士の)連携推進会議。懇談会
の報告を受け、学長三人が、どういう結論を出すか。まだ決まっていない問題
だ」と、遠藤学長は言う。