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独行法反対首都圏ネットワーク

☆模索する3大学 (1)教育学部の在り方
 .『岩手日報』2003年2月21日〜2月22日 
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『岩手日報』2003年2月21日〜2月22日

模索する3大学


(1)教育学部の在り方

 2003.2.21
 
特徴掲げ理想像描く
 
 国の大学構造改革方針(遠山プラン)が2001年6月に発表されたのを受
けて1年に及ぶ議論を重ねた岩手大、弘前大、秋田大の北東北国立3大学の再
編・統合問題を協議する懇談会は「当面、再編・統合を視野に連携強化を進め、
06年度までに結論を出す」との最終方針を固めた。地域を巻き込んで揺れ動
く3大学の姿や将来像、統合はあるのかなどを岩手日報社、東奥日報社(本社
青森市)、秋田魁新報社(同秋田市)の北東北3紙の連携企画で浮き彫りにす
る。(5回続き)

 3県の教員養成を一手に担う担当校で揺れた教育学部統合問題。岩手、弘前
両大の綱引きとなったが両者譲らず、一時棚上げとなった。当初、担当校争い
で劣勢とみられていた岩手大を強力にバックアップしたのが県内の教育関係者
を中心に展開した存続運動。岩手大教育学部の望月善次学部長が「県民の支援
は大きかった」と認める署名は約6万6000人に上った。

 運動の中心となった岩手の教育と岩手大学教育学部の関かかわりを考える会
は県内4カ所で開催したシンポジウムで出た意見をまとめ、今月中にも岩手大
に提言する。

 ▼担当校に固執

 学内では法人化に向けた教員養成学部問題の対応として▽組織の全学的な見
直しの中で教員養成の強化▽付属校、施設の付置−を掲げる。教育学部の特徴
である地域連携、付属校との共同研究、国際交流をさらに発展させ、近隣大学
や地域との連携システムを構築し、教員養成・研修のパワーアップを図ってい
く。

 一方、担当校に固執した弘前大教育学部。「3県の教員養成に責任を持ち、
今まで以上の教育支援ができる学部にする」と、佐藤三三(さんぞう)学部長
は3大学再編後の教育学部像を語る。

 同大は新しい教育学部の特徴として「教員養成学」の設置を掲げ、個性化を
図る。多様化、複雑化する新たな教育課題に対応できる教員を育成するため、
何が欠けているかを自己分析し、理想像を実現できるカリキュラム・組織その
ものを研究する。実現すれば全国初となる。

 ▼新たな改革へ

 岩手、弘前両大の綱引きを横目に秋田大が担当校を目指さなかったのは、1
998年の全学改組。「教育学部」を「教育文化学部」に改組し、教員養成課
程の定員240人を半分以下の100人に絞った。教員養成に関して合理化は
ある程度終わっている。

 昨春、ようやく教育文化学部の第1期生が卒業。新たな学部改革に向けて点
検・評価の真っ最中だ。3大学の教員養成機能を一手に引き受ける担当校とな
り大規模化するのは、既定路線に逆行する。

 10回におよぶ議論を終え、秋田大教育文化学部の寺井謙次学部長は「地域
に果たす教員養成機能の役割を考えると、大学間だけでは決められない問題だっ
た」、岩手大の望月学部長も「地域の事情を考えれば落ち着くところに落ち着
いた」と振り返った。

 弘前大の佐藤学部長は「文科省は方針を捨てていない。(3大学の話し合い
は)むしろ持久戦に入った。その間に、受け皿を強固にしたい」と、担当校を
見据えて体制強化の考えだ。

 
(2)ロースクール構想
 2003.2.22
 
移動の負担超え一丸
 

 県域を越えた三大学再編・統合の最大のネックと言われているのが地理的条
件の問題。岩手大のある教授は「弘前まで高速バスで約2時間半。移動時間だ
けを考えれば東京に行くのとほぼ同じ」と指摘する。

 そんな中、連携具体策として注目されるのが岩手大に連合方式で設置を目指
す法科大学院(ロースクール)構想。全国でも最下位レベルの法曹人口過疎解
消という北東北3県の思惑が一致した。

 拠点が岩手大でも弘前大にメリットはあるのか。「ロースクールで教えてい
る教官が、弘前大でも教えるということは、法学系を志望する高校生を引きつ
けることができる」と弘前大の藁科勝之人文学部長は強調する。

▼やりがい十分

 連合法科大学院担当予定の弘前大教官も「通勤などの負担は大きいが、大学
間競争に生き残るためにもやる価値がある。目的意識の高い学生を相手にやり
がいもある」という。

 昨年12月現在、全国で法科大学院設置を目指している大学は98。東北で
も東北大、東北学院大、秋田経済法科大が名乗りを上げている。

 秋田市の秋田経済法科大は1983年に法学部を設置。北東北では唯一、法
学部を持つ。稲田俊信学長の前任校は日本大法学部。司法試験に合格したゼミ
の教え子は約150人を超える。経法大に就任した2001年からは司法試験
突破を目指す学生らを対象に自ら「寺子屋」と称する特別講義をスタート。
「近く、きっと合格者が出るはずですよ」と、自信をのぞかせている。

 同大もロースクール設置は北東北の法曹人口拡大が所期の目的で、学生定員
50人のうち30人が社会人枠という点も岩手大の構想と重なる。自治体や企
業、自営業者らの入学を見込んでいる。昼夜開講制とし働きながら学べる環境
の整備を目指す。授業内容の特徴は行政法や税法、知的所有権法など実務科目
の充実だ。

▼04年度生微妙

 稲田学長は仙台高裁の支部が北東北3県で唯一、秋田市にあることから北東
北の司法・法曹の養成拠点として地の利があるとみている。同大はすでに弁護
士や裁判官、検察官経験者らを含め15人の教官確保にめどがついた。一方、
専任教員確保で難航している岩手大。

 平山健一学長は「司法試験に合格できるカリキュラムがつくれるか、専任教
員を確保できるかが課題」と04年度開設は微妙な情勢であることを打ち明け
る。