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独行法反対首都圏ネットワーク

☆<私大>「破たん予備軍」急増 処理の枠組み急務 
 .毎日新聞ニュース速報 03/02/11
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Subject: [he-forum 5091] <私大>「破たん予備軍」急増 処理の枠組み急務(毎日新聞03/02/11)
To: he-forum <he-forum@ml.asahi-net.or.jp>

<私大>「破たん予備軍」急増 処理の枠組み急務


毎日新聞ニュース速報

 私立立志舘大学(広島県坂町)が今年4月、創立3年で卒業生を一人も出さな
 いまま休校する。再開の見通しは立っておらず、4年制大学としては戦後初の
 廃校となる可能性も出ている。少子化の影響によって、02年度の入試で3割
 の私大が定員割れし、今後も経営難に陥る大学は増えるとみられ、私大の「倒
 産時代」が到来している。しかし、学生の受け入れ先の確保や負債整理など、
 破たん処理を定めた法令はなく、文部科学省と私大の団体は、必ずしも足並み
 がそろっていない。 【和田崇、佐柳理奈、横井信洋】

●戦後初の廃校も

 先月11日、立志舘大の進藤育明理事長と私立呉大(同県呉市)の坂田正二学
 長は立志舘大で記者会見して休校を正式発表した。進藤理事長は「学習権を優
 先した結果だが、深くおわびしたい」と頭を下げた。

 立志舘大の在学生174人と03年度入試の合格者17人は、呉大が受け入れ
 る。半数が編入学を希望する見通しだ。

 立志舘大の前身は、89年創立の広島女子商短大。同短大は80年近い伝統を
 持つ広島女子商業高校(現・立志舘広島高校)を経営する学校法人「広島女子
 商学園」が設立した。少子化時代の短大の生き残り策として、ブームに便乗し、
 00年に経営学部マネジメント学科のみの4年制単科大・広島安芸女子大に衣
 替えした。しかし、195人の定員に対し初年度の入学者は32人、翌年度も
 38人と低迷した。
 
 進藤理事長は「取引銀行はその時で廃校を勧めたが、旧経営陣は受け入れなか
 った」と内幕を明かす。旧経営陣は結局、加盟する日本私立大学協会(私大協)
 や文科省の協力を得て01年9月、福島県の専門学校経営者を新理事長に迎え
 た。
 しかし、高校を含む教職員のリストラ問題や新理事長の横領疑惑などで迷走し、
 予定していた融資を受けられなかった。昨年末には「資金繰りが不十分」と同
 省にも見放され、今春の一般入試による学生募集の停止を決めた。

 学生や保護者の受けとめ方はさまざまだ。1年生の男子学生(19)は「この
 前まで大丈夫と言っていたのに、裏切られた感じ」と怒りをぶつける。3年生
 の女子学生(21)は「学生が少なく、いつかはこうなると思っていた」と話
 す。一方、「ごたごたはあったが、子供たちが大学に残れることは感謝したい」
 という母親(51)もいる。

●難しい自力再生

 私大の破たん処理には(1)学生募集を停止し、在校生を卒業させた後で学校
 法人を解散(2)学校法人同士の合併(3)民事再生法の適用――などが想定
 されるが、定まった枠組みはない。

 広島安芸女子大から立志舘大への移行は経営者の交代で、事実上の破たんを表
 面化させない手法だった。

 文科省は昨年3月、同省と日本私立学校振興・共済事業団(私学振興事業団)、
 私学団体の3者で「私立大学経営支援連絡協議会」を作った。私立大・短大の
 破たんに備え、学校法人の経営基盤の強化や支援体制を検討し、実際に破たん
 した場合の連絡調整に当たる。しかし、設立から約1年の間に2回しか開かれ
 ず、立志舘大が休校を決める際にも機能しなかった。

 同省私学行政課は「協議会は破たんを視野にそれぞれが何をできるかを話し合
 う場だが、まだ意見交換にとどまっている。立志舘の場合は課内の連絡が不十
 分だった。早めに募集停止を決断すれば、現行法の範囲で対応できる」と釈明
 する。

 しかし、経営難に陥った学校法人が冷静に判断できるとは限らない。立志舘大
 は先行きが不透明にもかかわらず、昨年11月までに推薦入試などで17人を
 合格させていた。

 「日本私立大学連盟」は昨年3月、独自に経営破たんを想定した危機管理マニ
 ュアルを公表した。同連盟は「本来は設置認可を出した文科省の責任で対処す
 べきだが、対応が遅れているので独自に作成した」と話す。

●02年春、3割が定員割れ

 私学振興事業団によると、定員割れの私大は98年春まで十数〜三十数校の間
 で推移していたが、少子化に伴う18歳人口の減少で、99年春に89校と急
 増。その後も00年春131校、01年春149校、02年春143校と全体
 の約3割が定員割れの状況にある。学生数が定員の5割に満たない大学も13
 校(02年春)に上る。
 
 私大の収入は、授業料や受験料など学生からの納付金が75%。大幅な定員割
 れは経営を直撃する。収入の15%を占める国の私学助成は、学生数が定員の
 50%に満たないと打ち切られる。立志舘のような文系学部のみの新設大学は、
 最初の卒業生を出す年度までは交付されない。

 定員割れの大学は受験生の人気が落ち、翌年はさらに志願者が減る悪循環に陥
 りやすい。不人気学部の学生募集をやめたり、私学事業団からの借入金の返済
 が滞る大学もある。短大では00〜02年度までに9校が学生の募集停止によ
 る廃校を選択した。4年制大学でも「破たん予備軍」は確実に増えている。

●国などが方向性を

 私大経営にも詳しい東北公益文科大の小松隆二学長(公益学)の話 多くの私
 大は学生納付金に依存している。少子化で生き残りが厳しくなるのは予想され
 ていた。大学が廃校する場合、学生の受け入れ先の確保が最大の課題で、近隣
 に同等の教育をしている大学があるとは限らない。大学の個別の対応には限界
 がある。文科省や私学団体が方向性を示すのが望ましい。

      ◆立志舘大休校までの経過◆

1925  広島市に広島女子商業学校(戦後の学制改革で広島女子商業高校に
改称)として創立

89・4 広島県坂町に移転、広島女子商短大が開学

00・4 短大を4年制に移行、広島安芸女子大として開学。新入生は32人

01・4 大学新入生38人。2年連続の大幅な定員割れで資金繰りが厳しくな

01・8 事実上の経営破たん。日本私立大学協会の仲介で福島県の専門学校経
営者が再建に乗り出す

02・4 立志舘大に改称し共学化、新入生は107人

02・9 専門学校経営者が経営から撤退

02・12 理事会で学生募集停止を決定。呉大が学生の受け入れを了承。

03・1 学生の募集停止と休校を発表


[2003-02-11-23:53]