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独行法反対首都圏ネットワーク

☆独立行政法人通則法特例法としての国立大学法人法案
   ―独立行政法人通則法と国立大学法人法案の対照表について― 
 . 2002.2.2  独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局
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     独立行政法人通則法特例法としての国立大学法人法案

   ―独立行政法人通則法と国立大学法人法案の対照表について―


          2003年2月9日  独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局


 国立大学法人法案(以下、法人法案)の「骨子素案」(「概要」02.12.25版に対応)と独立行政法人通則法(以下、通則法)を対照させた別表によって、法人法が通則法の骨組みをベースにするものであることが一目瞭然となった。
 法人法案が準用する通則法の規定は、39カ条に達する。また、別表は、準用されない通則法のうち、「個別法関連条項」や「特定独法条項」を除けば、通則法の規定の空白部分はそう多くないことを示している。そして、この空白を法人法案が埋めるという構図になっているといえよう。
 まず、通則法の側から法人法案を見てみるとしよう。通則法の全規定が、「準用」、「個別法関連条項」、「特定独法条項」および「法人法案」の規定によって満たされていることがわかる。言い換えれば、独立行政法人通則法の体系は、大学法人法案によって完全に満たされているのである。法人法案は、通則法の予定する法体系に完全に合致しており、これをさらに言い換えれば、明示的な規定は法案にないが、実質的には、国立大学法人が独立行政法人の一種であるということになる。国立大学法人法案を通則法の特例法として構成してもよいような構造である。
 通則法から見た場合、通則法の一般的な規定と異なる点(カッコ内は法人法案)は、通則法第3条(教育研究の特性への配慮: 法人法案第3条)、通則法第12条(大学評価機構の評価の尊重: 法人法案第9条)、通則法第20条(役員の任命における大学法人の申出: 法人法案第12条、学外役員の任命: 法人法案第14条)、通則法第23条(役員解任における大学法人の申出: 法人法案第17条)、通則法第29条(中期目標に関する大学法人の意見: 法人法案第32条)などにとどまる。通則法の側からすれば、これらの点を除けば、通則法の仕組みが貫徹するということを意味している。つまり、学長の任免、中期目標の設定、評価などについて大学の特性に一定の配慮を払うが、全体としての仕組みは通則法のままであるということができる。特に、総務省の評価委員会(「審議会」)の評価(通則法第32条)、中期目標期間終了時の検討(業務の存続の可否を含む、通則法第35条)が「準用」されていることに留意しなければならない。
 逆に、法人法案の側から見てみよう。法人法案の条項数にほぼ匹敵する通則法の規定が準用されている。法人法案の特例法的な性格がこうした量的な面にも示されている。法人法案は、通則法の準用を抜きにしてはまとまりのある法体系としては成り立たないものになっているのである。
 しかし、法人法案には通則法の規定に対応しない規定、いわばプラスアルファの規定がある。法人法案第18、第19条の見なし公務員規定、経営協議会や評議会などに関する規定(第20〜24条、第28〜31条)、財務会計に関する規定(第34〜38条)があるが、どれも、通則法の枠を出るものではないということに注意することが必要である。独立行政法人は通則法が設定する枠組みの中で設置されるのであり、その枠組みの中にある限り、独立行政法人の内部組織がどのように構成されるかという点についての自由度は、もともと通則法が許容し、予定しているものであるからである。
 全体としていえば、国立大学法人法案に本質的な独自性を見出すべきではないということができる。法人法案に見出される特殊性は通則法の枠組みを否定するものではなく、通則法が予定する程度の特殊な扱いにすぎないというべきであろう。これによって大学の「自主性」が拡大するというような見方は根本的に誤っている。

[注]上記の分析・考察は、首都圏ネットワークが公表した国立大学法人法案(「骨子素案」(「概要」02.12.25版に対応)に基づいている。「概要」03年1月版に対応する法案においても基本構造は変わらないと思われるが、最新版に基づく正確な分析・考察が必要である。文科省ならびに国大協執行部は、2月10日開催の全国学長会議に最新の法案を提出し、国立大学内外の検討に付すべきである。これは、民主主義の最低限のルールであることを重ねて指摘しておく。