国立大学法人法案要綱

 

第一 総則

一 通則

1 目的

この法律は、大学の教育研究に対する国民の要請にこたえるとともに、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図るため、国立大学を設置して教育研究を行う国立大学法人の組織及び運営並びに大学共同利用機関を設置して大学の共同利用に供する大学共同利用機関法人の組織及び運営について定めることを目的とすること、(第一条関係)

2 定義

(一) この法律において「国立大学法人」とは、国立大学を設置することを目的として、この法律の定めるところにより設立される法人をいうものとすること。(第二条第一項関係)

(二) この法律において「大学共同利用機関法人」とは、大学共同利用機関を設置することを目的として、この法律の定めるところにより設立される法人をいうものとすること。(第二条第三項関係)

(三) 「国立大学」及び「大学共同利用機関」の定義について定めること。(第二条第二項及び第四項関係)

(四) その他この法律における用語の定義について定めること。

3 教育研究の特性への配慮

国は、この法律の運用に当たっては、国立大学及び大学共同利用機関における教育研究の特性に常に配慮しなければならないものとすること。(第三条関係)

4 国立大学法人の名称等

国立大学法人の名称及びその主たる事務所の所在地並びに各国立大学法人が設置する国立大学について定めること。(第四条及び別表第一関係)

5 大学共同利用機関法人の名称等

大学共同利用機関法人の名称及びその主たる事務所の所在地並びに各大学共同利用機関法人が設置する大学共同利用機関について定めること。(第五条及び別表第二関係)

6 法人格

国立大学法人及び大学共同利用機関法人(以下「国立大学法人等」という。)は、法人とすること。(第六条関係)

7 資本金(第七条関係)

(一) 各国立大学法人等の資本金は、第七の五1により政府から出資があったものとされた金額とするほか、政府は、予算で定める金額の範囲内において又は土地等を出資の目的として、国立大学法人等に追加して出資することができるものとすること。

(二) その他資本金について、所要の規定を設けること。

8 名称の使用制限

国立大学法人又は大学共同利用機関法人でない者は、その名称中に、それぞれ国立大学法人又は大学共同利用機関法人という文字を用いてはならないものとすること。(第八条関係)

二 国立大学法人評価委員会(第九条関係)

1 文部科学省に、国立大学法人等に関する事務を処理させるため、国立大学法人評価委員会(以下「評価委員会」という。)を置くものとすること。

2 評価委員会は、国立大学法人等の業務の実績に関する評価等の事務をつかさどるものとすること。

第二 組織及び業務

一 国立大学法人

1 役員及び職員

(一) 役員

各国立大学法人に、役員として、学長一人、監事二人を置くとともに、それぞれ定数以内の理事を置くものとすること。(第十条及び別表第一関係)

(二) 役員の職務及び権限

(1) 学長は、学校教育法第五十八条第三項に規定する職務を行うとともに、国立大学法人を代表し、その業務を総理するものとすること。(第十一条第一項関係)

(2) 学長は、中期計画や予算の作成等について決定をしようとするときは、学長及び理事で構成する会議(役員会)の議を経なければならないものとすること。(第十一条第二項関係)

(3) その他理事及び監事の職務及び権限について定めること。

(三) 役員の任命

(1) 学長の任命は、国立大学法人の申出に基づいて、文部科学大臣が行うものとすること。(第十二条第一項関係)

(2) (1)の申出は、経営協議会から選出された委員及び教育研究評議会から選出された委員各同数をもって構成する会議(以下「学長選考会議」という。)の選考により行うものとすること。(第十二条第二項関係)

(3) (2)のほか、学長選考会議の定めるところにより、学長又は理事を学長選考会議の委員に加えることができるものとし、その数は、学長選考会議の委員の総数の三分の一を超えてはならないこととすること。(第十二条第三項関係)

(4) 学長選考会議に議長を置き、委員の互選によってこれを定めるものとするほか、学長選考会議の議事に関し必要な規定を設けること。(第十二条第四項から第六項関係)

(5) (2)の学長の選考は、人格が高潔で、学識が優れ、かつ、大学における教育研究活動を適切かつ効果的に運営することができる能力を有する者のうちから行わなければならないものとすること。(第十二条第七項関係)

(6) 監事は、文部科学大臣が任命するものとすること。(第十二条第八項関係)

(四) 理事は、(三)(5)に規定する者のうちから学長が任命するものとし、その他理事の任命について所要の規定を設けること。(第十三条関係)

(五) 学長又は文部科学大臣は、それぞれ理事又は監事を任命するに当たっては、その任命の際現に当該国立大学法人の役員又は職員でない者が含まれるようにしなければならないものとすること。(第十四条関係)

(六) 役員の任期

(1) 学長の任期は、二年以上六年を超えない範囲内において、学長選考会議の議を経て、各国立大学法人の規則で定めるものとすること。(第十五条第一項関係)

(2) 理事の任期は、六年を超えない範囲内で、学長が定めるものとし、ただし、理事の任期の末日は、当該理事を任命する学長の任期の末日以前でなければならないものとすること。(第十五条第二項関係)

(3) 監事の任期は、二年とすること。(第十五条第三項関係)

(4) 役員は、再任されることができるものとすること。(第十五条第四項関係)

(七) 役員の欠格条項

役員の欠格条項について所要の規定を設けること。(第十六条関係)

(八) 役員の解任

(1) 文部科学大臣又は学長は、それぞれその任命に係る役員が次のいずれかに該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができるものとすること。(第十七条第二項関係)

(@) 心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認められるとき。

(A) 職務上の義務違反があるとき。

(2) (1)に規定するもののほか、文部科学大臣又は学長は、それぞれその任命に係る役員(監事を除く。)の職務の執行が適当でないため当該国立大学法人の業務の実績が悪化した場合であって、その役員に引き続き当該職務を行わせることが適当でないと認めるときは、その役員を解任することができるものとすること。(第十七条第三項関係)

(3) (1)、(2)の規定により文部科学大臣が行う学長の解任は、当該国立大学法人の学長選考会議の申出により行うものとすること。(第十七条第四項関係)

(4) その他役員の解任について所要の規定を設けること。

(九) 役員及び職員の秘密保持義務

国立大学法人の役員及び職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならないものとし、その職を退いた後も、同様とすること。(第十八条関係)

(十) 役員及び役員の地位

国立大学法人の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなすものとすること。(第十九条関係)

2 経営協議会等

(一) 経営協議会(第二十条関係)

(1) 国立大学法人に、国立大学法人の経営に関する重要事項を審議する機関として、経営協議会を置くものとすること。

(2) 経営協議会は、次に掲げる委員で組織するものとすること。

(@) 学長

(A) 学長が指名する理事及び職員

(B) 当該国立大学法人の役員又は職員以外の者で大学に関し広くかつ高い識見を有するもののうちから、教育研究評議会の意見を聴いて学長が任命するもの

(3) (2)(B)の委員の数は、委員の総数の二分の一以上でなければならないものとすること。

(4) 予算の作成及び執行並びに決算に関する事項その他の経営協議会の審議事項について定めること。

(5) 経営協議会に議長を置き、学長をもって充てるとともに、議長は、経営協議会を主宰するものとすること。

(二) 教育研究評議会(第二十一条関係)

(1) 国立大学法人に、国立大学の教育研究に関する重要事項を審議する機関として、教育研究評議会を置くものとすること。

(2) 教育研究評議会は、次に掲げる評議員で組織するものとすること。

(@) 学長

(A) 学長が指名する理事

(B) 学部、研究科、大学附置の研究所その他の教育研究上の重要な組織の長のうち、教育研究評議会が定める者

(C) その他教育研究評議会が定めるところにより学長が指名する職員

(3) 教育課程の編成に関する方針に係る事項その他の教育研究評議会の審議事項について定めること。

(4) 教育研究評議会に議長を置き、学長をもって充てるとともに、議長は、教育研究評議会を主宰するものとすること。

3 業務等

(一) 業務の範囲等

(1) 国立大学法人は、次の業務を行うものとすること。(第二十二条第一項関係)

(@) 国立大学を設置し、これを運営すること。

(A) 学生に対し、修学、進路選択及び心身の健康等に関する相談その他の援助を行うこと。

(B) 当該国立大学法人以外の者から委託を受け、又はこれと共同して行う研究の実施その他の当該国立大学法人以外の者と連携して教育研究活動を行うこと。

(C) 公開講座の開設その他の学生以外の者に対する学習の機会の提供を行うこと。

(D) 当該国立大学における研究の成果を普及し、及びその活用を促進すること。

(E) 当該国立大学における技術に関する研究の成果の活用を促進する事業であって政令で定めるものを実施する者に出資すること。

(F) (@)から(E)までの業務に附帯する業務を行うこと。

(2) (1)(E)の出資について所要の規定を設けること。

(3) 国立大学及びその附属学校の授業料その他の費用に関し必要な事項は、文部科学省令で定めるものとすること。(第二十二条第四項関係)

(二) 大学附属の学校

国立大学に、文部科学省令で定めるところにより、附属の学校を設置することができるものとすること。(第二十三条関係)

二 大学共同利用機関法人

1 役員及び職員

(一) 役員

各大学共同利用機関法人に、役員として、機構長一人、監事二人を置くとともに、それぞれ定数以内の理事を置くものとすること。(第二十四条及び別表第二関係)

(二) 役員の職務及び権限

(1) 機構長は、大学共同利用機関法人を代表し、その業務を総理するものとすること。(第二十五条第一項関係)

(2) 機構長は、中期計画や予算の作成等について決定をしようとするときは、機構長及び理事で構成する会議(役員会)の議を経なければならないものとすること。(第二十五条第二項)

(3) その他理事及び監事の職務及び権限について定めること。

(三) 国立大学法人の役員及び職員に関する規定の準用

大学共同利用機関法人の役員及び職員について、役員の任免その他の国立大学法人の役職及び職員に関する規定(一1(三)から(十)まで)を準用すること。(第二十六条関係)

2 経営協議会等

(一) 経営協議会(第二十七条関係)

(1) 大学共同利用機関法人に、大学共同利用機関法人の経営に関する重要事項を審議する機関として、経営協議会を置くものとすること。

(2) 経営協議会は、次に掲げる委員で組織するものとすること。

(@) 機構長

(A) 機構長が指名する理事及び職員

(B) 当該大学共同利用機関法人の役員又は職員以外の者で大学共同利用機関法人に関し広くかつ高い識見を有するもののうちから、教育研究評議会の意見を聴いて機構長が任命するもの

(3) (2)(B)の委員の数は、委員の総数の二分の一以上でなければならないものとすること。

(4) 予算の作成及び執行並びに決算に関する事項その他の経営協議会の審議事項について定めること。

(5) 経営協議会に議長を置き、機構長をもって充てるとともに、議長は、経営協議会を主宰するものとすること。

(二) 教育研究評議会(第二十八条関係)

(1) 大学共同利用機関法人に、大学共同利用機関法人の教育研究に関する重要事項を審議する機関として、教育研究評議会を置くものとすること。

(2) 教育研究評議会は、次に掲げる評議員で組織するものとすること。

(@) 機構長

(A) 機構長が指名する理事

(B) 大学共同利用機関の長

(C) その他教育研究評議会が定めるところにより機構長が指名する職員

(D) 当該大学共同利用機関法人の役員及び職員以外の者で当該大学共同利用機関の行う研究と同一の研究に従事するもの((一)(2)(B)に掲げる者を除く。)のうちから教育研究評議会が定めるところにより機構長が任命するもの

(3) 共同研究計画の募集及び選定に関する方針に係る事項その他の教育研究評議会の審議事項について定めること。

(4) 教育研究評議会に議長を置き、機構長をもって充てるとともに、議長は、教育研究評議会を主宰するものとすること。

3 業務等

(一) 業務の範囲等

(1) 大学共同利用機関法人は、それぞれの研究分野に関し、次の業務を行うものとすること。(第二十九条第一項及び別表第二関係)

(@) 大学共同利用機関を設置し、これを運営すること。

(A) 大学共同利用機関の施設及び設備等を大学の教員その他の者で当該大学共同利用機関の行う研究と同一の研究に従事するものの利用に供すること。

(B) 大学の要請に応じ、大学院における教育その他その大学における教育に協力すること。

(C) 当該大学共同利用機関における研究の成果を普及し、及びその活用を促進すること。

(D) 当該大学共同利用機関における技術に関する研究の成果の活用を促進する事業その他の政令で定める事業を実施する者に出資すること。

(E) (@)から(D)までの業務に附帯する業務を行うこと。

(2) (1)(D)の出資について所要の規定を設けること。

第三 中期目標等

一 中期目標(第三十条関係)

1 文部科学大臣は、六年間において国立大学法人等が達成すべき業務運営に関する目標を中期目標として定め、これを当該国立大学法人等に示すとともに、公表しなければならないものとすること。これを変更したときも、同様とすること。

2 中期目標においては、次に掲げる事項について定めるものとすること。

(一) 教育研究の質の向上に関する事項

(二) 業務運営の改善及び効率化に関する事項

(三) 財務内容の改善に関する事項

(四) 教育及び研究並びに組織及び運営の状況について自ら行う点検及び評価並びに当該状況に係る情報の提供に関する事項

(五) その他業務運営に関する重要事項

3 文部科学大臣は、中期目標を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、国立大学法人等の意見を聴き、当該意見に配慮するとともに、評価委員会の意見を聴かなければならないものとすること。

二 中期計画(第三十一条関係)

1 国立大学法人等は、一1の規定により中期目標を示されたときは、当該中期目標に基づき、文部科学省令で定めるところにより、当該中期目標を達成するための計画を中期計画として作成し、文部科学大臣の認可を受けなければならないものとすること。これを変更しようとするときも、同様とすること。

2 中期計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

(一) 教育研究の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置

(二) 業務運営の改善及び効率化に関する目標を達成するためとるべき措置

(三) 予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画

(四) 短期借入金の限度額

(五) 重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、その計画

(六) 剰余金の使途

(七) その他文部科学省令で定める業務運営に関する事項

3 文部科学大臣は、1の認可をしようとするときは、あらかじめ、評価委員会の意見を聴かなければならないものとすること。

第四 財務及び会計

一 積立金の処分

国立大学法人等の積立金の処分について所要の規定を設けること。(第三十二条関係)

二 長期借入金及び債券

1 国立大学法人等は、施設又は設備の設置等に必要な費用に充てるため、文部科学大臣の認可を受けて、長期借入金をし、又は当該国立大学法人等の名称を冠する債券(以下「債券」という。)を発行することができるものとすること。(第三十三条第一項及び第二項関係)

2 その他長期借入金、債券について、所要の規定を設けること。

3 長期借入金をし、又は債券を発行する国立大学法人等の償還計画について、所要の規定を設けること。(第三十四条関係)

第五 雑則

一 独立行政法人通則法の規定の準用

国立大学法人等について、評価に関する規定、財務及び会計に関する規定その他独立行政法人通則法の規定を準用すること。(第三十五条関係)

二 財務大臣との協議

文部科学大臣が認可を行おうとする場合に、財務大臣に協議すべきことを定めること。(第三十七条関係)

三 他の法令の準用

政令で定める法令については、国立大学法人等を国又は独立行政法人とみなして、これらの法令を準用すること。(第三十七条関係)

第六 罰則

所要の罰則規定を設けること。(第三十八条から第四十一条関係)

第七 附則

一 施行期日

この法律は、平成十五年十月一日から施行するものとすること。(附則第一条関係)

二 学長となるべき者の指名等に関する特例

1 文部科学大臣は、この法律の施行の日において、この法律の施行の際現に現国立大学の学長である者を、国立大学法人の学長となるべき者として指名するものとすること。(附則第二条第一項関係)

2 1の規定により指名され、国立大学法人等の成立の時に学長に任命されたものとされる学長の任期は、現国立大学の学長としての任期の残任期間と同一の期間とすること。(附則第二条第四項関係)

3 その他学長となるべき者の指名等に関する特例について所要の規定を設けること。

三 国立大学法人等の成立

国立大学法人及び大学共同利用機関法人は、国立大学法人等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第二条の規定の施行の時に成立するものとすること。(附則第三条関係)

四 職員の引継ぎ等

国立大学法人等の成立の際現に現国立大学等の職員である者は、別に辞令を発せられない限り、国立大学法人等の成立の日において、それぞれ国立大学法人等の職員となるものとし、職員の引き継ぎ等について所要の経過措置を設けること。(附則第四条から第八条及び附則別表第一関係)

五 権利義務の承継等

1 国立大学法人等の成立の際現に国が有する権利及び義務のうち、各国立大学法人等の業務に関するものは、一定のものを除き、当該国立大学法人等が承継するものとし、承継される一定の価額の合計額から承継される一定の負債の価額(国立大学法人にあっては、当該国立大学法人が独立行政法人国立大学財務・経営センターに対して負担する債務の額をこれに加えた額)を差し引いた額に相当する金額は、政府から当該国立大学法人等に対し出資されたものとすること。(附則第九条第一項および第二項関係)

2 その他権利及び義務の承継等について所要の規定を設けること。

六 現在の国立大学等に関する経過措置

1 現国立大学及び国立久里浜養護学校等は、国立大学法人の成立の時において、それぞれ国立大学法人が設置する国立大学又は国立大学法人筑波大学が設置する筑波大学の附属の養護学校となるものとすること。(附則第十五条関係)

2 国立大学法人の成立の際現に現併設国立短期大学に在学する学生が存する場合には、国立大学法人は、当該学生が当該現併設国立短期大学を卒業するため必要であった教育課程の履修を行うことができるようにするため、学生が在学しなくなる日までの間、国立短期大学を設置するものとすること。(附則第十六条及び附則別表第二関係)

3 当該大学に在学する者が存在しなくなる日までの間存続するものとされた図書館情報大学ほか二十大学について、国立大学法人の成立の際現に当該大学に在学する者は、当該大学を卒業するため必要であった教育課程の履修等を、それぞれに定める国立大学において行うものとし、当該国立大学は、そのため必要な教育を行うものとすること。(附則第十七条及び附則別表第三関係)

七 その他所要の経過措置を設けること。