国立大学法人法案をめぐる現情勢と課題

                             2003年1月20日

               独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局


 独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局は、1月16日に「国立大学法人法案の概要(骨子素案)」(02.12.25版)を、17日には「国立学校設置法に規定する国立学校の今後の組織形態について」を公開した。それ以降、この二つの資料をめぐって全国から多くの情報が寄せられている。

T.現情勢の特徴

 

1.「国立大学法人法案の概要(骨子素案)」(以下「概要」)(02.12.25 版)に対応する成文化された法案が存在することは確実であるが、依然として公開されていない。

 

2.「概要」と「今後の組織形態について」の二つの文書から、我々が指摘してきた次のことが明らかとなっている。すなわち、文科省は、「国立大学法人法案」という一つの法律によって、「北海道大学ほか88国立大学法人」を作り、それが「北海道大学ほか88国立大学」を設置するという「間接方式」を採用するつもりである。大学共同利用機関も同様に「間接方式」とされている。

また、文科省は個別法を作らず、「別表」によってすべてを規定するつもりである。

 これに加え、高専は「独立行政法人通則法」の直接支配下に置かれる「独立行政法人」とすることが目論まれている。

 

3.「概要」の性格がより詳細に判明した。

(1)この「概要」は文科省と国大協トップ層(あるいはその委託を受けた少数のメンバー)の密室協議の場で使われている文書である。

 (2)「国大協トップ層」の実態はなお把握されていないが、総会で選出された理事会、あるいは法人化特別委員会のような国大協の正規の機関でないことは確かである。

 (3)このため作成主体も明記されず、日付のないバージョンも存在する。

またバージョンによって配布範囲も異なっている。我々は、16日の声明で「少なくない大学の執行部に伝わっている」と判断したが、それは同日までの情報発信先に偏りがあったこと、またバージョンによって配布範囲が異なっていることが不明であったからである。なお、(02.12.25)版はごく狭い範囲にのみ配布されている。

 (4)初期のバージョンでは『最終報告』どおり「運営協議会」という語が用いられていたが、途中から「経営協議会」に変わるなど、密室協議の過程で『最終報告』からの離脱がより顕著になっているようである。

 

 4.文科省は教育基本法の改悪、あるいは別法の制定を企図している。これに伴い、国立大学法人法案の成立を、教育基本法に先立って、つまり通常国会前半までに強行する可能性がある。

 

U.我々のなすべきこと

 

1.「概要」は密室協議文書であること、にもかかわらず、これに対応する国立大学法人法案がすでに成文化されていることは、情報公開の原則、文部科学行政の民主主義的な遂行、国大協の運営の民主主義的原則に明白に反する。

従って、文科省と国大協トップ層に対して、遅くとも1月31日の法人化特別委員会までに、昨年11月の国大協総会以降に行われた国立大学法人法案の議論・協議に関する経過と資料、成文化された法案を可及的速やかに公開させる運動を展開することが必要である。

 

2.「概要」(02.12.25版)に対応する法案が成文化されている以上、この「概要」に対する全面的分析をただちに行う必要がある。我々の16日の声明は急遽作成したこともあり、分析が不十分である。我々も分析を継続するが、全国の仲間におかれても、設置主体、法的構造(私立学校法を含めた教育関連諸法との比較)、具体的大学運営、学長選考方式、学外者の位置付けをはじめ、様々な視点から厳密な分析を進め、その結果を直ちに公開していただきたい。

それらを踏まえつつ、「概要」に基づく国立大学法人法案の2月末閣議決定を阻止する全国的な共同闘争が直ちに組織されるべきである。

 

3.本日から行われる通常国会では、大学から初等中等教育までの教育の全面的な法的再編が企図されている。国立大学法人法案反対と教育基本法改悪・廃止反対闘争を結合する国民レベルの巨大な闘争が準備されねばならない。