トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

☆法科大学院―教える力が問われる
  [he-forum 4925]朝日新聞03/01/05.
--------------------------------------------------------------

朝日新聞ニュース速報

法科大学院―教える力が問われる

 20年後の日本の司法はどんな姿になるか。大きな変化の一つが、法律家の資
 格を持つ人が倍増することだろう。
 その新しい時代を担う法律家を育てるかぎを握るのが、法科大学院(ロースク
 ール)構想だ。04年4月の開校をめざして、法律が昨年の国会で成立した。
 これまでの大学の法学部とは違う密度の濃い授業をして、専門的な法知識や議
 論する力を身につけさせる。創造的な思考力や社会を見る目も養わせる。
 国際的な競争にも耐えられる法律の専門家を育てる。同時に、暮らしの中で起
 きるトラブルについて丁寧に相談に応じられるようにし、身近で利用しやすい
 司法に変えることも狙いの一つである。
 影響は司法の世界にとどまらない。法科大学院の出身者が企業や官庁、非政府
 組織に大量に出ていくようになれば、それらの分野の変革にも役立つだろう。
 一方で、幅広い経験を重ねた法律家がふえれば、司法の活性化にもつながる。
 もちろん、こうした夢が実現するのは、構想がうまくいった場合の話である。
 現実には、本当に成功するのだろうか、と半信半疑の人が多いのではないか。
 特に問題なのは、授業が根本から変わるのかということだ。これまでの授業は
 魅力に欠けていたこともあり、司法試験の準備で予備校に学生を奪われていた。
 どんなカリキュラムや教材を使い、どのように教えるのか。共同研究が始まっ
 てはいるが、最後は教える側の一人ひとりの力量が試される。教師の側に、研
 究生活を犠牲にしてでも創造的な教育を始めるという情熱がなければ、学生を
 ひきつけ、考える力をつける授業はできまい。
 気がかりなのは、司法試験に一人でも多く受かればいいという発想がすでに見
 えることだ。司法試験合格の実績が上がれば学生を集めやすいし、経営も安定
 する。予備校からノウハウを学ぶ動きもある。
 これでは、自ら考える能力を備えた法律家が育ちにくい、という現状を変えら
 れまい。法科大学院の授業が受験技術を磨く場となれば、改革の意味はなくな
 る。
 法科大学院を出なくても法律家になれる予備試験も心配だ。この抜け道が広が
 れば、教育の過程を大切にするという理念そのものが骨抜きになってしまう。
 半面、奨学金や教育ローンの充実は必要だ。それが不十分だと、金持ちが有利
 になりかねない。外部による第三者評価の仕組みをきちんと機能させることも
 大切だ。質の悪い大学院は淘汰(とうた)すべきである。
 法科大学院は法律家を育てる場だ。一方で、法律家以外の人材をも育ててきた
 法学部を今後どう位置づけて再生させていくのか。その検討も始める必要があ
 る。
 大きな夢に向かって、法科大学院は船出した。航海が成功するか否か。かじを
 取る大学や法曹界の責任はきわめて重い。
[2003-01-05-00:19]