独行法反対首都圏ネットワーク |
本日、2002年12月26日、「国立大学の独立行政法人化を憂慮し、名古屋大学のあり方
を考える有志の会」は、「共同声明:「国立大学法人法案」の行方を憂慮し、名古屋 大学での法人化準備作業の総点検と方向転換を呼びかけます」を確定し,呼びかけ人2
0数名(20021226現在)を得て,教職員,大学院生,学生による賛同署名,共同声明全学
シンポジウムおよび公開討論会(予定)に向けて活動を開始することを確認しました.
新年早々呼びかけ人を中心に,学内諸団体の協力を得て、運動を盛り上げていくこと を決意しているところです.
全国の皆さんとともに,がんばっていきたいと思います.
参考までに,少し長くなりますが,共同声明をtxtで以下に添付いたします.
(PDF版ファイル添付ができないようなので)
名古屋大学職員組合 書記局 気付
「国立大学の独立行政法人化を憂慮し、名古屋大学のあり方を考える有志の会」
事務局 玉置 昌義
名古屋大学工学部2号館北館3階332号室、
TEL: 内線専用(7519)、内/外線(052-789-4913)
FAX: 052-789-4913
mail-address:guest@nuufs.org
*************共 同 声 明****************
共 同 声 明 : 「国立大学法人法案」の行方を憂慮し、
名古屋大学での法人化準備作業の総点検と方向転換を呼びかけます
2002年12月26日
国立大学の独立行政法人化を憂慮し、名古屋大学のあり方を考える有志の会 呼びか け人代表
池内 了(理)・植田健男(教)・進藤 兵(法)・椿淳一郎(工)・山内 章(農)
<『最終報告』よりさらに後退を重ねる「国立大学法人法案」>
全国の国公私立の大学人から憂慮と反対の声が拡がり、市民のなかからも懸念や不
安が拡がっているなか、政府・文部科学省は、国立大学を独立行政法人化する「国立 大学法人法案」(仮称)の策定作業を着々と進めています。
振りかえれば、1999年9月、それまで国立大学の法人化自体に反対していたはずの
文部省(当時)が、その方針をいとも簡単に転換し、有馬朗人元文相は「国立大学の独 立行政法人化の検討の方向」を提示し、国立大学を独法化の枠組みに当てはめる政策
へと転換しました。2001年6月、文部科学省は「大学(国立大学)の構造改革の方針」
(通称「遠山プラン」)を突如発表し、経済財政諮問会議に報告しました。それは、国 立大学のスクラップ・アンド・ビルド、民間的経営手法の導入、第三者評価による競
争原理の導入に基づく「トップ30」(後に、「21世紀COE」と名称を変更)などによっ
て産業競争力の回復のために経済政策の一環として大学を利用しようとするものであ り、大学の教育・研究に無用の混乱と多忙化を生み出しました。そして、2002年の初
めには、ついに文科省は「公務員型の独法化」さえ放棄して、私たち大学教職員に身 分保障なき「非公務員型の独法化」を押しつける方向を打ち出しました。
こうした許し難い"相次ぐ「後退」の集大成"こそが、この3月に提出された調査検
討会議・最終報告『新しい「国立大学法人像」について』(以下、『最終報告』と 略す)でした。
しかし、いま私たちが特に憂慮せざるをえないのは、この『最終報告』より一層後
退した「法人法案」づくりが進行しようとしている点です。最悪の場合、@国を設置 者とせず、経営主体と教学組織を分断する、A財務会計基準を通じて国による教育・
研究内容への統制を強化する、B目標・計画・評価制度をテコとして大学予算(運営 費交付金)を削減する、C文科省キャリア官僚の雇用は保障するが、大学の教職員の
雇用継承は否定する、D独法化さえ過渡的形態であり、将来の民営化・地方移管に含 みを残す、といった内容の「法案」がつくられ、この通常国会に提出される可能性が
あると言われています。
当初、国立大学の法人化を契機として大学を変えられるのではないか、と密かに期
待を抱いていた人々にとっても、現下の状況は、当初の予想を完全に裏切るものにな ってきているのではないでしょうか。
私たちは、こうした動向に憂慮の声をあげ、政府・文科省による「法案」化そのも のに根本的な再検討を要求するものです。
<「産業再生・競争社会づくりの国策の下請実施機関」と化す国立大学>
こうした後退に次ぐ後退の背景には、国立大学独法化の目的として、当初の「国家
公務員の25%削減」という行政改革の観点―これ自体に、私たち大学人は強く反対し てきましたが―に加えて、「産業再生」・「競争社会づくり」のための下請実施機関
として国立大学を利用するという目論見が前面に出てきたことがあります。経済のグ ローバル化のなかで日本の製造業は苦境に立っている、国際競争力を回復するには技
術革新が必要だが民間企業には余力がない、そこで科学技術基本計画にそって重点的 研究分野に大量の研究費を流し込み、国立大学の人材を民間企業の製品開発のために
もっぱら活用しようという「産学官連携」。市場万能の競争社会のなかで法律・経営・ 危機管理などのトップ・エリートを育てることに大学の重心を置こうとする「高度専
門職業人養成」。こうした国策の下請実施機関として国立大学を安上がりに利用しよ う、そのためには「学外者」の意見を大学「経営」に反映させ、「学長のリーダーシ
ップ」を強化して学内の不満を抑え、「国策」にそった教育・研究分野を拡大し、そ れ以外の教育・研究分野は大幅に縮小して、人件費などの経常経費を削減する。これ
が、目下の国立大学独法化の本質なのではないでしょうか。
そもそも、独立行政法人とは、行政を「企画立案部門(頭)」と「執行部門(手足)」
とに分離し、後者を国家行政組織の外に置いて、アウトソーシングを通じた行政の減 量化・効率化を図るものでした。確かに、国立大学は国によって設置された機関では
ありますが、教育・研究を任務とする機関であって、決して「行政」機関ではありま せん。また、教育・研究を主たる目的とする大学においては、企画立案部門と執行部
門を分離することは本来不可能です。
また、憲法第23条は「学問の自由」の保障を謳い、教育基本法も第10条一項で「教
育への不当な支配」を禁止するとともに、二項では、教育行政の任務があくまでも条 件整備にあることを規定しています。したがって、現在、独法化の下で文科大臣が教
育・研究機関たる国立大学に「中期目標」を与えることが企図されていますが、それ は明らかに現行法に抵触するものであり、違憲・違法性を免れ得ません。
教育基本法改正問題を審議している中央教育審議会の中間報告(2002年11月)は、教
育を専ら「国際競争力の基盤」として捉え、その「人材」養成に課題を特化させ、そ のために「国民全体の教育水準の一層の向上」を図り、「大学の競争力」を高めなけ
ればならない、というような考え方を表明しています。経済の論理で推進されようと している独法化が、むしろ国立大学の「人材」養成機能を弱体化させかねないことを
考えると、この中間報告の空々しさは明白です。
<「大学の新しい公共性」の立場からの国立大学の再構築をめざして>
工業社会から知識社会への移行という歴史的な転換期に直面して、いま大学に真に
必要とされているのは、このような「産業再生」・「競争社会づくり」の国策や、独 法化といった設置形態の変更に振り回されることではなく、学術の中心として環境保
全、平和、人類全体の福祉の向上と共生に貢献し、全ての学生・生徒・市民に知的で 専門性の高い教育・学習の機会を等しく保障することではないでしょうか。私たちは、
これを「大学の新しい公共性」と呼びたいと思います。
「大学の新しい公共性」は、『名古屋大学平和憲章』に「世界の平和と人類の福祉を志向する学問研究に従い、主体的に学び、平和な社会の建設に貢献すること」「大学
の管理運営への全構成員の自覚的参加と自治、各学問分野の協力と調和ある発展」と
して明記されている精神を引き継ぐものです。また『名古屋大学学術憲章』が述べる
「人間と社会と自然に関する研究と教育を通じて、人々の幸福に貢献すること」「構
成員の自律性と自主性に基づく探求を常に支援し、学問研究の自由を保障する」とい
う立場を発展させるものです。
私学の良心的な大学改革の例にも学びながら、また市民・社会とも活発に対話しな
がら、憲法・教育基本法にのっとり、「学問の自由」に基づく大学人の自発的な活動 と教職員・院生・学生全てが参加する「大学の自治」の開花をとおして、私たちは、
「大学の新しい公共性」を発揮できる名古屋大学を、そして国立大学を再構築してい くことを、心から熱望するものです。
<名古屋大学での独法化準備作業の総点検と方向転換を呼びかけます>
こうした観点から、私たちは、名古屋大学において進められている独法化準備作業 を総点検する必要があると考えます。
名古屋大学組織改革検討委員会はこの10月に、中間報告『名古屋大学の法人化に向
けて』をまとめました。ここには、約半年にわたる名大での法人化準備の検討結果が 示されています。各部局での中期目標・計画や新しい財務・会計基準づくりの準備な
どを含めると、多くの教職員が、膨大な時間と労力をかけてこの準備作業に携わって いることになります。それらのなかには注目すべき提案も見られ、私たちは、準備作
業に携わってこられた教職員の皆さんのご努力に敬意を払うのに吝かではありません。
しかし、全体としてみたとき、この『中間報告』のむこうに「大学の新しい公共性」
を充分に発揮できる名古屋大学を展望できるのか、大いなる疑問を感じざるをえない というのが、多くの人びとの実感ではないでしょうか。
確かに、今回の準備作業を進めるなかで、これまで必ずしも十分に自覚されずにきた問題や課題が明確になってきました。しかし、それらは現行の国立大学制度の中で、 私たちの自主的・民主的努力によって解決可能なものがほとんどです。このことと、 名古屋大学の独法化とはその意図も内容もまったく異なるものとして捉える必要があ ります。
組織改革検討委員会は、来春には、最終報告を提出する予定です。私たちは、「大
学の新しい公共性」の立場から、全学の教職員・院生・学生が『中間報告』を総点検 し、情報公開に基づく全学的な討議によって、名大での独法化準備作業を方向転換す
ることを求めます。
*********** 論 点 提 起 ********
論 点 提 起 : 名古屋大学・組織改革検討委員会『中間報告』(2002年10月)に 関して、
とくに以下の六点について論点を提起し、法人化準備作業の抜本的方向転換を求めま す。
@「内的必然性」と「協力と調和」の原則に基づく教育・研究組織の再構築を求めます
『中間報告』は、「国内的・国際的なトップクラス」「産学官連携」「地域産業振
興」の研究のために「学内組織の再編成と学内資源の再配分」を行うとしていますが、 私たちはまず、こうした改革の方向が、「大学の新しい公共性」に適っているのかど
うかを問いたいと思います。またこうした改革の方向が、地道な基礎研究の人的・物 的・財政的基盤をしっかりと確保した上でのものなのかを、問いたいと思います。さ
らに、こうした研究優位の体制が、真の意味で学生・生徒・市民の教育にとってプラ スになるのかを問題にしたいと思います。「重点戦略分野」以外をスクラップするの
ではなく、『平和憲章』が述べるとおり、教育と「学問研究をその内的必然性にもと づいて行」
い、「各学問分野の協力と調和のある発展」をめざす教育・研究組織を再構築するこ とを、私たちは求めます。
A「大学の自治」を最優先する総長選考のあり方と大学の運営体制を求めます
その設置形態がいかなるものであろうとも、大学は、教育・研究を基本的使命とす
る組織であり、教育・研究の自由は「大学の自治」によって具体的には確保されるも のです。大学の学長はこうした組織の長ですから、学長に必要とされる資質が民間企
業経営者のそれとは異なるのは当然です。また学長の選考方法が、「大学の自治」に 合致したものでなければならないことは、いかなる設置形態であろうとも、明らかで
す。しかし『中間報告』は、総長の資格について「経営能力」を重視し、総長選考に ついては「学外者の意見」を反映させることを重視する一方、教員による投票や職員・
院生学生の「意向投票」を保障していないことは、極めて問題です。
大学の運営体制についても、『中間報告』は、「総長の経営手腕」や教授会自治の
制限、中央集権化を提起していますが、極めて問題です。「各学問分野の協力と調和 ある発展」という原則に基づいて、大学は、各部局の自治の尊重と部局間のボトムア
ップ型でネットワーク的な協力(評議会の重視)によって運営されるべきです。
総長選考のあり方と大学運営体制について、抜本的な再検討を求めます。
B大学教員の「二重構造化」「業績のための競争」「流動化」が、教育・研究の発展 を歪めてはなりません
『中間報告』は、「21世紀COE」などに関係する「優秀な」研究者について予算・
研究設備の優先配分を行うとしています。これは大学教員間に「二重構造」をもちこ むことになるでしょう。加えて『中間報告』は、教員全体に「業績給与制度」「顕彰
制度」を導入すること、教員人事の流動化(大学教員の民間との兼業兼職規制を緩和 したり、逆にプロジェクト型教員任期制によって民間からの人材登用を進める、など)
を打ち出しています。また、国内では競争的資金への応募を拡大して教員間の競争を 促すとしつつ、国際的には共同研究を進めるというのは、なんとも皮肉です。こうし
た「業績のための競争」「流動化」が、教員間の協力と調和を壊し、教育・研究の内 発的な発展を阻害するのであれば、私たちはこうした改革に疑問を呈せざるをえませ
ん。
C人件費削減の基調のもとで、大学職員を、業績主義に駆り立て、不安定な雇用・待 遇におくことは、大学全体の損失です
大学職員は、大学のもつ「公共性」を支え、仕事の中身をとおして社会全体に奉仕
していく専門スタッフです。雇用・待遇がきちんと保障される必要があり、充分な人 件費の確保は、大学運営の重要な任務といえます。しかし『中間報告』は、基本的に
は人件費削減・定数削減の方向を打ち出しています。また「専門性の高い職員」(財 務会計・法務・情報・国際交流・産学官連携など、「教員ポストで任用される職員」
が想定されています)については研修制度を整備する一方、それ以外の事務系職員に ついては、「業績給制度」を導入するとしていますが、職種のあり方、事務組織の規
模、配置、そして給与体系も、具体的に検討されていません。そして「就業規則」の 枠内でパートタイム、任期付、請負など「柔軟で多様な」低賃金雇用が拡大するばか
りでなく、「就業規則」の枠外に膨大な数の不安定雇用(派遣労働者や競争的資金に よる雇用者)が発生することを想定しています。それが、民間企業で見られるような
新しい形での女性労働者差別をうみだす可能性もあります。技術系職員については、 学内での検討が遅れており、憂慮される事態となっています。
D院生・ポスドク問題の解決につながるような大学改革でなければなりません
上のような重点分野への重点投資を前提として、『中間報告』は、院生とポスト・
ドクトラル・フェローへの処遇策を提案していますが、これが、ポス・ドク問題を真 に解決することになるかは、不透明なままです。他方、専門職大学院については、
「受益者負担の原則に基づき市場価格にすることも考えられる」としていますが、数 百万円もの授業料というのでは、教育の機会均等に著しく反しているのは、明らかで
す。
E院生・学生が「学問の主人公・担い手」になれるような改革でなければなりません
教職員が熾烈な「競争」関係に追い込まれていくなかで、教育・研究の内容が歪め
られたり、業績に直結しない教育活動が軽視されるなど、様々な問題が院生・学生に しわ寄せされることが懸念されます。また、『中間報告』は、「運営費交付金の配分
額が学校経費の50%になった場合には、授業料を70〜80万円に設定せざるをえなくな る」と述べています。育英会奨学金制度の廃止や教育ローン化ともあわせ、現在より
さらに教育の機会均等が損なわれる事態が予想されます。
院生・学生を「独法化の被害者」にするような大学改革を、私たちは決して受け入
れるわけにはいきません。学習権の保障を進めることによって、国立大学としての使 命を果たすべきです。
私たちは、全学の教職員・院生学生が『中間報告』を総点検し、情報公開に基づく
全学的な討議によって、名大での法人化準備作業を方向転換する必要があると考えま す。
以上
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