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神戸新聞 2002年12月6日付 共同研究−大学と自衛隊(上) 学外で7時間/危機下の外交 熱く討議/「集団的自衛権」に悩んだ末… 神戸大学の学生と自衛隊員が十一月、安全保障をテーマに「共同研究」を行った。 講義は大学の外で、学生にさえ事前に場所を知らせることなく開かれた。「自衛官が 同席することで現実的で緊張感のある議論ができる」と、大学の担当教官は教育的な 意義を強調する。一方、市民グループや一部の学生は抗議を表明、評価は大きく分か れた。研究の内実と一連の経緯を振り返る。 ◇ ◇ ◇ 仮想の国家「ワルツランド」で、独立を志向する新大統領が就任演説を行った。海 を挟んで向かい合う大国「ジルバランド」は、それを独立宣言とみなす。両国間で高 まる緊張。隣接する「サクラランド」はどう対処すべきか。サ国と安全保障条約を結 ぶ「ローズランド」との連携は―。 十一月二十日、神戸市中央区の市男女共同参画センター。「INSIGHT―20 02」と題した共同ワークショップ(WS)が、約七時間にわたって開かれた。 WSは同大法学部の五百籏頭(いおきべ)真、吉川元両教授のゼミと自衛隊兵庫地 方連絡部が企画。今春、自衛隊サイドから申し入れた。 六月には「中台有事シミュレーション」をテーマに予備的な講義が行われ、十一月 十四日には五百籏頭教授らによる講義があった。 それらに続くこの日のWS。学外開催について大学側は「六月に学内で講義をした 際、反対する学生らの妨害があった。これ以上の混乱を避けたい」と説明した。 「自衛隊への理解を深めてもらう」ことを目的に、会場や移動のバスの手配、費用 もすべて同地連が負担した。 ◇ ◇ ◇ 学生と自衛官は五つのグループに分かれ、サ国の指導者という立場から、危機下で とるべき外交政策を論じ合った。彼らが一つの「決断」をする度、次の「事態」が与 えられる。刻々と変わる情勢。深まる夕闇に、白熱した討論が続いた。 シナリオは両ゼミの大学院生と教官、同地連が共同で作成した。サ国は「世界第二 位の経済大国、政策として集団的自衛権を禁止」との想定で、日本を思わせる。 ロ国は「経済、軍事の世界超大国」、ジ国は「共産党独裁」、ワ国は「独立国家と しては多くの国が未承認」との設定。それぞれ米、中、台湾という実在の国、地域が だぶる。 シミュレーションが最終段階に差しかかり、ワ国とジ国の緊張はピークに達した。 一つの問いが学生らに突き付けられた。「サ国はロ国と共同作戦を行うべきか」 サ国には「集団的自衛権を政策として禁止」との前提がある。悩んだ末に、全グ ループが「共同作戦を実施する」と決めた。 決断の背景について学生たちは言った。 「(多額の費用を出したが、国際的な評価は低かった)湾岸戦争で味わった痛い思 いを繰り返したくない」。「何もしなければ、自由主義諸国からの非難を招く」とい う説明もあった。 「国際的威信のためだ」。ある学生はそう語った。 |