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訂正です。 <he-horum4794> 群馬大の豊泉です。先の投稿で,11月28日に声明を発表としましたが, 正式な発表は署名集約を終えて,12月3日の予定です。失礼しました。 群馬大の豊泉です。 群馬大学教育学部教官の有志が以下の声明を11月28日に発表しました。 現在のところ賛同署名は60名で,教官数103名の過半数を越え,さらに増える見込み です。文中の1),2)……は補注の注番号です。 ****************************************************************************** 声明 「私たちは、群馬に教育学部と大学院教育学研究科のキャンパスを残すことを求めます」 2002年11月28日 群馬大学教育学部教官 名 はじめに 今年1月、群馬大学長と埼玉大学長は、両大学の統合に向けて検討を開始することを 発表し、懇談会を発足させました。両大学長は、大学同士の統合にあたって両大学の 教育学部を統合し、統合後の新教育学部は大久保キャンパス(埼玉大学所在地)に集 約しようとしています。 私たち群馬大学教育学部教官 名は、群馬県からこの教育学部をなくしてよいと考え たことはありません。両大学の統合に際して教育学部を統合するとしても、群馬県内 に教員養成と現職教員再教育(すなわち教育学部と大学院教育学研究科)のキャンパ スを残すことは必要なことだと考えています。私たちは、私たちの意向が理解される ことを求めて、ここに見解を表明します。 1 教育学部キャンパスに関する大学の考えと教育学部の考え 大学統合後の教育学部のキャンパスについては両学長の方針が揺れ動いてきました1 )。現在では、統合後の新教育学部は大久保キャンパスに置く、というのが両大学長 の方針です。この方針通りになれば、両大学の9学部の中で群馬大学教育学部だけが 、統合によって事実上消滅することになってしまいます2)。 9月30日に開催された群馬大学の将来計画委員会(構成員は学長・副学長と部局長) は、教育学部に対し、キャンパス問題を学長懇談会の裁定に委ねるよう求めてきまし た。 これに対して教育学部教授会は10月2日、(1)教育学部教授会はこれまで群馬県におけ る教員養成と現職教員再教育の機能を存続させることを求め続けたこと、(2)新教育 学部を大久保キャンパスに集約し新学部を荒牧キャンパスに設けることには合理的な 理由がないこと、(3)キャンパス問題について地元関係者の間に不安が高まっている こと、を指摘し、学長懇談会が教育学部キャンパス問題に裁定を下すのであれば、以 上の点が尊重されなければならないとの決議を行いました。 この決議について、教育学部が大久保キャンパスへの移転を容認したかのような見解 があるようですが、それは私たちの考えるところとは異なります。繰り返しになりま すが、決議は群馬県における教員養成と現職教員再教育の機能の存続を求めているの であり、新教育学部の教育拠点として荒牧キャンパスを放棄することを認めてはいま せん。群馬大学長は、教育学部のこの決議の趣旨を正確かつ十分に理解し、尊重すべ きです。 2 新教育学部に二つの教育拠点を残す意義およびそのための試案 統合後の新教育学部を一か所にまとめなければならない理由は明らかではありません 。群馬大学長は、文部科学省が二つの教育拠点を残すことを認めない旨の説明を繰り 返しますが、なぜ認められないかについての説明責任は果たされないままです。 また、これまでに説明された教育学部を大久保キャンパスに集約すべき理由は、いず れも根拠に乏しいものと言わざるを得ません3)。統合後、さいたま市と並ぶ教育拠 点を群馬に残せないという理由は見あたらないのです。私たちは慎重に検討を重ねた 結果、群馬に教育拠点を残す以外にないという結論に達しました4)。 十分な根拠も明示できないままに大学が地域の要望に背を向けるのは、はなはだ不適 切です。また、両教育学部の顕著な特性の違い5)を考えれば、統合による教員養成 の充実という『今後の国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会』答申の 趣旨からみても、二つの拠点を残す選択は、より積極的な意義をもつことになります 。 両教育学部の特性と伝統は、容易に相互に代替できるものではありません。群馬大学 長は統合による大学の「パワーアップ」を強調しますが、統合によって両地域の教員 養成の充実を図るとすれば、それは双方の特性と伝統が生かされ、相互に補完し合う ことで、はじめて可能となるものです。二つの教育拠点が残されることは必要不可欠 であり、それぞれの拠点で特色ある教員養成を行なうことも可能です6)。 3 地域に根ざした教員養成と学長の不明瞭な新学部構想 教育は、現代の文化を次世代に伝える営みにほかなりません。学校は、子どもとその 保護者が暮らす地域社会に根ざして、その文化を伝えていくことによってこそ、役割 を果たすことができるものといえます。このことからすれば、学校の教員は、その地 域についての確かな識見を有している必要があります。したがって、群馬で学んだ学 生が群馬県の教員になることには積極的な意味があるのです。 群馬大学長は、荒牧キャンパスから教育学部がなくなっても、そのかわりに新学部を 設置することで、大学としての地域への責任を果たせるとの考えを表明しています。 しかしながら、この構想については、新学部の像があまりにも不明瞭であるという根 本的な問題があります7)。 この不明瞭な新学部構想は新学部の存在意義からではなく、統合実現のためのつじつ ま合わせから出発しているのであり、教育学部に代わる役割はとうてい期待できませ ん8)。大学院についても同様です9)。スタッフや資料の乏しいサテライトでは大 学院の名に値しないことは、いうまでもありません。 おわりに 地元の意向と教育学部の考えを無視し、地域社会において果たすべき役割を軽視した 教育学部大久保キャンパス移転の方針が統合を遅らせているのです10)。今こそ、両 大学長が、地域社会に対する大学の役割と責任を真剣に再考すべきときです。両大学 長は、地域関係者と十分に協議し、16万3千(2002.11.27現在)を超える署名に込め られた地域の人々の願いを真摯に受け止め、荒牧キャンパスに教育学部と大学院教育 学研究科の拠点を残す道を選択すべきです。 私たちは地域の人々の期待に応えるべく、より拓かれた大学を目指し、今後の教育・ 研究に力を尽くす決意を新たにしています。 賛同人(50音順) 新井 哲夫 石田 肇 伊藤 隆 岩永 健司 上里 京子 浦崎 源次 大竹公一郎 海鋒 正毅 柏木 徳明 勝部 太 小泉 三郎 巨智部直久 近藤 典彦 斎藤 周 菅原 英直 高野 庸 高橋久仁子 田中 麻里 富澤 秀文 豊泉 周治 長津美代子 中野 尚彦 西薗 大実 布川 護 平瀬 志朗 福島 博 福地 豊樹 古田 雅憲 堀内 雅子 松本 富子 村崎 武明 茂木 一司 柳川 益美 山田 博文 山西 哲郎 吉國 忠亜 渡邉 彩子 以下23名 補注 1)群馬、埼玉の学長懇談会の発足以前から、独立法人化の動きと教員採用数の減少 を背景に、教育学部は存続の危機と縮小の示唆を受け続けてきました。教員養成学部 のいわゆる5000人削減に際して学部の再編を終えたばかりでしたが、大学院授業の現 職教員向け夜間開講など幾つかの改革に着手し、なお引き続き検討が続けられていま した。 しかし、『今後の国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会』(以下『 在り方懇』)の発足とその答申により、すべての学部内改革の検討を中断し、国立大 学教育学部間の統合問題へと学部の論議を移さざるを得なくなりました。群馬におけ る教育学部の存続を主張する教育学部の考えとそれではすまないという大学側の意向 との調整をみないまま事態はまた急転しました。 群馬、埼玉両大学の統合についての学長懇談会が発足し、群馬大学教育学部のすべ ての論議が統合新大学における教育学部のあり方に向けられることになりました。 統合後の教育学部キャンパス問題について群馬大学学長の方針は2キャンパスから 1キャンパスへと変転しましたが、その理由は十分に説明されたとは言えません。教 養教育のキャンパス問題の変転に連動しているという漠然たる理解があるだけで学長 懇談会の詳細は知り得ません。 教育学部を1キャンパスとするという学長懇談会の強い方針のもとで、群馬、埼玉 両教育学部はキャンパス問題について解決をみいだせず、キャンパス問題を学長懇談 会の裁定に委ねるよう求められることになりました。 2)両大学の統合は、国立大学を統合するという文部科学省の方針に添ったものです。 4学部からなる群馬大学と5学部からなる埼玉大学では、教育学部と工学部が重な ります。工学部については、両工学部のそれぞれに特色をもたせることによって、○ ○工学部と△△工学部という別個の学部(名称未定)として存続させるというのが両 大学長の方針です。 これに対して、教育学部の場合は、教員免許取得に必要な授業を開く必要があるの で、カリキュラムも教員の専門分野も類似したものにならざるをえません。そこで、 両教育学部をそのまま存続させることはできないのでひとつに統合する、と両大学長 は考えているのです。 3)これまでに説明された教育学部を大久保キャンパスに移転すべき理由を整理する と、(1)群馬大教育学部の定員は『在り方懇』の答申にある適正規模に達せず、このま までは強制的に統合を余儀なくされる、(2)埼玉大教育学部には博士課程がある、(3) 今と同じ教育学部を残すことはできない、の3点になります。 しかしながら、いずれも移転理由としては根拠に乏しいものといわざるをえません 。(1)『在り方懇』は適正規模を明示したことはなく、「大学や地域の実情も勘案しな がら弾力的に」というのが答申の主張です。現に統合協議が進行中とされる鳥取大と 島根大の場合、統合しても定員は170人にとどまり、群馬大の現状(220人)を下回る ものでしかありません。(2)埼玉大の博士課程は連合大学院であり、現状でもキャンパ スは4か所に分散しています。(3)統合後は新教育学部となり、当然ながら同じ教育学 部が存続するわけではありませんが、それは教育学部を一か所に集約することを直ち に意味するものではありません。 いずれの点から見ても、統合後、さいたま市と並ぶ教育拠点をどうしても群馬に残 せないという理由は見あたりません。 4)群馬に教育拠点を残すべきとする理由は、(1)地域に根ざした教員養成の必要性、 (2)現職教員の研修・研究機関の必要性、(3)県内高校生の重要な進学先としての役割 などであり、地元の教育界・県民にとって当然すぎるほどの願いです。 5)両教育学部は、地域的に隣接するとはいえ、その置かれている地域事情は相当に 異なっています。埼玉大学教育学部は首都圏に立地する有数の大規模教育学部であり 、入学者に占める県内出身者は20数%にとどまり、他の入学者は関西や東北など全国 に及び、教員就職者も県内外に半々に分かれます(県占有率は小・中で20%台)。こ れに対し、群馬大学教育学部は典型的な地域密着型の教育学部であり、入学者に占め る県内出身者は70%にのぼります。教員就職者の行き先はその大部分が群馬県内であ り、県占有率は小・中で50%を超えます。一方では都市圏を中心とした激しい社会変 化に一般に対応できる教員養成が、他方では地域の現実に深く結びついた教員養成が 求められ、それはまた、両県においてこれまで蓄積されてきた教員養成の伝統でもあ ります。 6)考え得る具体的な案を示しますと、一方の拠点には、従来の教科を核とした専攻 を置き、現代の社会、学問や文化の変化、そして子どもを取り巻く環境の変化を踏ま えて、教科を中心とした学校教育の充実と刷新に寄与できる、力量のある教員の養成 を図ることとします。そして他方の拠点には、地域と学校現場の課題および「生きる 力」など新しい教育目標に見合った、従来の教科とは異なる新たな専攻を設定し、地 域の特色を生かした教員養成を図ることとします。こうすれば、二つの拠点が相互に 補完しあい、新教育学部にふさわしい教員養成の格段の充実を図ることが可能となる のです。 7)一般に、大学(特に国立大学)が新しい学部を設置しようという場合、その学部 の必要性を十分に説明するのでなければ、文部科学省の同意は得られません。その際 、社会がそのような学部での学生教育を必要としているという意味で、学生の卒業後 の進路も重要な問題です。ところが、群馬大学長の発言からは、新学部の中身につい ての検討がきちんとなされている様子はうかがえませんし、群馬大学の評議会や将来 計画委員会においても新学部についてこれといった議論はなされていません。群馬大 学長は、新学部設置によって大学統合が実現するのであれば文部科学省は認めてくれ る、という想定をしているのではないでしょうか。 8)学長は小学校教員免許を出せればよいと考えているようですが、群馬地域におい て必要な教員養成の機能を果たすためには、中学校の全教科の教員免許とそれに対応 する高等学校の教科の教員免許、そして養護学校教員免許を取得できる学部であるこ とが必要です。中学校教員についても地域との結びつきは重要であること、群馬県の 公立学校において小学校・中学校・養護学校間の人事異動が一般的であること、群馬 大学教育学部がこれまで小中学校のみならず高等学校にも多くの人材を送り出してい る実績があること等が、その理由として挙げられます。 また、人間についての深い洞察力をもった教養人としての教員を育成するという観 点からは、教育学・心理学を通して人間について十分に学び、なおかつ人文科学・社 会科学・自然科学をバランスよく学びながら、特定の分野を深く学んで学問の世界を 知ることを可能とするカリキュラムが求められます(教育学部のカリキュラムは、ま さにそのようにつくられています)。中学・高校で特定の教科を担当する教員も幅広 い科学的認識をもつべきですし、小学校の教員も何らかの課題について徹底的に学ん だ経験をもち、そのことを通じて学問の意義、学習の楽しさ、学ぶ方法を知っている べきだからです。 9)大学院については、現職教員の再教育の場としての意義からすれば、群馬県内の キャンパスで本格的な教育の場が確保されなければなりません。現職教員については 、その年齢・家族関係を考えるならば、一般の学生以上に、入学に際して住所を変更 することには困難が伴うものと思われます。したがって、自宅から通学できる範囲に キャンパスが存在することが望ましいのです。 また、現職教員の再教育を行なう大学院であるためには、教員養成を中心的な課題 とする学部と結びついていることが有効です。そうでなければ、現職教員にとって十 分な研究環境は保障されません。 10)教育学部キャンパス問題が解決しないのは教育学部の責任ではありません。群馬 大学と埼玉大学を統合し一つの大学とするためには、教養教育の場所と教育学部の場 所をどうするかが大きな問題であることは、はじめからわかっていたはずです。それ にも拘らず、両大学長は教養教育については、大久保と荒牧の2キャンパスで行うと しながら、教員養成、現職教員再教育については群馬大学教育学部を解体する方向で います。統合を遅らせてまで、群馬大学教育学部をどうしても解体しようとする理由 が私たちには理解できません。 |