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『山形新聞』2002年11月23日付 「担当校」断念から半年、山形大教育学部 文部科学省の意向を受けた南東北3大学間の教員養成系大・学部の再編協議 に伴い、山形大教育学部が5月の教授会で担当校断念を決定してから半年が経 過した。しかし、予想を超す反発に遭って地域との話し合いが進まず、手詰ま りの状態が続いている。単に教育学部の問題にとどまらず、本格化している独 立行政法人化に向けた学内の作業に深刻な影を落としているのが現状で、他学 部のフラストレーションがピークに達しつつある。大学の命運を握る次の一手 は―。 「教育学部の再編を進めようとする国のグランドデザインをすっかり壊して しまった元凶は、山形大にある。ここ南東北の再編協議が暗礁に乗り上げてか ら、全国の動きがぴたりと止まってしまったでしょう?」。山形大のある評議 員がこう指摘する。 工学部で前例のない入試判定ミスが発生した山形大と、自然科学系の増設を 目指す福島大。両大学で教育学部を廃止し、単科大の宮城教育大に統合すると いうシナリオが見え隠れした南東北は、文部科学省が全国のモデルケースにし たかったと見る向きが多い。 別の評議会構成メンバーは「国の方針を受け、山形大は1995年度で教養部を 廃止したが、それ以前に概算要求のヒアリングで国に行くと『山形大さんの教 養部はどうなりました』と聞かれ、なかなか本題に入らせてもらえなかった」 と振り返る。 山形大の教育学部問題を注視する文科省幹部職員は「地元とよく話し合って ください」と繰り返している。しかし、ヒアリングに出向き、担当者の憫笑 (びんしょう)を感じ取る学内関係者が多い。来年度に向けた概算要求で苦戦 を強いられ、一部には既に文科省の締めつけが始まったとの分析もある。 急性心筋梗塞(こうそく)で5日に逝去した植村治理学部長は、倒れるほん の数日前、周辺に「総合情報処理センターの改組が駄目だった」と漏らしてい た。学内共同教育研究施設の同センターについて、山形大は概算要求でスタッ フ増強を求めていたが、文科省に跳ね返された。 理学部のある教授は「国から予算が減らされ、山形大はだんだんやせ細って いくのではないかと心配している。独立行政法人化の荒波にもまれ、結局残る のは、地域と密接にかかわっている医学部と工学部だけではないのかと…」と 懸念する。 その医学部と工学部。かつて「トップ30」と呼ばれ、国が予算を重点配分す る21世紀COEプログラムで、医学部が「学際、複合、新領域」に、工学部が 「化学、材料科学」「情報、電気、電子」の両区分に申請したが、いずれも採 択されなかった。山形大からの申請はこの3件。失望が広がった。 「このままでは教育学部が山形大をつぶしてしまう」「大学本体から切り離 してしまえ」「この危機を教育学部自らの力で打開しようという気概がまった く感じられない」 学外にとどまらず、最近は学内からも強烈な教育学部批判が飛び出すように なった。20日の評議会では、こうした思惑が複雑に交錯し、仙道富士郎学長ら 執行部に弓を引く評議員が目立った。 教育学部の存続を目指し、県が提出した試案について、学内では学部長会議 の下に設置したワーキンググループで検討することになっている。しかし、こ の評議会の騒動に乗じるかのように、ある委員が「わたしもワーキンググルー プの一員だが、教育学部のことなど分かるわけがない」と公然と不満を口にし た。 今後、大学と県の協議がどのように進むのかは未知数だが、具体的なカリキュ ラムなどを練るのは教育学部が中心になることは間違いない。 しかし渦中の教育学部は、5月の教授会決定を盾に頑として動こうとしない。 県の案に賛意を示している教官でさえ、どう対応したらいいのか分からず、閉 塞(へいそく)感に覆われている。学内協議に主体的にかかわっていこうとい う熱意すら失ってしまったようだ。 就任1年の石島庸男学部長は「辞める時は学長を道連れにする」と言っては ばからず、伝え聞いた学内関係者の怒りと冷たい視線を一身に浴びている。事 態は一層、混迷の度を深めている。 |