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『朝日新聞』三重版 2002年10月30日付 [変革の時代に【三重大】] 揺れる教育学部、和歌山大との再編検討 皇学館大 6人。 三重大 3人。 今年の県教育委員会の小学校教員採用試験で合格した両大学の現役生の数だ。 既卒者を含めた66人の採用者全体でも、三重大20人に対し皇学館大は21 人だった。度会県師範学校以来130年近い歴史がある三重大教育学部だが、 県教育界の中でもはや圧倒的な存在ではなくなりつつある。 ●ゼロ免 00年3月の同大教育学部卒業生のうち、教員になった割合は25・3% (県外、私立、講師含む)。関係者はショックを受けた。その後、採用試験対 策セミナーなどで回復したとはいえ、現役合格は難しい。 「昔は、県内の教員志望はみな三重大に進み、郷里に戻って教員になったも のだった」。ベテラン高校教員は言う。だが、少子化に伴う採用減、学生や教 員の県外流出、他大学との競合など環境はがらりと変わった。 教育学部は99年度入試から、定員200人の半分を、教員免許を必須とし ない新課程(ゼロ免)とした。企業への就職を進めるねらい。国の方針だった が、教員養成機関の性格がさらに薄れた。教員養成課程の定員が100人以下 の大学は、全国48のうち16だけだ。 ●1県1学部制の崩壊 三重大教育学部は96年は学生定員330人に対し教官は約130人いた。 現在は学生は200人に減ったが、教官は約110人。教科ごとに教官が必要 という事情もあるが、教官数はこれまで他大学と同様、あまり変わらなかった。 これに対し、国は昨年、全国の教員養成学部の再編統合方針を打ち出した。 全体にスリム化し、拠点大学を重点整備する。戦後の「1県1教育学部制」の 崩壊だ。 三重大教育学部は昨年から、和歌山大と検討し始めた。水面下で交渉し、過 程は教授会にも報告されていない。 ●機能は現状維持 だが、国の再編統合方針は、山形県始め全国で反発を招き、停滞気味だ。0 4年4月の大学法人化と同時実施を考えていた文科省も最近は「地元とよく話 し合って、なるべく早く……」とトーンを弱めている。 三重大と和歌山大も今のところ、どちらかが教育学部の看板を降ろす可能性 はあるが、現場教員の再教育機能や、教員養成など基本的な機能はどちらも残 す方向だ。「どうすれば、両大学がパワーアップできるのかをともに考えてい る」と川口元一学部長。 三重大教育学部の教授らは県などの審議会委員を80件以上務め、教育実践 総合センターで現場との共同研究を進めるなど地域とかかわりが深い。関係者 には、国も強引に廃止できないという自信があるようだ。 これに対し、「大学がダイナミックに変わろうとしている時代。教育だけ別 格なのか」(他学部の助教授)と冷ややかな目もある。 今回の改革の波はやり過ごせたとしても、今後、環境変化にどう対応してい くのか。その指針はなかなか見えない。 |