「中期目標・中期計画の項目・記載事項について(検討素案・未定稿)」の検討
法制化グループ 2002.11.5
はじめに
独立行政法人制度においては、中期的な期間について、当該法人に一定の中期目標・中期計画に沿った計画的な業務運営を行わせ、期間終了時にその実績を評価することとされている。この仕組みは、単年度予算に基づく財務管理や、組織管理・定員管理・人事管理等の統制を緩和することと相まって、法人の自律的で責任ある業務運営を実現することを目指すものである。
そこで、国立大学法人についての中期目標・中期計画の記載事項の確定に当たっては、自律的で責任ある業務運営の推進という、独立行政法人制度の基本的コンセプトと、それに加えて、企画・実施の両面における自主性・自律性の確保という、国立大学法人の教育研究活動にとっての本来的な要請が、適切に実現されるように配慮される必要があると考える。
本検討素案は、最終報告に参考資料として付せられた中期目標・中期計画の記載事項例に比較して、項目・事例が整理されている点、及び、必要的記載事項と各大学の状況等に応じて記載する任意的記載事項例とを分けて表示している点で、今後の各大学における中期目標・中期計画の検討作業を容易にするものとして評価することができる。しかし、法制化グループは、上記のような見地から本検討素案には未だ以下のような問題点が残されていると認識しており、今後更に文科省との間で議論を詰めていきたいと考えている。
1 中期目標・中期計画に記載すべき学内の教育研究組織の範囲と記載方法:
附置研究施設は研究組織の1つとして取り扱うとしても、センターをどのように位置 付けるのか、また、附属病院、附属図書館をどこにどのように記載すべきかなど、中 期目標・中期計画に記載すべき学内の教育研究組織の範囲と記載方法について不明確 な点が残されている。
2 中期計画における教育研究組織の見直し等に関する記載方法と当該記載に基づく予算 措置との関係:
国立大学法人の自主的・自律的な教育研究活動の実施という観点に照らすと、中期目 標・中期計画の記載は、毎年度の政府予算編成の基準としての役割を担うべきであろ うと共に、中期目標・中期計画の記載に沿った教育研究活動の計画的な遂行が、単年 度予算に基づく財務システムによって阻害されてはならないと言うべきであろう。こ の意味で、教育研究組織の見直し、学部・研究科の学生定員の増減に関する記載、施 設設備に関する記載は、いずれも複数年にわたる予算措置に関わるものであるから、 これを記載することと国の予算措置との関係はどのようか、予算措置と関わりなく当 該大学の判断で実施すべきことになるのか、について予め明らかにされる必要がある と考える。また、この記載に関しては記載方法の例示をすることも考えられてよいの ではないかと考える。
3 中期目標期間終了後の評価の基準・方法及び評価結果の運営費交付金への反映
の方法:
独立行政法人制度の下では、各法人が中期目標・中期計画に沿って計画的に、自律的 で責任ある業務運営を行い、期間終了後にその実績を評価する仕組みとなっている。 この点から、この中期目標期間終了後の評価の基準、方法、及び、評価結果の次期運 営費交付金への反映の仕方は、具体的に各大学が中期目標・中期計画を記載するとき にその内容に影響を及ぼす可能性が大きいので、これらに関して予め明確にしておく 必要があるのではないかと考える。また、その評価基準・評価方法は、各国立大学の 状況を十分に踏まえ、各国立大学の爾後の改善・改革を促進するものとなるように配 慮する必要があると考える。
4 以上の他に、中期目標は文科大臣が大学の意見を踏まえて定めるとされ、中期計画は 文科大臣による認可は必要であるが大学が定めるものとされていること、及び、大学 の自主性・自律性の確保の見地とを踏まえて、中期目標と中期計画の記載事項の振り 分けと内容にはなお精査すべき点があるのではないか(たとえば、研究水準に関する 目標等について)、必要的記載事項と任意的記載事項との仕分けにはなお検討すべき 点があるのではないか(たとえば、国家試験の受験・合格率に関する具体的目標、入 学者選抜の在り方等について)といった問題点を指摘しておきたい。