財務会計制度について(論点メモ)

2002年10月25日

                                  財務会計対応グループ

   

T.運営費交付金算定基準(案)について

1.全体の仕組みについて

○運営費交付金の算定基準(案)は今回初めて提示されたものであるが、算定基準の積算基礎となる標準数量(員数等)、単価、係数(当該年度の予算編成過程で決定されるものは除く)等が未定なため、詳細かつ数量的な評価は時期尚早である。

 

○しかし、運営費交付金における標準と特定の区別、標準・特定の算定方法等は、概ね最終報告に沿った仕組みであると認識する。

 

○また、特定交付金の算定基準の一部として示された「管理運営に必要な経費」等における調整メカニズムを適切に運用すれば、移行期における資源配分の激変は概ね緩和され、大きな混乱は避けられるものと推測する。

 

2.運営費交付金の算定基準と学内配分方法および使途との関係について

○運営費交付金は使途を特定しない「渡し切り」であることに最大の特徴がある。したがって、今回示された運営費交付金の算定基準は、あくまでも各大学の運営費交付金を算定する根拠を示したものに過ぎず、各大学における実際の学内配分や執行が本基準に縛られるものでないことを再確認しておきたい。

 

○学内配分および執行における各大学の工夫・努力が、法人化の理念である大学の自主・自律的な運営能力を問う試金石であることを大学側は十分に自覚する必要がある。

 

3.今後、文部科学省内の検討や財政当局等との折衝における要求事項

○寄付金収入や産学連携収入は、当該収入に対応する経費支出が観念上のみならず、実態上も予定されていることもあり、最終報告のとおり、それら収入を運営費交付金の算定に反映させることは絶対に認められない。特に、特定運営費交付金への効率化係数の適用方針等を考慮すれば、寄付金収入や産学連携収入という外部資金の増額調達に向けた努力は法人化後の財務運営の鍵であり、そのインセンティブを殺ぐようなことは断じて容認できない。むしろ、税制上の措置等を通じて、インセンティブを強化するよう求めたい。

 

○各種の数値や係数を含む調整措置については、文部科学省等による恣意的な運用により、結果として、大学の自主性・自律性が減殺されるようなことがあってはならない。また、特に特定運営費交付金の算定に用いられる「管理運営に必要な経費」や「特別事業に必要な経費」の算定基準に組み込まれている調整措置は、標準運営費交付金と現在の各大学への資源配分(国費配分)との調整を図る趣旨と認められるが、現在の各大学への資源配分は、過去の予算措置等の積み重ねという見方もできるものであるから、これらは単なる激変緩和措置としてのみ捉えるべきでないことを確認しておきたい。

 

○標準運営費交付金は、学生の教育に直接かかる経費を主たる対象としているので、その算定において効率化係数の適用が全面的に排除されていることは高く評価する。この考え方は最後まで是非堅持されたい。

 

○特定運営費交付金について、標準運営費交付金との相違は、最終報告によれば、学生数等の客観的な指標にはなじまない経費等、単なる積算技術上の違いということであり、財源措置の安定性や継続性とは直接的には無関係である。したがって、特定運営費交付金も必ずしも不安定かつ容易に縮減されるというものではないことを確認したい。

 

○特定運営費交付金への効率化係数の適用が不可避であるとしても、また、その多様性から標準化が難しく、特定運営費交付金での算定が適切であるとしても、とりわけ今日その社会的責任が厳しく問われている入学試験に関する経費には、効率化係数の適用を是非除外すべきである。

 

○最終報告によれば、運営費交付金は大学毎に算定されることとなる。その場合、年度途中に発生した予測せざる追加経費需要のうち、災害・事故のような個別的・臨時的なものへの対応は考慮されていないようである。また、退職手当に相当する運営費交付金においては、定年退職以外は事前に正確に見込むことは極めて難しい。したがって、これらの経費については、主務大臣(文部科学省)の下に調整経費として一定額を留め置くのもやむをえないと考えるが、その際、執行残額の財務処理を予め明確にしておく必要がある。

 

○今回提示された運営費交付金算定基準は、なお構造ないし基本的仕組みにとどまっている。今回、提示されなかった算定基準の数値や係数、例えば、標準運営費交付金における標準職員数、標準教員数、学種別標準単価の算定方式、学生納付金の取り扱い、各種係数(予算編成時決定の係数を除く)等について、今後、基本的な考え方や方式なりとも速やかな提示を求めたい。

 

 

U.特別会計廃止後の予算の要求および編成の仕組みについて

○中期目標・計画と予算要求との関連について、当面、平成16年度予算の要求・編成を事例にその具体的な関連を整理し、速やかに提示するよう求めたい。

 

○予算要求における個別大学と文部科学省との関係、および、文部科学省と財務省等との関係について、要求ないし協議の対象経費やその手続きがどのように変わるのかを、先行独立行政法人等の事例を含め、早期に説明するよう求めたい。

 

V.施設整備(案)について―特に、施設費補助金について―

 ○施設整備の具体的な仕組み、特に施設費補助金要綱は今回始めて示されたものであるが、概ね最終報告に沿い、現実性にも配慮した内容であると認識している。

 

○「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」が適用されることになるが、同法の適用下においても、施設整備における大学固有の事情(教育・研究・診療施設、キャンパス整備、歴史建物保存等)に応じた施設整備(補助対象事業、面積、単価、設計管理等)の個性、弾力性等が最大限維持できるよう強く求めたい。

 

○災害復旧のための経費は、必要とする大学が年度当初は予測できないため、主務大臣(文部科学省)の下に調整経費として留め置かれるのもやむをえない。しかし、執行残額の財務処理は予め明確にしておく必要がある。

 

W.会計関係規程の作成について

 ○会計関係規程の作成・制定は各大学が主体的に行うべき事項であることを確認しておきたい。

 

○ただし、主として国費の執行や国出資財産の管理に係わる規程であるから、大学間の比較可能性や社会への説明責任を考慮すれば、共通に定めるべき内容等についての検討が必要である。

 

○この点に関しては、国立大学協会法人化特別委員会が文部科学省や各大学の協力を得て、関係規程のモデル条文を作成し、速やかに各大学に提示することとしたい。具体的には、各規程の作成は極めてテクニカルな問題を含むため、財務会計対応グループにモデル条文案の作成を一任されたい。

 

X.学生納付金のあり方について

1.標準的金額と「幅」の設定について

○最終報告によれば、一定の学生納付金については、標準的な金額に一定の「幅」を設定するものとしているが、対象は必ずしも明確ではない。以下、もっとも重要な授業料について標準的金額と幅を設定する場合についての問題点を指摘したい。

 

○標準運営費交付金算定の基礎となるのは標準授業料と解されるので、当該金額を上回る実際の授業料水準の設定は自己収入の増額確保努力とみなし得る。しかし、多数の大学が上限に近い水準に授業料を設定すれば、それが新たな標準授業料の水準とみなされる恐れがあり、結果的には、標準授業料引き上げの条件を作り出すことになりかねない。過去の経緯からみて、標準運営費交付金の削減を目指す財政当局が個別大学における授業料の引き上げ、および、最終的には標準授業料の引き上げを求めるのは確実であると考えられるからである。この結果、授業料引き上げのスパイラルを招けば、国立大学法人の使命という点から、社会的責任を強く問われる恐れがある。

  

 ○増収分(標準授業料との差額)について、自己努力との認定がなされるかどうかは大学側の立証責任に依存していること、また、増収分が運営費交付金の算定に何らかの形で反映されるのか否か等必ずしも明確ではないという見方があることにも留意する必要がある。

 

 ○標準的金額への「幅」の設定は、大学別・学部別・学種別の授業料設定を結果的に招く恐れがあるという見方について、大学側としてはどのように考えるか。

 

2.その他の諸問題および今後の対応について

○標準授業料収入額の算定に当たっては、この他にも、基礎数として用いるのは学生収容定員か現員か、

 現員とする場合、員数増(入学定員を超過した入学者、留年学生等)による増収要因の取り扱い、逆に員数減(入学定員割れ、転退学学生等)による減収の取り扱い、授業料減免措置の取り扱い等、詰めるべき諸問題が多いことを認識する必要がある。

 

○以上、指摘したような、学生納付金に関する諸問題は決着が急がれている重要課題であるため、より高次の学長クラスの作業部会で急ぎ対応策を協議し、文部科学省に意見を具申すべきである。