国立大学の新しい連合組織について(案)
 
平成14年11月  日
国立大学協会の在り方検討特別委員会
委員長  松 尾  稔
 
 はじめに
 
 国立大学協会(以下「本協会」という。)は、昭和25年7月に発足して以来、全国立大学を会員とする任意団体として活動し、わが国の高等教育・学術研究の発展に貢献するととともに、各国立大学の共通の利益の実現に寄与してきた。
 しかしながら、平成16年4月に国立大学法人が発足する運びとなり、現在の設置形態の下での国立大学を会員とする本協会は、その在り方を見直さざるを得ないこととなった。加えて、国立大学関係者の間では、かねてから本協会の運営等に関してその抜本的な見直しの必要性も指摘されており、本年3月26日の文部科学省調査検討会議最終報告「新しい「国立大学法人」像について」においても、国立大学法人の連合組織について、次のように提言されている。
  『今後、各国立大学における自主的・自律的な運営を前提としつつも、必要に応じて大学間で連携・協力して案件の処理を行うことが可能となるよう、地域や分野・機能に応じた連携・協力体制を整えるとともに、国立大学全体の連絡、協議等のための自主的・自律的な連合組織の体制・機能の強化や位置付けの明確化を図る。』
 
 このような状況を踏まえ、本特別委員会としては、法人化された国立大学を構成員とする新しい連合組織(以下「新連合組織」という。)の在り方について、前記提言を含め、理事会ワーキンググループにおける検討の結果や各大学長の意向等を確認しつつ、様々な角度から検討を進めてきた。その結果、以下のとおり取りまとめたので、報告する。
 
 
 
1.新連合組織の設立の理念
 
 新連合組織は、自主・自律的に運営される各国立大学法人が、教育・研究および社会貢献に関する多種多様な活動において、質の高い成果を挙げうる環境作りを使命とする。そのために、加盟各大学の主要活動を鼓舞し、それらを国内および国際的に語り伝える。併せて、必要不可欠な情報・知識を各大学法人間でお互いに共有せしめ、かつ、意義ある実践を行いうる存在となる。
 
2.新連合組織が持つべき組織としての基本的要素
 
  新連合組織には、これまでの本協会とは明確に異なる役割・機能が求められる。その根元は、国立大学の法人化であり、その連合組織には各大学法人の経営に関する何らかの支援活動を行うことが求められることによる。
  このため、新連合組織についてはそれ自身が人格を持ち、責任ある執行機関、機能集団として活動できる組織体制の整備を検討する必要がある。また、各大学の自主性を前提に、地域や分野での活動を連絡・調整し、関係機関との連携・協力体制も整える必要がある。新連合組織の役員の選任方法や組織・機構の作り方、事務局の充実などは、その意味からも特に重要であり、これらの機能を果たす組織に相応しいものとする必要がある。
  これらを踏まえつつ、新連合組織が持つべき組織としての基本的要素を箇条書きに整理すると、以下のようなことが考えられる。
 
 @ 全ての国立大学法人の加入
 A 地域独自の活動を尊重した組織
 B 組織と活動に進化するシステムを導入
 C 適切迅速な意思決定と責任ある執行
 D 機能集団として相応しい組織・機構・運営
 E 高等教育に関する質の高い企画、調査・研究能力
 F 質の高い情報収集と会員校へのサービス提供
 G 会員校との強力な連携協力システム
 H 高度な国際感覚
 I 優秀な事務局スタッフと機能的オフィス
 J 低負担と高い満足度
 
 
 
3.設立時期
 
  新連合組織は、法人化後の国立大学をその構成員とすることを考えると、遅くとも国立大学が法人化される予定の平成16年4月に発足する必要がある。
 
 
 
 
 
4.新連合組織の骨格
 
(1)名称
   「新国立大学協会(仮称)」
 
(2)設置形態
   新連合組織としての活動をする上で最も適切な形態
 
(3)目的
   国立大学法人に共通する諸課題等について、緊密な連絡と協力をはかること等によ  り、その円滑な運営と振興に寄与する。
 
(4)事業の範囲
  @ 質の高い教育、学術研究および社会貢献の推進に関する支援
  A 国立大学法人の経営に関する支援
  B 知の集団として自主的政策立案、国の高等教育政策に関する政策提言、意見具申
  C 会員大学へのサービスの提供
  D 国際的パートナーとの協力
  E その他目的を達成するために必要な事業
 
(5)会員
  @ 普通会員ー全ての国立大学法人
  A 特別会員ー国立大学関係者で構成する各種機関
       (例えば、国立大学共同利用機関など。)
 
(6)役員及びその選任方法
  @ 役員は、次のとおりとする。
   ・ 会長(理事長)
   ・ 副会長(若干名)
   ・ 理事(うち常勤理事1名)
   ・ 監事(複数)
  A その選任は、責任ある機能集団として説明できる選出方法とする。
 
(7)責任執行機関等
  @ 責任執行機関として、役員会を置く。役員会は、会長、副会長、常勤理事で構成する。
  A 新組織の運営に関する重要事項を審議するため、理事会を置く。理事会は、会長、副会長、理事で構成する。
 
(8)組織・機構
  @ 普通会員の代表者で構成する総会を置き、最高審議機関とする。
  A 企画、事業等に関し、機能集団として相応しい適切な委員会体制を採る。
    (特に、団体としての企画・調査・調整部門に留意する。)
  B 委員会構成員については、その委員会の役割に応じ最も相応しい者(学長に限定しない)をもって充てる。 
 
(9)会員校との連携強化
  @ 全国を複数の地域に区分し、それぞれに支部を置く。
  A 各支部に世話大学を置く。
  B 各支部は、理事の選出母体となる。
  C 新連合組織に、支部連絡組織を置く。
 
10 財政基盤の確保
  @ 各会員から適切な積算等による会費を徴収する。
  A 事業収入の確保に努力する。(各種損害保険の団体契約手数料など)
 
11)事務局、事務室
  @ 事務局長以下若干名の専任職員を置く。
  A 事務局の機能を充実・強化する。日常業務の要員は、専任職員のほか、会員校からの任期付職員出向などを検討する。
  B 人・物・情報の集合と組織の活動拠点として相応しい地理的な条件にある場所に、本部機能を備えた会議室、事務室等の設置を目指す。
 
 
 
5.今後の取り進め方
 
(1)「新国立大学協会(仮称)設立準備委員会」(以下「準備委員会」という。)の設置による設立準備の実施
  @ 本年秋の総会で、準備委員会を設置する。
  A 準備委員会の下に、教員および国立大学事務局長を構成員とするタスクフォース(数グループ)を置き、本報告の骨子を受けて、新連合組織の具体案を策定し、平成15年秋の総会に全体像を報告する。
  
(2)「新国立大学協会(仮称)設立委員会」(以下「設立委員会」という。)による設立準備
  @ 平成15年秋の総会で、上記準備委員会の策定した新連合組織の設立承認を得て、
新連合組織の役員指名、職員採用、その他組織としての設立作業を行うために、設立委員会を設置する
  A 設立委員会は、新連合組織の設立の日に解散する。
 
(3)本協会の解散等
  @ 本協会は、平成16年3月末日で解散する。
  A 現職の本協会職員は、解散時に全員その職を解く。
  B 清算後の残余財産は、新連合組織に引き継ぐこととする。
  C 以上について、平成15年秋の総会で確認する。
                                  (以上)