独行法反対首都圏ネットワーク |
『朝日新聞』三重版 2002年10月29日付 [変革の時代に【三重大】] 大学間競争の時代へ 迫る独立行政法人化 審査結果はメールで届いた。東大、京大など旧帝大の名前がずらり。だが、 三重大の名前はなかった。文部科学省が重点支援する研究を募った「21世紀 COEプログラム」(トップ30)の結果。2日、三重大関係者は大学間競争 の厳しい現実を突きつけられた。 ● 影響を懸念 「優秀かそうでないか、固定観念を持たれそうで、悔しい」。菅原庸副学長 は影響を懸念する。 三重大は矢谷隆一学長の決断で3件を申請した。「環境ストレスの生物認識 と修復システム創成」は、生物資源を中心に医学、工学の3学部10人が練っ た。海、山に囲まれた大学の環境や施設の特性を生かしたテーマのはずだった。 文部科学省は全国の国立大の構造改革を唱える。再編統合を進め、04年4 月にも各大学を独立行政法人に移行させる。大学によって学費、教育体制、内 容も差がつく。少子化、財政難に加え、科学技術の国際競争力強化の要請もあ り、国は研究者や大学に競争原理を積極的に導入する考えだ。COE(卓越し た拠点)選びは、第一弾だ。 ● 2ケタ違い しかし三重大の場合、旧帝大とは施設も人材規模も極端に違う。人件費など を除き、大学運営や研究用の年間予算は現在でも三重大の18億円に対し、東 大は130億円。 教官の申請を受けた文科省の今年度科学研究費補助金は、三重大246件7 億2850万円に対し、東大は2610件185億6890万円。 「基礎体力」の違いについて、ある職員は、「F1のレースカーと軽自動車 ほどの違い」と表現する。小畑仁・生物資源学部長は「高さの違うジャンプ台 から飛んで競うようなもの。引き離されないように頑張らなければ」と気を引 き締める。 しかしCOEには、同規模の岐阜大や、私立大も選ばれている。 「あらゆる機会で外部資金の獲得を申請するように」。矢谷学長は部局長会 議で活を入れた。例えば地域との結びつきを強め、三重大ならではのユニーク な研究で生き残りを図る、という手もある。 問題は、すぐに答えの出ない基礎研究や教育に熱心な教官をどう評価するの か。乏しい予算の中で目玉研究に力点を置けば、しわ寄せが他大学よりいっそ う強まる危険性もはらんでいる。 ● 進む法人化準備 三重大は今年1月、法人設置準備室を設置した。人事、組織など四つのグルー プが検討を進めている。セクハラ防止指針、定年まで自分たちで決める。職員 向けの会計の勉強も始めた。 不安定化する身分をめぐり、生物資源学部教職員組合も18日、セミナーを 開いた。弁護士が「漫然と大学が決める就業規則に応じることは権利の放棄」 と説いた。聴衆十数人は危機感を募らせた。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「これまでは国の護送船団方式で安穏としていたが、教職員も意識を変えな ければ」。上野達彦副学長は話す。迫る大学改革に三重大はどう対応していく のだろうか。 |