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独行法反対首都圏ネットワーク

☆「変革」抱える課題/激動する島根大
 [he-forum 4609] 朝日新聞島根版10/07 
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『朝日新聞』島根版  2002年10月7日付

「変革」抱える課題/激動する島根大
 

 島根大(吉川通彦学長)が、かつてない変革の中にいる。島根医科大との統
合は来年秋に迫り、04年には独立行政法人化も想定される。教育学部は教員
養成担当大学化を、法文学部法学科は法科大学院(ロースクール)設置を、そ
れぞれに目指している。その課題を探った。
 
◆   ◆   ◆

 「鳥取市内に島根大のサテライト(衛星)教室を置き、教員の研修などを実
施する」。島根大側が、鳥取大側にこんな構想を投げかけている。

 島根大教育学部は教員免許を取得しないと卒業できない教員養成担当大学を
目指す。鳥取大教育地域科学部は教員養成機能は残すが、教員免許がなくても
卒業できる複合学部となる。島根大の教員養成過程の定員は、鳥取大の70人
を譲り受けて、現在の100人から170人に増える。両大学は今春、こんな
内容で合意した。

 それでも、鳥取県内での教員養成の役割を補う必要があるため、考えられた
のがサテライト構想だ。しかし、サテライト常駐の教官を、どう確保するかな
ど課題は残っている。再編を理由にした教官の増員は難しく、地元鳥取大の協
力が不可欠で、今後、両大学の話し合いが本格化する。

 先月中旬には、島根大の山下政俊教育学部長らが上京し、文部科学省にも構想を示した。同省からは、具体的な話として進めるように指示があったという。
  
◆   ◆   ◆

 04年に法科大学院が設置される国立大学は、中国地方で1カ所−−。関係
者の間で、根強くささやかれている情報だ。島根大のほか、広島、岡山両大学
も設置を望んでいる。

 島根の場合、「弁護士過疎地域であることが、法科大学院設置に有利に働く」
と前向きに考える関係者もいる。しかし、大学院修了者が、そのまま島根で働
くという保証は何もない。大学院は広く門戸を開くため、県外からの入学者ば
かりで、ほとんど島根に残らないこともありえる。島根大の法学科法科大学院
設置準備委員会の三宅孝之委員長も「意識的に島根に根付くような方策が必要
だ」という。

 また、別の課題もある。中央教育審議会は、7月に出した法科大学院の設置
基準案で、専任教員のうち2割程度以上は実務経験者とした。島根、鳥取両県
の弁護士会は、弁護士の派遣を視野に大学側と協議を進めている。島根県弁護
士会は先月、3人の島根大教官の実務研修を受け入れた。ただ、21人という
全国最少の所帯が、教官用に人材をさけるのかという事情もある。

 「弁護士1人の年間総収入は平均約3千万円。法科大学院の教授になれば、
まず減収になる。その補填(ほてん)をどうするか。また、抱えている訴訟を
だれが引き継ぐのか。少なくとも弁護士が数人いる共同事務所にしないと、教
官派遣の依頼にこたえきれない恐れもある」と、県弁護士会ロースクール委員
会委員長の松原三朗弁護士は心配する。

◆   ◆   ◆

 仮に、教員養成担当大学、法科大学院が実現しても、その先には厳しい道が
待つ。独立行政法人化の壁だ。「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検
討会議」が今年3月にまとめた報告では、国立大学法人(仮称)は6年ごとの
中期目標と中期計画を作成し、文科相に提出する。文科省内につくられる評価
委員会がその達成度を評価し、運営費交付金に反映させる。教員試験や司法試
験の合格率が低ければ当然、その存在意義は問われることになる。
(滝川 直広)