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以下群馬県の地元新聞から群馬大と埼玉大の統合問題のニュースです。
2002年10月11日(金) 付け 上毛新聞ニュース
群大と埼玉大の統合問題を考える
統合の是非について語り合ったシンポジウム 群馬大教育学部のさいたま市への移
転案が浮上する中、同大と埼玉大の統合問題を考えるシンポジウム(群馬大教職員組
合、群馬大生活協同組合主催)が十日夜、前橋・荒牧キャンパスで開かれ、白井紘行・
群馬大副学長、伊藤修・埼玉大職員組合委員長ら六人のパネリストが統合の是非につ
いて語り合った。会場には群馬大の教職員、学生、地元住民ら約百人が詰め掛けたが、
文部科学省が打ち出している「一学部一キャンパス」への疑問、地域の教育拠点の役
割が大きい教育学部を失うことへの不安の声が一斉に上がった。
シンポジウムは、八月ごろから教職員組合などで計画してきた。これまでの統合に
関する大学の動きをまとめ、問題点を整理しながら県民とともに大学のあり方を考え
ていくのが狙い。
白井副学長は「大学の再編統合は、二〇〇四年度からの独立行政法人化に向けた改
革の一環で、一学部一キャンパスは文部科学省の意向。統合によるスケールメリット
を生かし、全学的、長期的視野に立って協議を進めたい」とこれからの方針を示した。
中野尚彦・群馬大教育学部教授は統合問題に関する大学当局側と教育学部の立場に
ついて説明。伊藤委員長は埼玉大側で説明がほとんどない現状を報告し、教職員の雇
用、労働条件の変化に対する不安を述べた。
吉田典之・上毛新聞政治部次長は「大学の基盤は地域にあり、県民のものであるは
ず。始めに文部科学省の方針ありきではなく、統合の本質を論じるべき」と提言。今
井健介・前県教育委員会委員長は「群馬大が本県に果たす役割はきわめて大きく、教
育学部を失うマイナスは計り知れない」と同学部の存続を希望した。
また、群馬大教育学部の学生が学内で独自に行ったアンケート調査に基づき、自ら
の意見を述べるなど、学生の関心の高さも目立った。
学生9割以上が不満
シンポジウムの会場となった荒牧キャンパスの教室には、教職員や学生、地元住民
ら百人余りが集まった。参加者はパネリストらの意見に耳を傾ける一方、「もっと情
報公開を」「地域無視で論議が進められていないか」など、率直な要望や疑問を投げ
かけた。
同大教育学部四年の男子学生(21)は、同大学生百五十三人を対象に実施した、
統合問題に関するアンケートの結果を紹介。九割以上の学生が、情報の公開状況に不
満を持っていることを明らかにした。男子学生は終了後、「学生も大学の構成員であ
ることを伝えたかった」と語った。
工学部一年の男子学生(19)は「一連の報道とだいぶ違う印象。教育だけでなく、
工学部の話も聞きたかった。統合は賛成だが、具体的な内容がまだ分からないので」
と困惑している様子。
地元住民の男性は「群馬大の影響で地元の戸数が増え、住民は教育に熱心になった。
今回の話は寝耳に水。何とか(教育学部に)いてもらいたい」と訴えた。
地元で同大生向けのアパートを管理している女性(50)は「死活問題なので聞き
に来た。まだ話が煮詰まってないようだが、これからどういう風に対応していくのか
知りたい」と関心を寄せていた
2002年10月12日(土) 付け 上毛新聞ニュース
群大教育学部移転の波紋(中)
二百六分の百八。この数字が、群馬大教育学部の本県教育界に果たす役割を何より
も雄弁に語っている。今春、本県の公立小中学校に採用された正規教員二百六人のう
ち、同学部出身者は過半数の百八人。高校では八十五人中の十一人と比率は下がるも
のの、人材輩出で他大学を寄せ付けない強さを誇る。
「ある意味で個性が求められる高校の教員と違い、小中学校の教員は総合的にみて
バランスがとれていることが大切。その点、群馬大出身者は穴がなく安定感がある」。
津久井勲・県教委学校人事課長は同学部をこう評価する。
同学部の歴史は一八七三(明治六)年にまでさか上る。前橋に小学校教員伝習所と
して誕生以来、統合を繰り返し、群馬師範学校を経て四九年に群馬大学芸学部、六六
年に同教育学部に改組した。七〇年には日吉町から荒牧町にキャンパスを移している。
過去五年間の進路実績をみると、臨時教員を含めて教員になったのは九八年三月の
卒業生が八十四人で、九九年が八十二人。その後は二〇〇〇年九十六人、〇一年百十
一人と増え続け、〇二年は百三十二人を数えた。現役で正規教員に就く割合は伸び悩
んでいるものの、産休などに伴う臨時教員、本県独自のさくら、わかばプランの採用
も多い。
その役割は教員を送り込むだけにとどまらない。夏休みに現職教員を対象に行う認
定講習、大学院への教員受け入れなどを通して、上級免許の取得や再教育をサポート。
本県教員全体の資質向上にとっても欠かせない存在となっている。
群馬大と埼玉大の教育学部を比較すると、定員は群馬大二百二十人に対し、埼玉大
は二倍以上の四百八十人。今回の移転案について埼玉大の津田俊信・教育学部長は
「一つには規模の違いの問題があり、埼玉大が群馬に行くより、埼玉で一つになった
方がトラブルの発生は少ない」と受け止める。
だが、県内出身者の比率(今春の入学者)は、群馬大が68%で埼玉大は27%。
文部科学省がまとめた全国四十八の国立教員養成学部の卒業者就職状況によると、〇
一年卒業生の教員就職率は群馬大が44・5%で全国十位。埼玉大は28・5%で四
十一位だった。〇二年の全国順位はまだ発表されていないが、群馬大55・0%、埼
玉大40・1%で、群馬大が地域に密着しながら、教員養成に力を注いでいることが
分かる。
「毎年、卒業生のだいたい半数は教員になっている。正規教員の比率をいかに高め
るかという課題はあるものの、一定の役割は果たしている」。群馬大教育学部の就職
委員長を務める加藤幸一教授は胸を張る。
十日夜、群馬大で開かれた統合を考えるシンポジウム。「地元出身者が教員になる
ことの意味は大きいはず」。パネリストや参加者から、文化や風土を熟知した教員が
地域の子どもを指導するメリットを訴える声が上がった。
地元の高校から群馬大教育学部、そして県内の教員に―。この流れが断ち切られた
時、子どもたちの教育にどう影響するのか。約百三十年の歴史を持つ本県教育の拠点
が今、消えようとしている。
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