トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

広島県立大統合問題 魅力アップが大前提 
  [he-forum 4554] 中国新聞社説10/07
--------------------------------------------------------------

『中国新聞』社説  2002年10月7日付

広島県立大統合問題 魅力アップが大前提 


 広島と三原、庄原の三市に立地する広島県立の三大学を「一大学三キャンパ
ス」の形で統合する方向が急浮上している。県立大学運営協議会が大筋で合意、
具体案の検討に入り十二月には答申の予定だ。それを受け二〇〇五年度には実
現したいというのが県の意向である。少子化に備え、運営の効率化を図りなが
ら、競争力アップも狙おうというのが、統合の方向である。ただ、キャンパス
間の距離をどう克服し、どんな新たな魅力をつくり出すのか、など越えるべき
壁は高い。

 国際文化学部と生活科学部を持つ県立広島女子大(広島市)、経営学部と生
物資源学部の広島県立大(庄原市)、保健福祉学部の広島県立保健福祉大(三
原市)の三つの大学で、連携について協議が始まったのは三年前である。県の
主導による連携方策検討委員会の発足と並行して大学人の交流が進められた。
他大学の研究内容など初めて知った人が多いという。

 女子大の社会福祉と保健福祉大の医療や看護学は、高齢化社会と介護の問題
もあって、現代では相補わなければならない。県立大のバイオ研究には医療と
密接な関係を持つ分野もあるし、食の分野もある。経営学は福祉にも必要だ。
共同することで新たな可能性は広がりそうだ。双方向映像で結ぶ遠隔講義もス
タート、単位の互換で学生の選択肢も広がった。

 ただ、統合となるとこれまでの伝統や個性の違い、学部の再編もからんで容
易ではない。これまでの論議では「経営分野の強化」「環境バイオ分野の強化」
「保健医療と福祉分野の総合化」などの方向が挙がっている。そこから統合の
メリットを生かした魅力のあるどんな学部が誕生するか。知恵の見せどころだ
ろう。しかし、「国際分野の再整理」「教養教育の充実」といった方向は具体
像が結びにくい。どうキャンパスを結んで効率化を図り、効果を上げるのか。
情報技術が遠隔講義の質を高めるとしても限界もあろう。

 県立大には最先端を行くバイオなどの研究があるが、立地する県北は情報収
集に不利でデメリットが大きい。学生にとってどれほど魅力がある地か、も問
われる。生物資源学部の早田保義助教授はそうした状況の打開も狙って、昨夏
から里山再生に向けたワークキャンプを始めた。海外からも青年が集まり、山
の手入れや炭焼き体験をする。県立大の学生も参加、大きな刺激を受けたとい
う。同大学術交流センター(野原建一センター長)では、こうした動きを組織
的なものにしたいという。地域と一体となった環境の整備が不可欠なのである。

 兵庫県などの統合は拡大と抱き合わせだが、広島県は行革という色あいが濃
い。効率化を急ぐあまり魅力アップが見えない統合では、競争に耐えられない
ことも忘れてはならない。