トップへ戻る   東職HPへ戻る
独行法反対首都圏ネットワーク

「地方大を切り捨てるな」
   [he-forum 4553] 福島民報論説10/07
--------------------------------------------------------------

『福島民報』論説  2002年10月7日付

「地方大を切り捨てるな」

 
 先駆的な研究に予算を重点配分する文部科学省の「21世紀COEプログラ
ム」(旧称トップ30大学構想)の選定では国公私立50大学113件の研究
プログラムのうち国立大が74・3%(84件)を占めた。中でも北海道、東
北、東京、名古屋、京都、大阪、九州の旧7帝大が43・4%(49件)に上っ
た。公立大は3・6%(4件)、私立大は22・1%(25件)だった。

 旧帝大を中心にした規模の大きい国立大が強さを発揮し、地方の国立大、公
立大それに私立大には厳しい結果となった。本県からは県立の会津大が唯一申
請していた研究が漏れた。国立大偏重、そして旧来の「大学秩序」が色濃く残
る選考といえそうだ。

 21世紀COEプログラムは、日本の大学を世界最高水準の研究拠点に育て
るため、文部科学省が研究資金を重点配分する制度。遠山敦子文部科学相が昨
年6月、「トップ30大学構想」として打ち出したが、「大学のランク付けに
つながる」との批判が出て、名称を変更した。COE(センター・オブ・エク
セレンス)は「卓越した研究拠点」の意味。対象は大学院博士課程レベルで、
今年と来年に各5分野から公募する。1件当たり5年間にわたり年1億〜5億
円を交付する仕組み。

 会津大は「情報・電気・電子」分野で、「ソフトウェア・マーベリック・ア
カデミー」と名づけたプログラムを申請した。ロシアや中国の大学との交流強
化や世界に開かれた仮想研究室の構築などを盛り込んだが、認められなかった。
会津大では「人的、業績的に見て大きく古い大学が採択を受けたようだ」と受
け止めている。

 今回選定したのは27都道府県所在の50大学。地域のバランスは考慮の対
象となっていなかったが、文部科学省は「結果的にバランスがとれた」として
いる。

 しかし、東北地方で採択になったのは東北大の5件と秋田大の1件だけ。福
島、青森、岩手、山形の東北4県のほか、栃木、埼玉、千葉、山梨、富山、福
井、三重、岡山、山口、島根、香川、高知、徳島、大分、鹿児島、沖縄の合わ
せて20県では、21世紀COEプログラムと無縁になった。地方大の1部か
らは「地方大の切り捨て」との批判も出ている。

 東大と京都大が最多の11件ずつ選ばれた。両大学を中心に旧七帝大はもと
もと多額の科学研究費補助金を交付されており、今回の選定も同じ傾向となっ
た。実績のあるところに研究費を上積みする傾斜配分が進めば大学の序列化を
助長するだけで、実績が乏しい地方大の地盤沈下は避けられない。選考方法に
改善の余地があるなら来年は改めるべきだ。

 もちろん、各大学がこれまでのようなペースで競争もせず研究していたので
は、日本の大学に国際的な研究者が集まらず優秀な人材は海外に流出する。国
際的な競争から取り残されてしまうだろう。

 来年は医学系などの5分野が選考の対象となる。可能なら県立福島医大など
県内の大学からの申請を期待したい。会津大は、文部科学省を見返すぐらいの
気概で研究して、ぜひ成果を挙げてほしい。(佐藤 晴雄)