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☆21世紀COE 選考基準を明確にするべきだ 
  [he-forum 4551] 愛媛新聞社説10/05
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『愛媛新聞』社説  2002年10月5日付

21世紀COE 選考基準を明確にするべきだ 


 世界最高水準の研究を目指す文部科学省の「21世紀COEプログラム」に
全国50大学の113件が選ばれ、四国からは唯一愛媛大の研究が入った。

 COE(センター・オブ・エクセレンス)は卓越した研究拠点の意味。プロ
グラムは第三者機関の評価によって予算を重点配分する事業で、競争原理の導
入により意欲的な研究を促す狙いがある。

 今回は「生命科学」「化学・材料科学」「情報・電気・電子」「人文科学」
「学際・複合・新領域」の5分野に国公私立163大学から計464件の申請
があった。

 愛媛大は「学際・複合・新領域」の分野で沿岸環境科学研究センターの「沿
岸環境科学研究拠点」が選ばれた。環境汚染の問題に早くから取り組んできた
実績が高く評価された。

 今後5年間、 ▽有害化学物質の環境での動きや生物への影響の解明▽地球
環境の変化に伴う沿岸域生態系の変化と将来予測―を柱に研究を積み重ねる。
その成果を世界に発信してもらいたい。

 今回のCOE選定を全国的にみれば、問題点が次々浮かび上がってくる。こ
の施策は文科省の当初の構想では「トップ30大学」だったが「大学のランク
付けにつながる」と批判を浴び、現在の名称に変えた。そのいきさつから国公
私立のバランスのとれた選定に期待する向きもあった。

 ところがフタを開けてみれば採択されたのは国立84件、公立4件、私立2
5件。しかも東大、京大などの旧帝大グループが件数の46%を占めた。旧来
の「大学の序列」の色彩が強く出たのは残念である。

 選考は日本学術振興会の21世紀COEプログラム委員会(江崎玲於奈委員
長)が担当した。その審査は非公開で選考基準もあいまいとの批判が強い。公
表したのは選ばれた大学名と研究テーマだけで、個別の選考理由や評価の経緯
に関する説明は一切なかったからだ。

 江崎委員長自身が「評価は主観的なもの。評価者の見識に任せるしかない」
と述べている。情報の公開が不十分のままでは評価委員会への各大学の不満、
不信感が募るのは当然である。

 大学は冬の時代にある。国立大は独立行政法人化を控え、私立大は学生数の
減少で経営は苦しくなる一方だ。研究分野で確固とした実績を挙げ、個性を発
揮しなければ立ち行かなくなるのは目に見えている。

 だからこそ、生き残りをかけて申請した大学も多かったが、選に漏れた大学
は、その理由すら分からない。このままでは到底納得できないはずだ。

 文科省は来年は医学系、社会科学など別の五分野でCOEプログラムを公募
する。申請する大学側の研究意欲をそがないよう配慮する必要がある。

 評価は実績だけでなく、研究の将来性、人材育成の面にも踏み込むべきだろ
う。評価委員会は今後、選考過程をオープンにし、信頼を取り戻さなくてはな
らない。