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『徳島新聞』社説 2002年10月7日付
大学トップ30
新しい研究の芽育てたい
文部科学省が先駆的な研究に予算を重点配分する「21世紀COEプログラ
ム」(旧トップ30大学構想)の選考結果が発表された。
選考対象は、大学院研究科専攻(博士課程レベル)の研究で、生命科学、情
報通信など先端の十分野から選ぶ構想である。
このうち今年は、生命科学、化学・材料科学、情報・電気・電子、人文科学、
学際・複合・新領域の五分野を対象にしており、五十大学から百十三件の研究
プログラムが採択された。
選ばれた研究には、今後五年間に年間一億−五億円の予算が配分される。当
然のことながら、各大学の研究スタッフの責任は重い。精力的に研究を続け、
着実に実績を上げてもらいたい。
COEというのは、センター・オブ・エクセレンス(卓越した拠点)の略で、
世界水準を持つ研究拠点をつくり上げることが目標だ。
当初、大学の構造改革の一環として打ち出され、「トップ30」構想が原型
になっている。大学間の競争を活発にし、研究成果の上がる大学づくりを促す
試みの一つである。
気掛かりだったのは、東大、京大など旧帝大グループや有名私大のプログラ
ムが多く採択されていることだ。旧帝大だけでほぼ半数を占めている。
これらの大学は従来、予算や研究スタッフなどの面で優遇され、実績を積み
上げてきている現状を考えると、やむを得ない面もある。
しかし、こうした選考では「大学の序列」の色彩が色濃く残り、新しく研究
拠点をつくり上げる意欲が感じられない。新鮮味に乏しい選考だといわざるを
得ない。
何より大事なことは選考基準や評価基準が明確に示され、透明な審査がされ
ることだ。各大学の個別の研究が選ばれた理由が示されないなど不透明感が残っ
たのは残念である。
審査に当たったCOEプログラム委員会は、なぜその研究が認められたのか、
説明する責任がある。来年度は残り五分野の選考が行われる。評価基準や選考
の理由がよく分かるよう改善することが欠かせない。
地方大学の研究も一部で採択された。しかし、生命科学や情報工学などで実
績を上げている徳島大学のプログラムはパスしなかった。採択されなかった各
大学にとっては、なぜ不採択になったのか、理由をはっきりさせてもらわなけ
ればならない。
COEプログラムは、予算配分を日本学術振興会という第三者機関が審査す
るところに大きな特色がある。従来の横並びを排して自由な立場から選考する
ことが期待されていたはずだ。
このプログラムで期待されるのは、新しい研究の芽を育てていくことである。
そうした流れが定着すると、研究者の意欲が高まることになる。
日本の大学や科学研究はいま、大きな転換期を迎えている。研究者の待遇や
研究予算が欧米に比べて十分でなく、優秀な人材が海外に流出する傾向が続い
ている。こうした事態が続けば、日本の科学研究の水準に「黄信号」がつきか
ねない。
技術立国を支えるには高い科学水準がいる。大学や研究機関の研究環境やス
タッフの研究条件を整えることが急務となっている。COEプログラムを起爆 剤にしてもらいたい。 |