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☆「トップ30」 どこがいいのか分からない
  [he-forum 4544] 毎日新聞社説10/05
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<社説>「トップ30」 どこがいいのか分からない
毎日新聞ニュース速報

 大学の先生たちは、自分のペースで研究を続けてきた。ところが、文部科学省が、「
さあ世の中は変わった。もっと競争しなくては」と尻をたたき始める。先生たちは右往
左往である。

 大学の状況は今、そのように見える。

 文科省は「大学構造改革」の旗を振っているが、その文科省も旗を授けた小泉純一郎
首相から、尻をたたかれている。

 「21世紀COE(卓越した拠点)プログラム」も、改革策の一つ。いわゆる「トッ
プ30」だ。世界最高水準の研究教育拠点作りを目指し、論文応募で採択された国公私
立大学の研究機関には国の予算を、重点的に配分する。

 審査を続けてきたプログラム委員会が、その結果をこのほど公表した。採択されたの
は申請163大学464件中、50大学113件である。その判断が妥当であったかど
うかを問う前に、審査方法そのものが多くの問題を抱えていることを指摘せざるを得な
い。

 申請は5分野に分かれている。部会で書類審査し、ヒアリングの対象を絞り込んだ。
部会の判断を経て、委員会が了承した。

 まず問題なのは審査の時間が、あまりにも短かったことだ。多くの部会長も認めてい
る。原因は文科省側にある。動きは昨年6月、遠山敦子文科相が突然発表した「大学の
構造改革」(遠山プラン)に始まる。

 国立大の再編・統合や法人化も強調している。狙いは、大学にも競争原理を導入する
ことにある。

 募集開始は今年の6月で、審査の時間は8、9月しかない。拙速が避けられない日程
である。これでは、ヒアリングも受けられずに落とされた研究機関は納得できないだろ
う。

 さらに問題なのは、審査の過程がほとんど公表されていないことだ。採択の基準は次
の3点だったという。(1)すでに、世界的レベルで拠点として認められている(2)
5年間で拠点になりうる(3)研究内容がユニークである。

 しかし、「研究の秘密」などを理由に、採択された研究が、この3点のどれに当ては
まるのかすらも明らかにされなかった。不採択組については何も分からない。

 競争を促すには、社会の目が欠かせない。しかし、これでは出発点である審査の是非
すらも、社会的に評価するのは不可能だ。

 遠山プランの発表当初から、「採択は旧帝国大や特定の私立大に偏るのではないか」
と指摘されている。結果は、その通りになった。どこまでユニークさが評価されたのか
、疑問がわいてくる。

 こうした問題の背景には、「とにかく大学でも構造改革の格好だけはつけよう」とい
う、文科省の安易な姿勢がうかがえる。

 ぬるま湯状態の大学を改革することは必要だ。

 しかし、「密室状態」では大学に新しい風を巻き起こすのではなく、逆に現状を固定
させる。これを打ち破るには、社会的な評価にさらされるだけの情報を公開することが
前提だ。



[2002-10-05-02:20]