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独行法反対首都圏ネットワーク

☆【COE】「集中」を促すだけか
 [he-forum 4540] 高知新聞社説10/04 
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『高知新聞』社説  2002年10月4日付

【COE】「集中」を促すだけか


 国際競争力を持つ個性豊かな大学を目指そう、世界最高水準の研究拠点を分
野ごとにつくろう、そのために予算を重点配分しよう――。

 そんなうたい文句で文部科学省が今年から始めた「21世紀COEプログラ
ム」も、一皮めくれば、明治以来の「格付け」を温存しつつ、「集中と排除」
の論理を強化して大学の淘汰(とうた)を促す格好の方策ではないか。

 公表されたプログラムの審査結果を見ると、そうした見方も説得力を持つ。

 採択された50大学・113件のうち、11件ずつ採択された東大、京大を
筆頭に7つの旧帝大で46%を占めた。私大では早慶が仲良く5件で並ぶ。ど
うみても既成の「序列」が反映されており、四国ではわずかに愛媛大学の申請
した一件が選ばれたのみだ。

 大学には既に厳しい改革の波が打ち寄せているが、高等教育のレベルアップ
という課題でいきなり出てきたのが今回のCOEプログラムだ。

 センター・オブ・エクセレンスを略したCOEは、「卓抜した研究拠点」を
意味する。昨年6月に文科省が示したいわゆる遠山プランで「トップ30構想」
として打ち出されたが、大学のランク付けだと批判されて名称を改めた。

 「ミニ東大」やまともな研究態勢を持たない大学がはびこる現状にあって、
教育機関への研究予算にめりはりをつけ、科学技術立国の足元を底上げすると
いう意味では、注目していい試みだろう。

 ところが、大学に競争を持ち込む以上、その前提である公正なルールが確保
されなければならないのに、今回の選考はそこをないがしろにしている。審査
は非公開で選定基準もあいまい、選定の過程も理由も分からないといった具合
で、評価の客観性はどこにも保証されていない。

 こうなるのは、高等教育の全体像を国がしっかりと描けていないせいだろう。
すそ野を狭めて頂上を高くすればいいといった単純な発想なら、土台そのもの
が揺らごう。

 疑問だらけの制度運営で選から漏れた大学が受けるダメージは、決して小さ
くはあるまい。受験や企業採用の動向にも悪影響を与え、研究者の求心力にも
直結する。その多くは地方の大学である。

 そればかりではない。日の当たる研究を追う風潮を高め、地道な分野の研究
が敬遠されかねない。プログラムの再考を求める。