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独行法反対首都圏ネットワーク

☆県民の理解を得る努力を
 [he-forum 4537] 東奥日報社説10/04 
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『東奥日報』社説  2002年10月4日付

県民の理解を得る努力を


 弘前大学教育学部の再編統合問題はどう推移するのか、多くの県民が気をも
んでいる。

 岩手大と秋田大の北東北三大学の教員養成系学部長が、話し合いを続けてい
るが、容易に結論は出そうにない。

 一連の国立大学改革のなかで、先行していた教員養成系大学・学部の再編統
合問題だが、ここにきてこう着状態のようにみえる。

 山形県で、山形大教育学部の存続を求めて、知事を先頭に県を挙げた激しい
運動が展開されていることなどが、影響しているようだ。

 では、弘前大の教育学部再編統合構想は、どんなものなのか。大学は、県民
にできるだけ分かりやすく説明する努力をしてほしい。

 というのは、同大が置かれている状況と、県民の認識とに、ずれがあるよう
に感じられるからだ。

 県民の思いは大きく二つある。

 一つは「とにかく地元に存続してほしい」という切実な願いだ。

 もうひとつは国の方針そのものへの反対であり、それに沿って進める弘前大
当局への批判である。「教育の根幹にかかわる問題。一県一教育学部の原則を、
安易に崩すべきではない」などの主張だ。

 これに対し弘前大は、再編統合は不可避と受け止め、従来の教育学部を「残
す」のではなく、これまでの反省に立って新しく充実した教育学部を同大が
「創造する」という構想を打ち出している。

 教育学部の存続という結果は同じことになるが、双方の考えは微妙に違うの
ではないだろうか。

 そもそも文部科学省が、有識者による懇談会(在り方懇)の報告という形で
方針を示したために、あいまいさが残った気がする。

 廃止の可能性ばかりが一気にクローズアップされ、「なぜ」再編統合するの
かという肝心の点が、国民・県民に十分伝わったとは言えないのではないだろ
うか。

 少子化により教員採用数が激減し、教育学部の教員就職率が極端に低下した。
また学生の定員が減り教官も減員され、学部は教育研究機能弱体化の危機にあ
る。

 そのため文科省が、教員養成系大学・学部の在り方を根本的に見直すことと
し、在り方懇が再編統合の方針を打ち出した。

 複数の大学(学部)の統合で規模を拡大し、より強力な教員養成学部を構築
するというのである。

 現在の一都道府県一教員養成系大学・学部体制は、歴史的な必然性があった。
地域に即した教員を育て、現職教員の研修や教育行政へのアドバイスなど、地
元と密接な関係で進んできた実績もある。

 それが崩れることは、県民にとっては重大問題なのである。

 それを個々の大学の責任で、地元住民に理解してもらえ、というのは、無理
があるのではないか。

 山形大学は教授会で教育学部の新学部への移行を決めたのだが、山形県内の
各界から反対の大合唱が巻き起こり、苦悩している。

 多くの大学が同じ事情を抱えている。結局は存廃のみに関心が集まり、単な
る大学間の“綱引き”のように受け取られてしまう。

 これは教育改革の一環であるとするなら、全体については、まず文科省が国
民の合意を得る努力をするべきではなかったか。

 その上で、具体的には各大学の判断に任せるのが筋ではないか。

 弘前大は、これまでの教育学部の在り方への反省と、生き残りに対する危機
感から、新しい構想案をつくり上げたのだという。

 同大が担当校になって、本県だけでなく岩手、秋田の三県を地元とする、強
力な教育学部を創設する、と一貫して主張している。

 実現には県民の理解と、全面的なバックアップが不可欠という。

 ならば県民には判断材料が必要だ。先月、同大は県民への説明会を開いた。
これの積み重ねなど、最大限の努力が望まれる。