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大学COE*研究意欲を促す制度に
[he-forum 4536] 北海道新聞社説10/04 
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『北海道新聞』社説  2002年10月4日付

大学COE*研究意欲を促す制度に


 文部科学省が進める大学改革の柱の一つ「二十一世紀COEプログラム」の
審査結果が公表された。

 COEは「センター・オブ・エクセレンス(卓越した拠点)」の略で、日本
の大学を世界最高水準の研究拠点に育てるため、資金を重点配分する新しい制
度だ。

 横並び主義と指摘されるように、どの大学も同じ学部学科をそろえ、似たよ
うなテーマの研究をしていていい時代ではない。

 とくに大学院では、創造的で世界に通用する研究が必要だ。国内の大学に国
際的な研究者が集まらず、頭脳流出が続く現状は改善する必要がある。

 トップレベルの研究環境を整え、人材を優遇して国際競争力を高める体制づ
くりは急務といえる。

 大学の研究基盤づくりの予算には、研究者個人に補助金を出す科学研究費補
助金があり、本年度は約千七百億円が投入されている。

 COEはこれとは別枠で、自然科学七分野と、人文、社会などの計十分野の
大学院博士課程レベルを対象に研究テーマを選び、各研究に五年間にわたって
毎年一億−五億円を配分する。

 今回選定したのは五分野で、五十の国公私立大、計百十三の研究テーマだ。
道内では北大が四件、帯広畜産大が一件の計五件が選ばれた。

 それぞれ、生命科学や地球環境領域などで貢献が期待される。優れた人材を
集め、育てていくことで研究をリードしてもらいたい。

 配分額は理工系の研究費用としては高額とはいえないが、各大学は競うよう
に申請した。再編・統合の圧力など、大学改革の大波の中で存在感を出そうと
する大学の必死さが伝わる。

 問題は、選定基準や“当落”の理由が不明確だった点にある。

 選考委員会の審査は非公開で、公表されたのは選ばれた大学名と研究テーマ
だけだ。室蘭工大や北見工大などの申請は選に漏れたが、個々の研究テーマを
どう評価し、当落のポイントはどこにあったのか。

 そうした情報を開示しなければ、落選した大学側に不満や不信感が生まれる
のは当然だろう。

 COEプログラムは「第三者評価による予算配分」を、初めて本格的に実施
した事業だ。制度の信頼性を高めるには、公正で透明な評価の仕組みが欠かせ
ない。

 地方の小規模な大学でも、ユニークな研究に取り組んでいる例は少なくない。
世界の先端を行く研究もさることながら、地域から世界に発信する研究にも十
分に目配りしてほしい。

 健全な競争の中で研究水準の底上げを目指す視点が大切だ。COE制度の目
的は研究者の意欲をかきたてることであり、大学のランク付けではないのだか
ら。