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トップ30――これが起爆剤なのか
 [he-forum 4534] 朝日新聞社説10/04 
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『朝日新聞』社説  2002年10月4日付

トップ30――これが起爆剤なのか


 競争原理の導入で、世界最高水準の研究拠点づくりをめざす「21世紀CO
Eプログラム」の選考結果が発表された。

 COEはセンター・オブ・エクセレンスの略で、卓越した拠点の意味だ。文
部科学省の当初の構想では「トップ30」と呼ばれていた。

 生命科学など5分野で、国公私立の大学院博士課程が出した研究計画の中か
ら、予算を重点配分するものを選ぶ。1回目の今回は50大学113件が選ば
れた。

 大学が競い合いながら研究能力を高めるという方向は、間違っていない。

 しかし、結果を見ると、すでに世界的定評がある京大の先端生命科学が入る
など、旧帝大や大規模な国立大学が並んだ。佐賀大の海洋エネルギー研究をは
じめ、地方の国立大や私大は「学際・複合・新領域」で健闘したが、埋没した
印象がある。

 いくらか新しい芽が出てきたが、まだまだ古い序列が幅を利かしているとい
うところだろう。

 旧帝大や大規模大学は、研究者個人に与えられる科学研究費補助金や文科省
の予算配分で優遇されてきた。実力があることは分かるが、それがそのまま踏
襲されるのでは、新制度を導入した意味がない。

 来年度からは、医学系など5分野を追加するほか、学生への教育にとくに力
を入れている大学・短大を100校ほど選び、予算を厚くする予定である。そ
こでもまた、旧帝大を中心に選ぶようだと、他大学の意欲がそがれてしまうだ
ろう。

 こうした古い序列をこわすには、もっと情報を公開する必要がある。

 発表された選考結果は大学名と研究テーマ、簡単なコメントに限られた。選
に漏れた理由を当事者の大学に知らせるとはいうが、どんな評価で当落を分け
たのかは公表されなかった。これでは、何を競えばいいのか、どのように挑戦
すればいいのか、という肝心なことがわからない。

 審査した日本学術振興会によると、選考基準は実績、可能性、独創性である。
しかし、結果からは実績にかなり比重が置かれたとみられても仕方あるまい。

 むしろ、可能性や独創性を重視すべきではないか。産業の最先端に特化した
研究に対象をしぼった分野があってもいい。意欲はあるもののふだんは日の当
たらない大学を選ぶことが新たな刺激を生み出す。

 国立大学は法人化を控える。私大はますます経営が厳しくなる。特徴や将来
構想を打ち出さないと存在すら危うい。

 応募した大学では、学長を中心に学部や学科、研究室を超えてテーマを設定
したものが少なくない。研究者間の交流を増やすテコの役割を果たしている。

 今回の試みを世界最高水準の研究拠点をつくる起爆剤にしようと本気で考え
るならば、評価や仕組みも世界水準に近づけるように磨きをかけなければなら
ない。