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卓越大学拠点 もっと透明でないと
 [he-forum 4533] 東京新聞社説10/04 
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『東京新聞』社説  2002年10月4日付

卓越大学拠点 もっと透明でないと


 世界的に卓越した研究拠点をつくる、という文部科学省第一回「21世紀C
OEプログラム」事業は、選考の物差しも、採否の理由も示されていない。税
金を使う以上は、もっと透明にすべきだ。

 昨年六月、文部科学省が発表した大学改革案で、世界でもトップ級の研究拠
点に育てる大学を、各分野ごとに三十くらいずつ選ぶ「トップ30」の構想が
打ち出された。

 この構想には、「大学をランク付けするのか」という批判の声が上がった。
文部科学省は「誤解を解くため」構想の名前を「21世紀COE(センター・
オブ・エクセレンス=卓越した大学研究拠点)プログラム」に改めた。大学単
位でなく、研究拠点単位で選定するのがミソだ。

 今回選ばれたのは、生命科学など五分野百十三拠点で、本年度は百八十二億
円が配分される。

 件数の内訳は国立大74%、公立大4%、私立大22%となっている。とこ
ろで二〇〇二年度文部科学省科学研究費補助の大学分について、件数別の配分
割合をみると、国立70%、公立7%、私立23%で、COEの割合とよく似
ている。これは偶然なのか。それともこの配分割合が、暗黙のルールにでもなっ
ているのか。

 もう一つ気になるのは、配分件数の43%が旧帝国大学七校に集中しており、
東大と京大が各十一件と、突出していることだ。私立で一番多い慶応と早稲田
は各五件で、こちらもきちんと横並びである。

 政府の高等教育における研究投資は、これまで東大、京大を筆頭とする旧帝
大が大きな割合を占めてきた。COEも同じ流れなら、新しい制度をつくった
意味は何なのか。

 疑問を払いのけるには、選考の基準や理由を明らかにすれば済む。ところが、
審査委員会の説明を聞く限り、選考の基準は「委員の議論の結果」で、合格、
不合格の理由は当事者にしか告げないという。

 審査委員からは「ノーベル賞の選考理由だって公表されていない」という声
があった。だがノーベル財団は民間機関だ。財政難の中で税金を使うのとは違
う。

 日本が持続可能な発展を目指すなら、最先端の科学研究に多大の支援が求め
られる。研究によっては、思い切った金額の配分も必要だろう。従来の延長線
上にない創造的な研究を見いだすには、これまで学界の主流から重視されてこ
なかった研究を再評価する試みも欠かせない。

 文部科学省は、国民の支持を得てCOEを発展させたいのなら、再審査申し
立ての機会を設けるほか、積極的に情報を公開してほしい。