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独行法反対首都圏ネットワーク

☆ 国立大学独立行政法人化問題週報抄
 [he-forum 4532] 国立大学独法化週報97抄 
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                     国立大学独立行政法人化問題週報抄
      Weekly Reports No.97 2002.9.29 Ver 1.1(2002.10.3 )
                    http://ac-net.org/wr/wr-97.html
                 総目次:http://ac-net.org/wr/all.html
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                             目  次
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[97-0] 内容紹介
 [97-0-1] 組織のために悪者となる「美徳」について
 [97-0-2] 「官僚の一人勝」とはどういう意味か
 [97-0-3] イギリスの大学人から日本への警告
 [97-0-4] 河合塾・三菱総研の評価は第三者評価か?
 [97-0-5] 日本学術会議の勧告権は「政治的鎧」なのか?
 [97-0-6] 必要なのは教育基本法の「改正」ではなく中教審の再選なしの任期制
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[97-1] 中央教育審議会第14回(2002.9.20)基本部会資料:教育の課題と今後
 [97-1-1] 第13回(2002.9.13)基本問題部会における主な意見の概要より
  [97-1-1-1]  9/30 中央教育審議会第14回総会(2002.9.30)
 [97-1-2] 日本弁護士連合会意見書2002.9.21「教育基本法の在り方に関する
[97-2] 法人化をめぐる動き
  [97-2-1]  地区国立大学長会議開催スケジュール
   [97-2-1-1]  北海道地区学長会議(9/24)の報道
 [97-2-2] 「大学共同利用機関の法人化について」(中間報告2002.7.30)より
 [97-2-3] 野依良治日本化学会会長から国立大学長へ
 [97-2-4] 国大協法人化特別委員会(2002.8.20)議事メモ
[97-3] 大学評価の動き
 [97-3-1]  大学評価機構サイト:意見照会の結果など
 [97-3-2]  河合塾・三菱総研共同提案「産業界からみた大学評価手法の開発」
    [97-3-2-1] 旧通産省産業政策局産業技術課大学等連携推進室のウェブサイト
 [97-3-3]   (2002.10.4)緊急シンポジウム「大学評価ー何が問題なのか」
  [97-3-3-1] 司会林衛氏の問題提起への落合栄一郎氏(在米)からの疑問
 [97-3-4]   秦由美子著「イギリスの高等教育の課題と展望」明治図書、
[97-4] 日本学術会議の在り方に関する専門調査会(第10回2002.9.20)議事次第
 [97-4-1] 日本学術会議の在り方に関する専門調査会(第9回2002.7.31)議事録(案)
 [97-4-2] 参考資料
  [97-4-2-1]  黒川清(日本学術会議副会長)科学新聞(2000.10.13)
  [97-4-2-2]  西谷 敏「学術会議の将来に関する雑感」2001.6.15
  [97-4-2-3]  日本学術会議の在り方に関する専門調査会についてのコメント
[97-5] 独立行政法人阻止運動
 [97-5-1]  国大協4月19日総会決定に関する学長アンケートの回答
 [97-5-2]  東京大学臨時評議会2002.4.23 における佐々木学長の報告より
  [97-5-2-1]  「管理者になった大学教員がほとんど必ず「変節」するのはなぜか」
 [97-5-3]  全国ネット主催2001年10月5日国会内集会での討論の記録
 [97-5-4]  豊島耕一氏「全大教教研集会当日の発言」 (2002.9.7)より
[97-6] 職員組合の動き
 [97-6-1]  法人化粉砕!10.18東大大集会(主催:東京大学職員組合)
 [97-6-2]  京大職組新聞2002年8月22日号(PDF)
  [97-6-2-1] 京大総長交渉(6/27)の記録
  [97-6-2-2]『「今は漕ぎいでな」雑考』
 [97-6-3]  全大教中央執行委員会:私たちの意見と対案(第1次案) 
[97-7] 日本科学者会議第14回総合学術研究集会(札幌2002.9.21-23)
 [97-7-1] 第8分科会「高等教育および国公立大学の法人化問題」
 [97-7-2] 岩井孝「日本の原子力政策と原研・サイクル機構統合問題」
[97-8] 発言
 [97-8-1]  チョムスキー「官学複合体による開発と大衆の疎外」
  [97-8-1-1] チョムスキー・アーカイヴ日本語版
 [97-8-2]  高等教育フォーラム:「研究者の処遇」
 [97-8-3]  田中宇の国際ニュース解説(2002.9.24)「小泉訪朝の背景を探る」
[97-9] 新聞より
 [97-9-1]  サミュエル・コールマン「官僚が科学を腐らせる」
 [97-9-2] 「最高裁、なぜ判決理由言わぬ」法廷で弁護人が問題提起
[97-10] ロースクールについての意見
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[97-0] 内容紹介

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[97-0-1] 組織のために悪者となる「美徳」について

国立大学の独立行政法人化政策が進行する過程で、有馬元文部大臣、蓮実国大
協前会長、長尾国大協会長など、多くの著名な方々が、 大学社会で人間的信
用を失ったと思われるが、自分の信念に反しても組織の利益を優先して自分は
悪者になることは、上に立つ者の資質として評価される風潮は日本では強い
[97-5-2-1]。この方々も、日本を動かしている人々のコミュニティの中では、
自分の名誉を捨てて「国益」を守った無私の人として、評価を高めたのかも知
れない。

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[97-0-2] 「官僚の一人勝」とはどういう意味か

  しかし、悪者となってまで実現しようと努力した国立大学の独立行政法人化
が、本当に、国立大学の利益となるのか、あるいは、日本の国益となるか、よ
くわからない。産業界の利益となるかもわからない。ただ、3年前に当時の東
大学長が記者会見で喝破した「官僚の一人勝ち」という独立行政法人化の本質
は、時間が経過するとともに誰が見ても明らかになりつつある。

  「官僚の一人勝ち」の意味は色々ある。大学の全活動に対する監督権を国が
持つようになることが第一の意味だが、大学自身が「官庁」と本質的に違わな
いものになってしまうことも見逃せない:独立行政法人化後に、大学の構成員
に最も要求されるのは「そつがない文書を多量に短時間に作成する能力」とな
るが、これは、官僚の方々が生来の素質に加えて日々研鑽を重ねて鍛えあげて
いる能力そのものではなかろうか。大学教員の中にも必要があれば仕方なしに
官僚的能力を発揮する人も少なくないと思うが、若いときから、大学教員の全
員が、そのために多くの関心と時間とエネルギーを割かねばならなくなったと
き大学がどうなるかは想像するまでもない[97-3-4] [97-9-1]。

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[97-0-3] イギリスの大学人から日本への警告

「そしてあなた方日本人はこのような馬鹿げた英国のシステムを模倣しようと
しているのです。」[97-3-4]

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[97-0-4] 河合塾・三菱総研の評価は第三者評価か?

旧通産省産業政策局産業技術課大学等連携推進室のウェブサイトが三菱総研内
部に開かれていたが、その研究成果が日の目を見ることになったというわけで
あろうか。このような出自を持つ研究機関による評価[97-3-2]を第三者評価と
呼ぶことは出来まい。

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[97-0-5] 日本学術会議の勧告権は「政治的鎧」なのか?

日本学術会議をどう「始末」するか、総合科学技術会議が決めることになって
いる。それを検討している「日本学術会議の在り方に関する専門調査会」の石
井会長が、「勧告という政治的鎧を着るのではなく中身で勝負するという気持
ち。」と発言している[97-4-1] 。政治的鎧を着ていたから何も出きなかった
のだろうか?「政治的鎧」を着ていても何もできない程、彼我に権力の差があっ
たのではないのか?そもそも「勧告権」は日本学術会議を守るための「鎧」な
のか?一部の社会セクターの利益のために国が学術セクタを総動員した時代の
直後に、同じ錯誤を防ぐために設置された日本学術会議に対し、使命遂行の武
器として日本社会が付与したものが「勧告権」であったのではないのか?中身
で勝負するときに武器は要らないのか?一体誰と何について「中身で勝負」す
るというのだろうか?

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[97-0-6] 必要なのは教育基本法の「改正」ではなく中教審の再選なしの任期制

中央教育審議会の基本部会が教育基本法についての議論をまとめた「教育の課
題と今後の教育の基本的方向について(素案)」を発表した。12000字の文章
の中で「権利」という言葉は一度も登場せず、「平和」「福祉」「思考」「判
断」「民主」「正義」という文字列は1回ずつしか登場しない。「現在問題と
なっている社会全体のモラルの低下、公徳心、公共心、規範意識の欠如などの
問題をゆるがせにすることはできない。」というが、今、日本でゆるがせにで
きない問題は、大きな発言力を持つ人達のコミュニティの「モラルの低下、公
徳心、公共心、規範意識の欠如」であることは明らかであろう。為政者側の反
省が欠如した「素案」を了承する役目を担う一部の有力な「有識者」が、任期
も停年もなしに種々の審議会を事実上支配し続けていることこそ問題ではない
か。幸い、中央教育審議会総会[97-1-1-1]では批判が噴出したという話しも聞
く、大手の新聞で報道されては居ないようであるが。

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[97-3-4]   秦由美子著「イギリスの高等教育の課題と展望」明治図書、
2001.1,ISBN[97-4-18-005441-8].
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4180054418
Robert Cowen氏(ロンドン大学教育研究所)インタビュー(p89-110)より

(p100)

秦「イギリス高等教育の過去から受け継がれてきた知の遺産が崩壊していくの
でしょうか。」

コーエン「崩壊しつつあると言っていと思います。私たちも非常に憂いている
のです。優秀な教員にとっての本質的な危機とは、この種の繁雑な仕事を全部
やり上げてしまおうとすることです。雑務やつまらぬ論文書きやつまらぬ本書
きを、大事な仕事の時間を削って行なうのです。大学や政府は何もしてくれま
せん。よい仕事をすることはますます難しくなっています。そしてあなた方日
本人はこのような馬鹿げた英国のシステムを模倣しようとしているのです。」

(p104)秦「非効率を減らそうとしているのに逆にコストがかかるように思えま
すが。」

コーエン「その通りです。タイムズ誌やTHES(Times Higher
EducationSupplement)においても批判が掲載されました。学長及び副学長た
ちが「見よ。この研究評価のために私たちの大学では100万人分の時間を費し
た」と述べ、数字を示してみせました。事実、本当にコストがかかり、私たち
のこの研究所でさえ情報を管理するために、非常に多くの管理者や運営者が必
要となります。この官僚的で面倒な手続きのために余分の人員を雇わねばなり
ません。そういう意味でもとても高くつくシステムです。しかし興味深いこと
に「質の管理(quality control)という政府の掲げた言辞は、逆に大学から
レトリックを奪い去ったのです。誰も「質の管理」という言葉には逆らえませ
ん。「正義」と同じです。誰も「正義」という言葉に対して逆らうことはでき
ないのです。「効率性」、「顧客」、「質の管理」、「水準」。こうした言葉
を政府が巧みに使いながら、政府は大学を統制することに成功しています。大
学は政治的な戦いに完全に敗れたのです。」
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[97-4-2-2] 2001.6.15 西谷 敏「学術会議の将来に関する雑感」
(学術の動向2001年5月号p[97-42-46])より
http://ac-net.org/doc/01/615-nishitani.shtml

「この点で、学術会議は、大臣やトップダウンで指名されたメンバーによって
構成される総合科学技術会議と決定的に異なっているし、すでに構成員となっ
た者が新メンバーを推薦する諸外国のアカデミーとも大きく異なっている。も
ちろん、現在の学術会議の活動が真に科学者全体を代表するものとなっている
か否かはたえず点検されねばならないが、その点に問題があるとしても、その
ことは学術会議の存在根拠がこの代表性にこそ存在するという事実をいささか
も変えるものではない。このことは、国会が国民の意思と乖離しているからと
いって、代表制民主主義の意義を否定すべきでないのと同様である。」
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[97-5-2]  東京大学臨時評議会2002.4.23 における佐々木学長の報告より
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/houjinsiryou/houjin02.htm
「・・・・なお我々が中間報告に対する意見として述べた様々な問題は、少な
くとも通則法そのままの適用ではないことを除けば、最終報告においてなお必
ずしも解決をみていないことは認めざるを得ず・・・・」
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[97-5-2-1] 豊島耕一「学長・学部長など管理者になった大学教員がほとんど
必ず「変節」するのはなぜか--- 大学管理者層の文化人類学の試み---」
http://www03.u-page.so-net.ne.jp/ta2/toyosima/daigaku/UniversityIssues/iken020906.html#Anchor396538
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[97-5-4]  豊島耕一「全大教教研集会当日の発言」 (2002.9.7)より

「どうしてもこの「準備」行為を正当化したい人は,「法律が通ってからでは間
に合わない」と言うのかもしれない.これは文部科学省スジから大学管理者層を
通じての心理作戦に単に乗せられているに過ぎない.だれが考えても分かるよう
に,いちばん「間に合わない」のは阻止・反対のための活動である.これこそ法
律が通ってからでは「後の祭り」である.まさに「今」しか出来ない活動である.
物事の順序,軽重というものが分からないのだろうか.」
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[97-8-1]  チョムスキー「官学複合体による開発と大衆の疎外」
(1998年11月14日京都精華大学での講演)
http://www.kyoto-seika.ac.jp/seika30/norm04.html

「国家が管理運営する部門で設計・開発・調達が行なわれ、それが非常に長い期
間続いた後、開発されたものが私企業に手渡されます。」

「国家部門と産業界や大学の複合開発・研究はこれまで、社会的に有用な決定で
あったかもしれません。あるいはそうでないかもしれません。そのどっちであっ
ても、決定するのは一般公衆ではないということが重要です。一般公衆は単に従っ
ていればよくて、事柄はすべて機密のベールの下で進行しています。公衆のあり
様や生活のあり様、あるいはその質にたいへん大きな影響を持つ分野としては、
インターネット以外に貿易協定などがありますが、いつの場合でも一般公衆は知
りえません。」
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編集発行人:辻下 徹 tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
関連ページ:http://ac-net.org/dgh/
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End of Weekly Reports 97