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独行法反対首都圏ネットワーク

☆大学統合 筑波大と図書館情報大
 [he-forum 4522] 茨城新聞09/29,30 
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『茨城新聞』2002年9月29日〜30日

大学統合 筑波大と図書館情報大

◇上◇ 構造改革方針で加速

◇下◇ 色濃い”吸収合併”
 
 
2002年9月29日付

◇上◇ 構造改革方針で加速 図書館情報学を生かす
 
 県内の四つの国立大のうち、筑波大(つくば市)と図書館情報大(同)が十
月一日に統合し、新生「筑波大学」が誕生する。国立大の統合としては、同日
に統合する山梨大と山梨医科大とともに戦後初めて。二組の大学統合を皮切り
に、全国の国立大で同様の動きが加速する見通しだ。国立大で今、何が起こっ
ているのか。筑波大と図書館情報大の統合経過を振り返りながら現状をリポー
トする。

 国立大の再編・統合の動きが活発化したのは、昨年六月に文部科学省が出し
た「大学の構造改革の方針」(遠山プラン)がきっかけ。

 同プランは、教員養成系大の規模縮小・再編をはじめ、単科大・医科大の他
大学との統合、国立大数の大幅な削減、法人化への早期移行、第三者評価シス
テムの導入などが盛り込まれ、同プランを意識した各大学の取り組みが一気に
加速した。

 筑波大と図書館情報大の統合協議は、二〇〇〇年六月にスタートした。遠山
プランが出るほぼ一年前のことだ。

 吉田政幸図書館情報大学長は「あの時期には既に、どの大学でも(独立行政
法人化と統合について)話し合っていた。学長として必要なのはビジョンを持
つこと。ごく自然な流れの中で統合の話が具体化した」と当時を振り返る。

 少子化の進展と国が進める法人化の動きの中で、単科大学の生き残りは困難
と感じていた図書館情報大にとって、地理的にも近く、図書館情報学という専
門分野を丸ごと生かせる総合大学との融合は相互補完する関係として理想的で
あるとともに、避けられない選択だったともいえる。

 一方、筑波大の北原保雄学長は「芸術、体育に加え、図書館情報学という専
門分野を持つことで、他の大学にはないユニークな分野を持った総合大学とし
て発展が望める」と、協議当初から一貫してメリットを強調。

 統合を目前に控えた九月の定例会見でも、「両方から握手のできるよい統合
の例だと思う」と総括し、国立大の先陣を切って成功例を示せた喜びを満面に
にじませた。

 文部科学省によると、統合を実施するのは本年度は筑波大など二組四校だけ
だが、このほか十組二十校が統合に合意しており、四組十一校が統合協議中と
いう。

 全国には現在九十九の国立大があるが、〇四年度に予定される法人化を控え、
各大学で再編・統合の動きが加速するのは必至の情勢。

 統合を先行実施した両大学に現在、全国から熱い視線が注がれている。

 筑波大 一八七二年にわが国初の師範学校として発足し、東京教育大を前身
とする総合大学。「教育と研究の分離」体制を敷く新構想大として七三年十月、
筑波大として再スタートした。学生約一万四千人。つくば市天王台一ノ一ノ一。

 
2002年9月30日付

◇下◇ 色濃い”吸収合併” 図情大の学生に動揺

 「他の大学からは『筑波大は上手な統合をしましたね』とうらやましがられ
る」。統合を目前に控えた今月十九日の記者会見で、筑波大の北原保雄学長は
こう言って、図書館情報大(図情大)との統合が自他共に認める”良縁”であっ
たことを強調した。

 筑波大と図情大の統合は、実質的には吸収合併の色合いが濃い。統合協議に
よって大学の名称は「筑波大」を継承することになり、両大で異なる制度につ
いても、規模の大きい筑波大の制度存続を優先することになった。

 筑波大にとっては、二年後の法人化をにらみ、国内唯一の図書館情報学を学
内に取り込むメリットは、他大学と差別化を図る意味で確かに大きい。統合の
痛みは、吸収される格好の図情大に多く現れたといえる。

 その一つが「学期制」の変更。学期制については、図情大は二年前に三学期
制から二学期制に移行したばかり。統合によって来年度から再度、筑波大に合
わせて三学期制を敷くことになった。授業時間も現行の九十分から七十五分授
業へと短縮され、単位の計算方法も変更される。

 統合当初の変則的な形として図情大は、現在在学中の学生と、来年度・再来
年度の三年次編入の学生が卒業するまでは存続が決まっている。在学生が欠席
や休学などで留年した場合、理論上では最大で七年半は図情大が存続する計算
だ。

 今回の統合によって、同大キャンパスは施設を含め筑波大に組み込まれた。
図情大の在学生は同キャンパスで卒業までを過ごすことになるが、筑波大に新
設された図書館情報専門学群の来年度入学生も同じキャンパスで共学するとい
う変則的な形が当面続く。

 影響が大きい図情大の一―三年生に動揺が走ったのはいうまでもない。統合
に不安を抱く学生の要請を受け、図情大は今年六月二十四日、統合に関する説
明会を開催した。急な開催決定にもかかわらず、説明会には全学生の四分の一
に当たる約二百人が出席。学生からの質問が相次ぎ、午後五時四十分開始の説
明会は、閉会予定をはるかに超えて午後九時すぎまで続けられた。

 陣頭説明に当たった吉田学長によると、「就職で不利になることはないのか」
「学校とともに自分の存在もなくなるのでは」「クラブ・サークル活動はどう
なるのか」について質問が集中したという。

 図情大側は、学生の心配を解消するために再度説明会を開くとともに、学内
LAN上に関心の高かった質問項目に対する回答を書き込むなど、動揺の沈静
化に努めた。

 一方の筑波大側は、学生からの要請もないため説明会は開かれず、統合に対
する苦情なども出ていないという。両大学の学生の対応からは、吸収する側と
される側の立場の違いが伝わってくる。

 二年後に迫る法人化に備え、筑波大は学内に「将来設計検討委員会」(委員
長・北原学長)を設置し、現在最終報告を取りまとめている。

 法人化では、財政基盤の強化、独立採算制など大学経営に関する改革が柱の
一つとなる方向だが、今回の統合では職員・教官の合理化は三人減にとどまっ
た。

 筑波大の財政は、全国の国立大と比べても国費依存度が高いとされる。統合
によって大学の魅力は増すといっても、多額な税金の使い道に対する国民の目
は、法人化を機にさらに厳しくなるものと予想される。

 今回の統合が真に「(他大学の)よい見本」(北原学長)となるように、同
大には今後、効率化への努力とともに、国費の使い道や大学の現状を、地域・
国民に分かりやすく伝える体制の確立が求められている。

 図書館情報大 司書育成などを目的に一九七九年十月に開学。国立大唯一の
図書館情報学科をもつ単科大学で、二〇〇〇年から大学院を開設。学生は約八
百四十人。十月一日に筑波大と統合し、同大図書館情報専門学群となる。つく
ば市春日一ノ二。