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独行法反対首都圏ネットワーク

☆[緊急発信]和歌山大と三重大教育学部統合問題
  [he-forum 4494] 毎日新聞和歌山版09/25 
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『毎日新聞』和歌山版  2002年9月25日付

[緊急発信]和歌山大と三重大教育学部統合問題


 和歌山大と三重大が教育学部の統合を巡り、協議を続けている。和大の小田
章学長は「年内に結論を出す必要がある」としており、話し合いの行方次第で
は和大教育学部の廃止も予想される。県内の公、私立高でつくる県高校校長会
会長の坂口總之輔さん(60)は先月19日、県高校PTA連合会とともに、
小田学長に学部存続を要請した。坂口会長に今後の取り組みや見通しを聞いた。
【渕脇直樹】

◇県高校校長会会長 坂口總之輔さん

 ――統合の動きをどう、見ていますか?

 和歌山に限らず、大学が地域に果たす役割は大きい。文化面を中心に、地域
を照らすともしびのような存在だ。県民の心のよりどころともいえ、ぜひ、地
元にあり続けてほしいとの切なる希望を持っている。中央は「不経済で、非効
率的な部分は整理すればよい」との論理に走りがちだが、地方の事情は違う。

 ――和大教育学部の果たしている役割は?

 大きく三つある。一つは教員養成という本来の使命。師範学校時代から数え
ると、100年を超える歴史を持ち、和歌山の教育界を支えてきた。二つ目は
県下の小中高校教育のリーダー的役割だ。教育のあり方を、一線の教師たちに
指導してくれている。三つ目は、地域文化を支えているということ。県内でこ
の三つの機能を持つ学部は、和大にしかない。もし、三重大に統合されたら、
本県は大きな打撃を受ける。

 ――県内の高校からの入学者は何人くらい?

 昨年度、私立高を含め、和大には222人が進学した。このうち、教育学部
は70人で、学部全体の合格者の34%を県勢が占めた。経済、システム工学
両学部の県勢占有率は20%台だ。

 統合問題は、進路問題にとどまらない。近年、和大と各高校との関係は緊密
になっている。大学の開放講座は高校生も多数受講し、和大の先生には出前授
業として来校してもらっている。私が校長を務める桐蔭高校では、理系教育で
協力を受け、大きな成果をあげつつある。図書館司書や情報教育など、各種研
修会を開催し、一線の教師を支援してくれている。

 ――県内には、多くの和大教育学部出身の先生がいますが。

 高校には少ないが、小中学には多い。卒業後も大学の恩師を訪ね、助言を受
けている教師や、和大と共同研究している教師もいる。三重大に統合されれば
容易にはできなくなる。つまり、高校だけでなく、県民全体の問題。より多く
の人に関心を持ってほしい。

 ――19日の要請の手応えは?

 小田学長からは「趣旨はよくわかった。今後、教育関係者、地域の人々の意
見を聞きながら、慎重に検討する」との回答をもらった。我々の声を聞いても
らえると確信している。今後も存続に向け、小中学校やPTAと連携を強めて
いきたい。

 ――生徒はどう見ていますか?

 本県高校生の和大を見る目は変わりつつある。和大は面白い、いい研究をし
ているとの評価が年々高まっている。いい意味で「敷居」も低くなり、親近感
が高まっている。三重大に統合されれば、これまでの努力は何だったのか、と
いうことになる。

 ――和大に限らず、教育学部はどうあるべきだと考えますか?

 役割は、医師を養成する医学部と似ていると思う。共に相手は人間。教師に
は幅広い受容性、正しい判断力、指導力、そして、学力が求められる。従来は
大学入試制度により、ある程度の成績があれば大学に入れ、単位、免許も取得
できた。

 しかし近年、教師の質の低下が指摘されている。これからは、教師に本当に
適しているのか、厳しくふるいにかける必要があるのではないか。大学として
は、教員養成の原点に帰り、これまで高尚な学問研究に偏していなかったか、
振り返るべきではないか。一方、教育実習を受け入れる高校側としても、卒業
生には甘い評価をくだしがちだった点は否定できない。我々自身、意識を変え
ねばならないと痛感している。

◇坂口總之輔 白浜町出身。1961年3月、桐蔭高卒。鹿児島大学農学部卒
業後、65年4月から8年間、和歌山北高で理科を指導。その後、星林高、県
教委学校教育課などに勤務。昨年4月から桐蔭高校長。