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独行法反対首都圏ネットワーク

☆国立大学法人化に伴う労働安全衛生法適用への対応に関するお願い
  [he-forum 4484] 日本化学会会長アピール
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平成14年9月2日  国立大学長殿

国立大学法人化に伴う労働安全衛生法適用への対応に関するお願い
              −組織の整備と予算化について−

社団法人日本化学会
会長野依良治


 国立大学法人化をひかえ、貴大学におかれましてもその準備を進められてお
られることと存じ上げます。日本化学会においても国立大学法人化にそなえ大
学は何をしなければならないかという問題について化学の立場で調査を始めて
おります。

 以下の問題は将来の大学運営に多大な影響を及ぼす可能性がありますが、各
大学で危機感が極めて希薄に思えてなりません。場合によっては各大学のアカ
デミックプランやキャンパスプランに再考を促す重大問題と考えています。さ
らに検討の上、文部科学省に適正な予算措置を要請することも必要でしょう。

 現在、労働安全衛生について、国立大学は「国営企業及び特定独立行政法人
の労働関係に関する法律」が適用されていますが、国立大学が法人化された場
合には、この人事院規則に代わって「労働安全衛生法」の適用の可能性に対処
する必要があります。これにより、所管官庁が人事院から厚生労働省に代わり、
法人化した大学への実際的な監督窓口は都道府県労働基準監督署となります。

 人事院規則によると、たとえ労働安全衛生面で問題があっても、所管官庁の
立ち入り調査はなく、学長や現場の教職員に対する罰則の適用もありません。
しかし、国立大学法人化した場合、事故などの発生時には労働基準監督署の立
ち入り調査が行われ、管理体制が不備であれば罰則適用がなされます。人事院
規則はかなりの部分で労働安全衛生法に準じて行うようになっています。した
がって、現時点で、貴大学において人事院規則に準じた労働安全衛生管理が行
われていれば、国立大学法人化後も基本的に大きな問題はありません。しかし、
実態としては、前述のような罰則がないため、ほとんど全ての国立大学では安
全管理が人事院規則に準じて実施されている状況にはなく、労働安全衛生法と
はかけ離れているのが現状です。この問題は、作業危険性のある化学、機械、
電気、土木・建築、医学、生物、薬学、農学など理系のほぼ全ての分野に関連
します。特に化学関係の分野はもとより、化学薬品を取り扱う生命・生物、医
学、農学、電気などの分野で多くの問題に対処しなければならないことが想定
されます。

 このため国立大学法人化に向けてこの乖離を解消する必要があり、早急な対
応が必須です。具体的には、まず大学内に学内の関連分野の教官、幅広い担当
部署の事務官、外部の専門家のコンサルタントなどからなる「対策を立案し、
実施するためのプロジェクトチーム」を設置することが望まれます。このチー
ムは安全管理という広い視野で管理体制を検討することを目的とします。すで
に国立大学法人化に向けて、総合安全管理センターを設置し、準備を進めてい
る大学もあります。ご参考までに、すでに独立行政法人化を済ませた産業技術
総合研究所の実施例を添付いたします。

 今この時点で、労働安全衛生法に基づいて教職員・学生の安全管理、危険防
止、傷害防止に必要な措置をいかに講ずるべきかを各教官自身が検討し、労働
安全衛生法についての理解を得る必要があります。このような理解の下に、全
学的な予算措置や人の問題、ならびに個々の研究室では対応できない予算措置
などに対処していただくことをお願いするとともに、至近の例として、産業技
術総合研究所における独立行政法人への移行を見ましても移行後では予算措置
が難しくなるので、事前の配慮が重要なことを申し添えておきます。大学の研
究と教育は、科学の進展のために、そして文明社会の維持のために一刻の猶予
も許されません。そして国はその場を保証すべきです。

 最後に、化学が物質、材料科学を通して全産業,生活分野に及ぶという意味
で全学問分野にとって重要であることを述べ、貴台のご理解を賜りたく存じま
す。